OKI(沖電気工業)のプリンタ専業会社であるOKIデータ(杉本晴重社長)が、この半年で「5年間無償保証」のLED(発光ダイオード)プリンタ「COREFIDO(コアフィード)」シリーズのラインアップを完成させた。今年10月上旬には、世界最薄(同社調べ)のA4カラーLED複合機と、ページプリンタで国内最大市場向けとなるA3モノクロLEDプリンタの出荷を開始。A3モノクロ機では、中堅・中小企業(SMB)をはじめ、同社で最も伸び率が鈍い大企業・官公庁を開拓する。フルラインアップで2011年度(2012年3月期)は、国内ページプリンタ市場で今年度のシェア8%から10%に拡大することを目標にしている。

10月中旬に出荷開始した新モデルを背にする中里部長
5年間無償保証を“武器”に一気に攻勢
OKIデータが今年10月上旬に出荷を開始した新モデルは、二つの新たな領域に向けた「COREFIDO」シリーズのプリンタだ。A4カラーLED複合機は「MC561dn」(毎分カラー26枚、モノクロ30枚)と「MC361dn」(カラー22枚、モノクロ24枚)の2機種で、「高速ダブル両面」を実装しているのを最大の特徴としている。高速自動両面スキャナと高速自動両面プリンタを標準装備しながら、本体の高さはA4カラー複合機で世界最薄の444mmとコンパクトになっている。
新モデルのA4カラーLED複合機は、従来機種に比べても、高さが約80mm短く、容積が20%以上小さい。プリンタ事業全般の責任者である中里博彦・執行役員NIP事業部長は、「独自のLED技術があって、初めてこれだけのコンパクトさと性能を生み出すことができた。A4カラーLED複合機の新モデルは、ファクシミリを単体で使うユーザーなどへ売り込める」と、販売に自信をみせる。もう一つ、本体の小型化に貢献したのが、スキャナ部分の革新だ。初めて自社で開発し、用紙搬送の長さを従来に比べて20%短縮するなどで、高速化と小型化を実現したのだ。
また、同時期にA3モノクロLEDプリンタの出荷も開始した。新モデルは「B840dn」(毎分40枚)と「B820n」(35枚)の2機種。A3モノクロプリンタ市場は国内で31万5000台と、最大規模の市場だ。この2機種は、新開発の低温定着トナーを採用することで、5秒のファーストプリントを実現した。また、120万枚(ページ)の高耐久性とシンプルな設計でメンテナンス性を高めた。OKIデータが2011年度に国内ページプリンタ市場でシェア10%を狙うには、欠かせない領域のラインアップだ。中里部長は「環境面でも、消費電力を極限まで削減するため、『Green ASIC』を搭載し、スリープ電力0.9Wを実現した。今後も、エコ(環境配慮)はプリンタ販売で意識される項目となるので、引き続き開発を強化する」という。

LEDときょう体内の技術革新が進み、トナーの取り出しや故障時の作業は、さらに簡単になった
大企業と官公庁を攻略へ
「COREFIDO」シリーズは、2008年の立ち上げから2年間で、すべての領域でのラインアップを揃えた。そして、ラインアップが完成する前の段階から、シリーズの攻勢は始まっている。10年4~9月の半期は、前年比で110%も販売台数を伸ばし、通期(10年4月~11年3月)でも116%の成長を見込んでいる。
「COREFIDO」シリーズが成長を続ける大きな要因は、業界唯一の「5年間無償保証」を掲げていることだろう。この制度は開発当時、営業サイドから「新シリーズを急成長させるうえで、他社と違うことを実行すべし」との要望としてあがってきた。これに対し、事業部や生産サイドからは反対の声が聞かれたが、「プリンタ/複合機を導入するにあたって保守料金を考慮するユーザーが多く、実際、価格や機能が同等の複数社の製品を比べる場合、無償保障が長いほうを選ぶ傾向にあった。もともと故障率が低かったことも、無償保証を決断させた理由だ」(中里部長)と、「5年間無償保証」に踏み切った理由を語る。
従来の保証は、無償期間が半年、保守5年契約で10万~15万円、スポット保守でも3万~4万円と部品代を徴収していた。「5年間無償保証」を実行したことにより、「とくに、学校や自治体など、大量の台数を一度に購入するユーザーには受けがいい」という。機器購入費は予算計上できるが、保守料金は計上しにくく、これが足かせとなって大量台数を一度に購入できなかったからだ。
いまのところ、競合他社には「5年間無償保証」制度を追随する動きはない。機器への絶対の自信がなければできない制度だけに、しばらくの間はOKIデータの独壇場になる。コピーメーカーの場合は、事務機ディーラーや販社へのインセンティブとして保守料金の制度を見直すことが難しい現状がある。この間隙を縫って、ラインアップが揃ったことを契機に、弱みだった大企業・官公庁を主体に、システムインテグレータなどと組んだソリューション展開を本格化させる。