大塚商会のソフトウェア子会社のOSK(宇佐美愼治社長)が開発・販売する中堅・中小企業(SMB)向け統合基幹業務システム(ERP)「SMILEシリーズ」の販売が好調だ。昨年に投じた施策が実を結んでいる。売り上げ伸長のポイントは単価アップにある。もっとも、現在は新規販売が好調であっても、ベンダーに求められる機能要件や提供形態は変化しつつある。OSKも中長期的視点で、新しい収益モデルの創造を目指している。OSKのERPパッケージ事業の現状と未来を探った。
OSKが販売するSMB向けERP「SMILEシリーズ」は、年商50億円未満の中小企業を中心に支持を得てきたパッケージだ。販社として、親会社である大塚商会を筆頭に、日本ビジネスコンピューターやリコージャパンなどが揃っている。こうした強力な販売チャネルを特徴としてきた。
今年に入り、新規販売の実績を伸ばしている。OSKの笹原直樹・営業本部マーケティング部部長は、「月によっては売り上げベースで130%以上伸びている」と話す。この好調の背景には、主に三つのポイントがある。
「リプレースであれば、新規に比べ納入単価が下がる。大塚商会をはじめとするパートナー企業が新規販売にシフトしたことが功を奏した」(笹原部長)。ネットワーク版の販売比率が上昇したことも単価アップにつながった。従来は年商10億円未満の企業が多かったが、年商20億~30億円の企業にユーザー企業層が広がっている。このほか、出版業やアパレル業、製造業などの業種・業界別テンプレートを追加(現時点でおよそ10種)してきたことで、企業の要望に応えやすくなったことがプラスに働いた。
調査会社のノークリサーチによると、2010年SMBのERP利用シェアに関する調査で、ウィザード形式で独自機能を盛り込める「Custom AP Builder」を備えた「SMILEシリーズ」が高い自社要件合致性を有している製品として企業から評価されている。そのため、カスタマイズ以外での個別要件対応への取り組みが「SMILEシリーズ」の導入を後押ししている可能性もある。
パッケージ販売が絶好調の同社だが、中長期的には決して楽観的な見通しを立ててはいない。むしろ危機感を抱いているほどである。「数年後には、市場は飽和に向かう。5年前を振り返ってみると、あまり業界に変化はなかった。しかし、今後5年間は大きく変化していくのではないか」(笹原部長)とみているからだ。「SMILE」と連携するSMILEファミリー製品の拡充を進めたり、モバイルに対応したりするほか、情報系システム「eValueシリーズ」やeラーニングとの“融合”を目論む。
内田洋行による直系販社の再編・統合など、生き残りに向けてベンダーが動き始めている。OSKも例外ではない。すでに次の一手を構想している。(信澤健太)