エス・アンド・アイ(S&I、藤本司郎社長)は、法人向けメッセージングシステム「uniConnect(ユニコネクト)」が、米グーグルのOS「アンドロイド」に対応することになったことを明らかにした。販社にとっては、「uniConnect」の拡販に向けて各通信事業者のスマートフォンを提供できるようになる。これにより、S&IはPBXディーラーやネットワーク系インテグレータ、サービスプロバイダなどの販社を増やしていくほか、ユーザー企業を現在の5倍に引き上げる方針を示している。
ユーザー企業を現状の5倍に
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| 対応スマートフォンが増えたことで「uniConnect」の提供拡大に自信をみせる村田良成事業部長 |
S&Iは、法人向け発信専用ダイヤラーアプリケーション「uniConnect for Android」を開発、8月1日から同社のウェブサイトでアプリケーションのダウンロードを開始する。これにより、ソフトバンクモバイルが発売している「HTC Desire」やNTTドコモが提供している「XPERIA」などに代表される「アンドロイド」搭載のスマートフォンで、「uniConnect」を利用することができる環境を整えた。
今回のアプリケーションを開発した理由について、村田良成・第三事業部長は「各通信事業者のスマートフォンが使えるなら導入するといった声がユーザー企業から多く挙がっていたため」としている。
これまで対応していたのは、ソフトバンクモバイルのアップル製スマートフォン「iPhone」だった。法人市場では「iPhone」の需要が高まると判断したためだ。この施策によって、これまで「uniConnect」のユーザーとして大手企業やSMB、サービスプロバイダなどを獲得してきた。一方、企業では、契約している携帯電話会社が部門や社員によって異なるケースがある。つまり、「iPhone」のみに絞っていることが、ユーザー企業がスマートフォンを導入しようとする際の障壁になっていたのだ。そこで、各携帯電話会社のスマートフォンを活用できるようにしたわけである。
携帯電話会社が限られていることによる問題は、ユーザー企業だけでなく販社にも現れていたという。「マルチキャリア」を標榜しているにもかかわらず、「uniConnect」の販売では対応端末が「iPhone」のみなので、積極的に販売するというのではなく、ニーズがあれば導入するという状況だった。こうした課題を解決するために今回のアプリケーションを開発したことになる。
各携帯電話会社のスマートフォンに対応したことで、「導入に踏み切るユーザー企業が増えるほか、販売パートナーの売る意欲が高まることにつながる」と自信をみせる。現在、ユーザー企業数は大手を中心に5社で、「今年度(11年3月期)末までに現状の5倍にあたる25社にまで引き上げる」。その後の累計ユーザー数は、来年度に60社、再来年度に100社を想定している。販社については、現段階で3社を確保しており、PBXを販売しているディーラーを中心に増やす予定。また、ブレードサーバーとのパッケージで売る体制を日本IBMと敷いたほか、親会社のユニアデックスと「マルチキャリア」を軸にした戦略を共同で進めていく。

「アンドロイド」に対応することで各通信事業者のスマートフォンを提供できるようになる

これまで提供してきた「iPhone」用の画面
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クラウドサービス拡大を視野に
エス・アンド・アイ(S&I)の「uniConnect」はSIPサーバー経由で、スマートフォンを内線電話として利用できるのが特徴。SIPサーバーとして、米コミュニゲート・システムズの統合メッセージングプラットフォーム「CommuniGate Pro」を採用している。ユニファイドコミュニケーション(UC)の観点から作られたものだ。また固定電話に対応し、スマートフォンと連携することでFMC(固定と携帯の電話融合)が可能。村田良成・第三事業部長は、「国内市場にUCとFMCを広めるソリューションとして提供拡大を図る」と意欲をみせている。
機能については、メールをはじめスケジュールやチャット、電話会議などが装備されている。セキュリティ面でいえば、スマートフォンを紛失した際に遠隔から端末の初期化が行えるリモートワイプの機能も揃えている。
2010年10月から「iPhone」対応として提供を開始し、今回「アンドロイド」にも対応したことによって、同社が取り組みを強化するのはアプリケーションサービスの拡大だ。すでに、グループウェアなどUC分野に関連するメーカーとアライアンスに向けた話をいくつか進めている。加えて、ビジネスモデルとして視野に入れているのはSaaSをはじめとしたクラウドサービスでの提供。通信事業者やデータセンター(DC)事業者などサービスプロバイダ経由で広くユーザー企業に浸透させることも想定している。現在、さまざまな角度から複数のサービスプロバイダに対してアプローチをかけている。
こうしたことから、同社では「uniConnect」関連でユーザー企業にシステムを導入する「構築型」と、クラウドでの提供という「サービス型」といった二つのビジネスモデルで事業拡大を図ろうとしている。最近は、UCやFMCにユーザー企業の関心が高まっていることから、大きなビジネスチャンスになる可能性がある。(佐相彰彦)