インドの大手通信事業者であるタタ・コミュニケーションズは、テレプレゼンスの普及に向けて、同社の回線を使ったサービスを提供、ワールドワイドで事業を手がけ始めた。サービス可能な拠点を開拓。日本も利用可能な国の一つとして念頭に置き、拠点拡大に向けて国内NIer(ネットワークインテグレータ)などとのアライアンスを模索している。
タタ社は、テレプレゼンス・サービスをホテルや公共施設などが導入するように促している。例えば、ホテル内の「ビジネスセンター」などでテレプレゼンスができるようにするため、ファシリティを含めて「パブリック・ルーム」と称して提供。ホテルにとっては、時間単位の利用料金を徴収できることや宿泊者の増加などといったメリットがある。企業は、テレプレゼンス会議システムを社内に構築していることと、同社の通信回線「グローバル・ミーティング・エクスチェンジ」を導入することを前提に、「パブリック・ルーム」の利用が可能。企業にとっては、幹部社員などが出張先の「パブリック・ルーム」で会議ができるようになるし、多くの拠点にテレプレゼンス会議システムを導入しなくても済むというコスト面でのメリットがある。なお、連携可能なテレプレゼンス会議システムはシスコシステムズ製となっている。

クリストファー・ステッフェンズ・ディレクター(左)とリチャード・ノット・バイスプレジデント
利用できる地域は、インドのニューデリーやムンバイなどのほか、欧米を含めて10拠点。テレプレゼンス事業を担当するクリストファー・ステッフェンズ・ディレクターは、「現在、11拠点を建設中で、2010年上期に完成する。ほかにも、今後1年以内に32地域で利用可能にする」計画を明らかにしている。53拠点まで広げることで、この事業を一気に拡大させる方針だ。
拠点計画のなかには日本も含まれており、「日本で多くの拠点でチェーン展開しているホテルと交渉中」と、法人向け事業を統括するリチャード・ノット・バイスプレジデントは話す。この交渉が成立すれば、「日本のSIerなどと協業することも模索したい」考えを示している。
「パブリック・ルーム」という環境ができれば、日本でテレプレゼンス会議システムがさらに普及する基盤が整うといえそうだ。また、シスコ製品との連携が可能という点ではタタ・コミュニケーションズがアライアンスを組もうとしているのはシスコ販社とみられ、その販社にとっては大きなビジネスチャンスにつながる可能性を秘めている。(佐相彰彦)