東京・六本木ヒルズの森タワーをはじめ、港区を中心に106棟の賃貸ビルを運営・管理する都市再開発事業者の森ビル(辻慎吾社長)。オフィスや住宅、レストランなどを融合した「愛宕グリーンヒルズMORIタワー」(港区愛宕)で、空調などに使うエネルギーの削減目指し、2010年の夏、三井情報のクラウド型省エネルギーマネジメントサービス「GeM2」を試験運用し、今年6月には本格稼働を開始した。
森ビル
会社概要:1959年に設立。都市再開発のほか、不動産の賃貸・管理やオフィスビルの運営管理、美術館など文化施設の運営などを事業としている。東京港区を中心に、賃貸ビル数は106棟。2010年3月期の連結売上高は1773億円。
サービス提供会社:三井情報
サービス名:クラウド型省エネルギー マネジメントサービス「GeM2」
「GeM2」のサービス構成

東京・六本木の森ビル本社オフィスからみる「愛宕グリーンヒルズMORIタワー」。CO2排出量を約1万2000トンから約1万トンに削減した
三井情報が2010年2月に提供を開始し、大手家電量販店やシネマコンプレックス運営会社などが導入している「GeM2(ジェムツー)」は、省エネルギーマネジメントを実現するクラウド型サービスである。店舗やオフィスの温度・湿度情報をインターネットを介してデータセンター(DC)に送信し、その情報をもとにして、空調・換気扇・照明を統合的に自動制御するのを特徴としている。「GeM2」は、例えば室内の平均温度を27℃に設定すれば、季節や時間帯に合わせて、温度を下げたり上げたりして、平均として27℃を保つように自動的に調整する。消費エネルギーの削減を行うと同時に、店舗/オフィス環境の快適さを維持することができるわけだ。
今年6月に「GeM2」を本格稼働した森ビルは、2010年4月に東京都が施行した改正環境確保条例によるエネルギー削減の義務化を受け、快適なオフィス環境を求めるテナントのニーズに配慮しながら、省エネを実現するためのソリューションを必要としていた。「GeM2」の導入を決断した管理運営本部管理技術グループの富田滋上席副参事は、「もともと、室内温度を時間帯などに合わせて調整することなく、一日中27℃に固定して設定すれば、不快に感じる人が多いだろう。そこで、空調を自動コントロールし、快適性を損なわずにエネルギー削減ができるということを重視した。それが『GeM2』を選択する決め手になった」と語る。
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| 森ビル管理運営本部管理技術グループの富田滋上席副参事。「他のビルへの導入も検討していく」と語る |
森ビルは、昨年8~9月に「GeM2」を試験運用して、空調エネルギーをおよそ8%減らした。「GeM2」の活用によってエネルギーを削減したことが大きく貢献したかたちで、愛宕グリーンヒルズMORIタワーの2010年のCO2排出量を、前年の約1万2000トンから約1万トンに減らすことができたという。このような目に見える効果と、「GeM2」を既存設備と連携できること、クラウド型のために導入コストが低いことを踏まえて、昨年秋に本採用を決意した。今夏は、稼働の2シーズン目を迎えている。
森ビルは、「GeM2」のメリットを高く評価して、今後、同社の他のビル/施設への横展開を検討していく。富田上席副参事は、「設備によっては『GeM2』の採用ができないビルもあるが、相性をみながら、導入できるビルには取り入れることを検討したい」という。今冬をめどに、六本木ヒルズの森タワーの49~54階に位置して美術館や展望台を有する「森アーツセンター」や、貸し会議室「アカデミーヒルズ」に「GeM2」を採用することを考えているそうだ。
同社は、テナントに対して、エネルギー削減と快適性の維持を両立させる「GeM2」の導入をアピールしている。東日本大震災後に節電に関する需要が拡大しているなかで、森ビルのオフィススペースの差異化を図っていく。富田上席副参事は、「『GeM2』のおかげで、愛宕グリーンヒルズMORIタワーでは、同じ27℃でも他のビルに比べて快適に感じる」と鼻を高くしている。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
・快適性を損なわずに、省エネを実現
・導入コストを少額で済ませる
・既存設備との連携に対応