製油業界のトップ企業である日清オイリオグループは、“脱Notes”を掲げてドリーム・アーツのウェブデータベース(DB)「ひびきSm@rtDB」を2010年3月に導入、戦略的なIT基盤の整備を着々と進めている。現在は社内にあるDBの移行に取り組んでおり、今年度(11年3月期)中に完了する見通しだ。IT化は、07年に100周年を迎えて「次の100年」を目指すためで、07年度を初年度とする10か年の経営基本構想「GROWTH10」の一環。ITの積極活用で、さらなる成長を目指す。
ユーザー企業:日清オイリオ
1907年設立。製油業界のトップメーカーの位置を堅持している。2007年に創業100周年を迎え、次の100年を見据えた新しいステージへと進むことを掲げた。その一環として、IT基盤の整備に取り組んでいる。
システム開発会社:ドリーム・アーツ
プロダクト名:ウェブデータベース「ひびきSm@rtDB」
ユーザー企業が検討する「Notes」の移行先とメーカー各社の製品カバー範囲
日清オイリオグループは、1996年から社内業務支援システムとして日本IBMの「Lotus Notes」を活用している。承認フローを伴う「問合せ管理DB」、入力値の計算機能や外部マスターとの連携、画像の表示などを備えた「文書管理DB」、イベントの開催告知とあわせて参加可否のアンケートを実施する「企画管理DB」などで業務データベースを構築していた。
そんな同社は、07年に創業100周年を迎えたのを機に、新たなステージに立つこととなった。「次の100年」を目指して、まずは10か年の経営基本構想「GROWTH10」を掲げ、その一環としてグループ内の全社員が情報を共有して戦略的に活用するIT基盤の整備に取り組み始めたのだ。そのなかで、グループ全体のシステムを連携させることを前提に、オープン化構想が持ち上がる。つまり、Notesが不適切との判断が下されたわけだ。
同社ビジネスサポートセンターICTサポートグループの島田洋一主管は、“脱Notes”によって「新しいIT基盤を構築する必要があった」と振り返る。この考えに基づいて、09年、あるベンダーのシステムを導入したが、グループウェア機能だけでNotes上に構築していたDBを移行できなかったという。紆余曲折を経て、ドリーム・アーツの「ひびきSm@rtDB」に白羽の矢を立てたのである。「ひびきSm@rtDB」を選んだ理由は、「業務に合わせ、構築や改善ができる」(島田主管)から。情報システム部情報グループの金侑香氏は、「電子化の促進という面では、導入したメリットがあった」と捉える。
システム構築は、日清オイリオグループの情報システム会社であるNSPが手がけた。担当したソリューションビジネス事業本部ICT基盤ソリューショングループの田村嘉史氏は、「(日清オイリオと)課題や解決策を共有しながら構築にあたった」と、その過程を語る。既存DBの移行や日清オイリオの社員による使い勝手など、どのようなスケジュールで進めるべきかについて、日清オイリオと“二人三脚”で取り組んだ。ICT基盤ソリューショングループの吉田幸司氏は、「システム連携など、Notesではハードルが高かったことが、Sm@rtDBではオープン化を中心にできるようになる。この利点をいかに生かすかを重視した」と基本構想を説明する。
稼働開始から7か月程度が経過した現在、1000程度あるDBのうち約10分の1の移行が完了したという。まだまだ道半ばではあるが、「現場との調整を含め、今年度中には完了させたい」(日清オイリオの島田主管)という考えを示す。
ただし、完全移行に際しては課題もある。「IT統制」がそれだ。知識がなくても業務アプリケーションを簡単に構築できるだけに、「現場で異なった使い方をしたり、まったく使わなかったりという状況は避けたい。成長ツールとして、有効活用するように促す」(同)としている。

(左から)日清オイリオの島田洋一主管と金侑香氏、NSPの田村嘉史氏と吉田幸司氏、ドリーム・アーツの小林泰彦氏
ドリーム・アーツで営業を担当している営業統括本部ソリューションセールス部の小林泰彦氏は、今回の導入事例について、「Sma@rtDBは、直感的な操作性で多彩な業務DBデータも既存部品の組み合せで簡単に構築できるので、ユーザー企業の業務を改善することに絶対の自信をもっている。この機能をフルに生かすためには、ユーザー企業の現場を踏まえた提案が重要になってくる」と噛み締めている。日清オイリオグループの導入事例は、ドリーム・アーツにとってユーザー企業への提案をさらに強化するものとなった。(佐相彰彦)
3つのpoint
・DBを有効活用する戦略思考が明確
・さまざまなシステムと連携できることを重視
・オープンなシステムという方向性