日本IBM(橋本孝之社長)は3月下旬、本紙が3月23日号の特別企画(21面)で報じた通り、仮想化に適したx86サーバーのラックとブレード、大規模データセンター(DC)向けのサーバー新製品を発表した。ラックとブレードは仮想化ソフトウェアの組み込みが可能。消費電力を抑えてメモリ容量をアップし、管理を容易にした。新製品投入は「置き換え用途」の市場を攻略する備えといえる。IT機器の「所有から利用へ」の流れが進み一時的に訪れそうなサーバー需要を取り込み、競合との激戦を制する製品戦略を固めた。
新しく投入した製品は、最新のインテルXeonプロセッサ「5500番台」搭載のx86サーバー3製品(ラック型とDC向けサーバー)およびブレードサーバー1製品。新ブレードサーバー「BladeCenter HS22」は、搭載メモリを従来の3倍に拡張。大容量・高速メモリを利用した仮想化用途や「ラック型置き換え用途」などを狙って売り込む
x86サーバーのラック型2製品「System x 3550 M2」と「同3650 M2」は、冷却効率を向上させたほか、内蔵ストレージを強化できるなど、ユーザーサイドにある既設ラックマウントを利用して業務アプリケーションを新たに乗せる用途などを見込む。ラック型サーバーの2倍の集積率を実現したDC用途の「System x iDataPlex dx360 M2」は、クラウドコンピューティング環境に適した基盤としてDCを保有するベンダーなどに売り込む。
各製品には、統合管理用のチップ「統合モジュール」を搭載し、独自のハードウェア制御ファームウェア「uEFI」をBIOSに代えて採用した。ラックから大容量ラック、ラックから統合型ブレード、ブレードからDCへ移行と、「所有から利用へ」の流れの各段階に応じて製品をラインアップしている。販売パートナーは、担当領域や提案先のユーザー企業に応じ、段階に応じてx86サーバーの「置き換え提案」ができ、目の前で実需を生みながら将来的なクラウド時代へ備える、というシナリオのようだ。
新製品をリリースしたことで、新たなパートナー制度が動き出す。ブレードでは「BladeCenterバリュー・パートナー・プログラム(VPP)」を開始。すでに販社49社が参加した。諸富健二・理事システムx事業部長は「付加価値を生む提案ができるよう技術的支援や販売機会拡大策を講じる」と、販社の“箱売り”脱却を図る。
販売面でキーになりそうな要素が「クライント統合」だ。クライアント資産をサーバー側へ集約する需要には、期待が集まる。各社は今年、サーバー台数の大幅拡充を計画。クラウド時代は一気にはやってこないが、それに備える企業の需要を多く拾えると、一時的な「特需」を見込む。日本IBMを含め、各社の戦略に寄り添う技術力を販売側に植え付けることができるかどうかが問われる。(谷畑良胤)