今年度、“光”がさすIT領域は?
成長株のトップは「仮想化」 新年度がスタートし、民間調査会社や業界団体が調べた市場調査や予測数値、ユーザー企業のIT動向が次々と明らかになっている。不況の影響で、各社・団体は共通してマイナス成長を見込むが、厳しい環境下でも伸びる製品やサービスがあることも見えてきた。各調査会社・団体の数値から今年度に“光”がさす領域を探った。
2009年の国内IT市場は、3.8%減の12兆1770億円──。IDC Japanが今年2月のユーザー調査と3月の経済環境を考慮して弾き出した最新数値だ。マイナス成長となるのは、03年以来6年ぶりだ。ユーザー企業のIT投資額も下降気味。同社の調査では、62%の企業が前年度に比べてIT投資額を減少させると回答したという。また、日本情報システムユーザー協会(JUAS)でもIT予算を削減すると答えたユーザー企業が35%に達している。景気後退の影響で、ユーザー企業のIT投資に対する財布の紐はより一層堅くなった。
とはいえ、そのなかでも“伸びる”領域が存在する。IDC Japanが2012年まで年平均成長率12.7%を見込んだ分野がある。それはデータセンターサービスだ。ユーザー企業の情報システムをデータセンターで運用・監視するサービスを指す。08年の実績は前年比13.3%増の7669億円で、12年には1兆2000億円を超えるとみる。「ユーザー企業は情報システムの自社運用にかかるコストを削減するため、外部のデータセンターに任せる傾向が強まる」という判断だ。
一方、JUASの調査で分かったユーザー企業の関心分野は、サーバーの仮想化。実に70%の企業が「導入検討中」と答えた。また、ガートナージャパンによる日本のCIO調査でもテクノロジー面での優先項目の第1位は「仮想化」だった。2~3年前から仮想化はキーワードとなっており、IT業界にすれば目新しい技術・ソリューションではないが、ユーザー企業はまだ仮想化を未導入か、活用するシステムがまだ少ないことが分かる。
一方、中堅・中小企業(SMB)のIT動向調査に強いノークリサーチが行ったユーザー調査でユニークなポイントは、情報システムを検討する際の重視点。1位は「業務におけるコスト削減」、2位には「業績改善」と目新しくはないが、3位にはシステムの「信頼性・可用性・性能の改善」が入った。
SMBのユーザーは、「大企業に比べ安定稼働に関してそれほど厳しい要件を盛り込まないが、『業務システムの停止=企業存続の危機』という意識が芽生え始めている」とノークリサーチではその理由を分析している。となれば、価格が高くても、処理能力の高いサーバーやft(無停止型)サーバーなどのハイエンド機種が不況のなか売れる可能性が出てくる。ハードの販売はIT産業のなかでもかなり厳しい状況になるといわれるが、ポジティブな要素もある。(木村剛士)