日立システムアンドサービス(林雅博社長)は、11月15日、従業員とその家族を対象に、本社で「親子で体験!IT教室」を開催した。内閣府が制定した「家族の日」(11月の第3日曜日)にちなんで開催したもの。従業員の家族14組45人が参加し、レゴ社のロボティクス教材を使ったプログラミング教室と、その成果を披露する大会、また同社の組み込み技術者が参加した「ETロボコン」の報告や父親の仕事の紹介を行った。
学びながら深める家族の絆
子どもの理科離れや算数離れが杞憂され、経済産業省などの主導によってIT人材早期育成への支援施策が進められている。日立システムでは、これまで学生を対象に業界を理解してもらうインターンシップ「SE大學」や、文系でSEを志す新入社員に向けてロボットを動かすプログラミング教育を行うなど、さまざまな教育プログラムを展開してきた。今回のものづくり体験型教育「親子で体験!IT教室」は、全国自治体による「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」推進月間にあわせ、従業員が自分の働き方や生活を見つめ直し、家族の絆を考える機会づくりの一環として開催したもの。
当日は従業員とその家族14組45人が参加し、レゴ社のロボティクス教材「教育用レゴ マインドストーム」を動かすプログラミングを体験した。

教材として使用したレゴ「マインドストームNXT」
「マインドストーム」は、レゴ社が米国マサチューセッツ工科大学と共同開発した教材で、心臓部のインテリジェントブロックに「RCX」「NXT」というマイクロプロセッサを組み込んでいる。レゴブロックでロボットを組み立て、パソコンで組んだプログラムを伝送することで、センサー、モーターといった部品を活用して、さまざまな動きを自由自在に表現できる。
アイデア光る動きの自由演技
開催当日、午前中は親子でロボットを動かすJavaプログラミングを学び、午後は親子で力を合わせて組んだプログラムの成果を披露する競技大会を行った。

PCに向かって親子でプログラムを打ち込む
競技大会は、小学生のみの家族と、中学生のいる家族の2部に分かれて競った。色を検知するセンサーを利用して紙に書かれた黒い線のコース一周のタイムを競う競技と、独自のアイデアでプログラムを組んで動かす「自由演技」の2種目を開催。参加した家族同士が、お互いにロボットの動きを評価し合った。
大会開始直前には「優勝したいだろ?」と子どもに話しかけながら、一緒に一生懸命プログラムを打つ親子や、コースを走らせようとしたものの、同じ位置でぐるぐる回ってしまい「色が判別できていない」と四苦八苦する家族など、それぞれができ上がったプログラムのテストに余念がなかった。タイム計測では、同じ筐体ながら、黒い線をたどってスムーズに周回するロボットもあれば、大きくお尻を振りながら懸命に進むロボット、極めてゆっくり進むロボットなど、プログラミングがさまざまな個性を引き出していた。

「SpeedKing」と名づけられたロボットで、極めてゆっくりコースを走る。三三七拍子に合わせて走るユニークな演技を見せた

「おはよう」と三姉妹が声をかけるとぐるぐる回転
自由演技では、若者に人気の『EXILE』のように軽快なリズムでダンスするロボットや、三三七拍子のリズムに合わせて進むもの、「おはよう」の声に反応して、ロボット本体の表示板に「おはよう」を表示しながら回転するものなど、アイデアが光るロボットたちが登場。会場には、終始笑いや驚嘆の声が絶えなかった。
ロボットがうまく動いた家族がある一方で、複雑なアクションをさせようとして、思い通りにいかなかった家族も。だが、実際のシステム開発の現場では、思い通りに動くシステムを作らなければならない。イベントの後半では、日立システムの組み込み技術者が参加している「ETロボコン」の報告・デモンストレーションや、当日参加したお父さん全員による仕事紹介のプレゼンテーションなどが行われ、子どもたちが広くITに関する知識を深める場となった。

ETロボコンに参加した実機による走行デモンストレーション
小学生の部優勝の相川哲盛さん(デジタルメディアソリューション本部デジタルメディア第2部部長)一家は、奥さんと娘さん2人の4人で参加。「ETロボコンに参加している部署で働いています。子どもがレゴの教室に通い、興味があったことが参加の理由」だという。「結局、親がプログラムを組んだ」と漏らしたが、「子どもたちも(プログラムをチェックする)『走らせチーム』でがんばっていた」と笑う。
また、中学生の部優勝の成瀬正昭さん(プロダクトソリューション本部ミドルソフトソリューション部マーケティングG技師)は、息子さんと2人で参加。タイム計測で20秒台以上の家族が多いなか、11.78秒とダントツの速さを見せつけた。「息子は科学館で開催している理科教室によく参加していた。社内募集に『先着順』とあったので、真っ先に応募しました」と参加の経緯を話してくれた。成瀬さんも「プログラムはほとんど私。でも、息子は何度もロボットを走らせて確かめ、よく頑張っていた」と褒めた。息子さんはプログラムを打つ父親の姿を間近に見て、「家でも仕事しているのでいつもどおりだった」とはにかみながら答え、将来は「ものづくりの仕事に就きたい」と話していた。

競技大会中学生の部で1位となった成瀬さん親子
日立システムでは、将来はこうしたIT人材育成イベントを、社外向けにも開催することを視野に入れる。ITをより身近に、楽しく学ぶ機会が増えていきそうだ。