中堅企業市場はオービック、中小企業市場はOBCがシェアトップに君臨している販売管理システム市場。独自開発からパッケージ化の流れが進行しており、調査会社ノークリサーチは、有力ベンダーのパッケージ製品を中心にシェアの寡占化が進むとみている。一方で、地方ベンダーは独自開発を強化していくことで差異化を図るのが得策として、「立ち位置を明確にすべき」と提言する。(文/鍋島蓉子)
figure 1 「勢力」を読む
中堅企業市場、中小企業市場それぞれに“絶対王者”
調査会社アイ・ティ・アール(ITR)によると、従業員300人から5000人未満の中堅企業向け販売業務分野ERP市場のベンダー別出荷金額のシェアトップはオービックで、2位の富士通マーケティング(FJM)に3.5倍以上の差をつけている。3位は内田洋行、4位にオービックビジネスコンサルタント(OBC)と続く。オービックとFJMは不況のさなかも出荷金額を伸ばし、OBCは2010年度に顕著な伸びをみせている。「OBCはiシリーズへのアップデートが進んだ」(ITRの藤巻信之シニア・アナリスト)。中小企業向け市場では、年商100億円未満の企業に強いOBCがシェアトップで、2位以降はOSKやピー・シー・エー、応研など少数のメーカーがシェアを分ける構図となっている。二番手グループの応研は、「業種別テンプレートを50~60ほど揃えていることが強み。マスター項目数を大幅に追加できるデータベース拡張オプションを活用することで、ユーザーニーズに幅広く応えていく」として追い上げを狙う。
市場別にみた有力ベンダー
figure 2 「トレンド」を読む
基幹系と情報系の連携、再び
「基幹系と情報系の連携は以前から話としてはあったが、あまり中堅・中小企業(SMB)に浸透しなかった。しかし、内田洋行が『スーパーカクテル デュオ販売』にCRM機能を標準実装するなど、新たな盛り上がりをみせ始めた。CRM機能を駆使することで、販売実績と案件の見込み情報をかけ合わせることができるようになる」(SMBの調査に強いノークリサーチの岩上由高シニアアナリスト)。「スーパーカクテル」の主要ターゲット層である年商100億円前後の中堅企業は、情報システム部門の担当者が不足しているケースが少なくない。そこで内田洋行は、「管理しきれない」という声に応えて、最低限必要な管理機能をシステムに組み込んでいる。ポイントは使いやすさだ。納期遅れや売れ筋製品などの定量的な情報と、クレーム情報や社員のコメントなどの定性的な情報などをそれぞれ表示。確認が必要な仕掛り業務には、タグを付けて社内確認が行き届くようにすることができる。
「スーパーカクテル デュオ販売」の特徴
figure 3 「導入傾向」を読む
パッケージ利用が徐々に増加
ノークリサーチによると、販売管理システムは年商100億円の企業を境に、ERPの一機能して利用する傾向がある。一方で、仕入・在庫管理システムは年商50億円がその境界線となっている(同社は仕入・在庫管理システムと販売管理システムの単体製品を分けて調査している)。いずれも独自開発の比率が高く、販売管理システムでは全体の36.1%を占める。岩上シニアアナリストは、有力ベンダーのパッケージ製品の利用が今後は徐々に増加していくとみている。パッケージの導入傾向については「不況の影響があるほか、大企業のERP導入が必ずしもうまくいっていないために、部分最適でパッケージを導入する事例が多い。また、年商50億円以上になるとOBCの『勘定奉行』と他ベンダーの販売管理システムとの組み合わせが珍しくないが、弥生の『弥生会計』のユーザーである中小企業は『弥生販売』も導入している」と状況を説明する。販売管理システムのSaaS/ASPの利用は1.9%を占めるに過ぎず、「SaaSにする必然性がなければ、利用は進まない」との見方をとる。ITRの藤巻シニア・アナリストは、「SaaSは代理店の収益が上がりにくく、パッケージをカスタマイズするほうが単価が高くなる。そのためSaaS提供の動きは進んでいるが、本気で取り組んでいる事例は少ない」と指摘する。
「販売管理システム」製品/サービスの利用形態
figure 4 「ユーザーの評価」を読む
総じて評価が高い「Intra-mart販売管理システム」
ノークリサーチによると、年商500億円未満のSMBへの調査で、販売管理システムの導入/サポートの価格評価が最も高いのが日本IBMの「GUI-PACK/販売管理」だ。2位がNTTデータイントラマートの「Intra-mart販売管理システム」、3位がミロク情報サービス(MJS)の「MJSLINK販売大将」となっている。このうち、内田洋行の評価の低さが際立つ。これについては、「.NETベースの製品以前の旧製品を利用していたユーザー企業から、バージョンアップのコストなどについて不満が噴出しているのではないか」(岩上シニアアナリスト)との見方がある。機能の充足度では、MJSの「MJSLINK」の満足度が最も高い。2位以下では「Intra-mart」、NTTデータシステムズの「SCAW営業管理システム」といった製品が高い支持を得ている。機能の追加に関しては、フレームワーク製品としての性格が強い「Intra-mart」の評価が最も高い。「『Intra-mart』は、他システムとの連携でも高い評価を受けている」(岩上シニアアナリスト)。全体を通して、ユーザー企業の多くが「Intra-mart」を高く評価しているようだ。一方で、OBCは総じて評価が低いのが目立つ。「本来は『商奉行』を導入しない年商規模の企業がユーザーにみられることが要因の一つと考えられる」(岩上シニアアナリスト)。
製品/サービスの「機能充足度」評価