ダイヤモンドジュエリーの加工・販売を手がけるニッセンホールディングスグループのオリエンタルダイヤモンドは、基幹業務システムをITホールディングスグループで有力SIer、ネオアクシスのクラウドサービス「NAXクラウド」へ移行した。IBM PowerSystems(旧IBMi、旧AS/400)シリーズに対応したクラウドサービスで、同じくPowerSystems上に基幹業務システムを構築し、親和性を重視するオリエンタルダイヤモンドのニーズに合致したことが採用の決め手となった。
オリエンタルダイヤモンド
会社概要:宝飾用ダイヤモンドの加工・販売を手がける。ダイヤモンド原石の輸入や裸石(ルース)の買い付け、ジュエリー商品の企画、加工、卸、小売りまでを一貫して行うダイヤモンド総合企業。
サービス提供会社:ネオアクシス
サービス名:「NAXクラウド」サービス
オリエンタルダイヤモンドとトレセンテのシステム概要
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オリエンタルダイヤモンド 南勉・情報システム部門長 |
オリエンタルダイヤモンドは、東日本大震災の発生以降、基幹業務システムの運用に大きな不安を抱えていた。基幹システムを動かすハードウェアは、本社のある東京・浜松町に置いているオンプレミス(客先設置)型の運用形態。原発事故に伴う電力事情の悪化は、不測のシステム停止につながる恐れがあった。その後、夏季の電力供給不足が目前に迫り、なおかつハードのリースが2011年8月末に切れる。非常用電源を完備しているデータセンター(DC)への移行や、クラウドサービスを利用することで、保守の手間がかかるハードの所有そのものをやめることが抜本対策の候補に挙がった。
だが、DCにハードを移設する方式は、「保守作業のためにDCに赴く移動時間がもったいない」(オリエンタルダイヤモンドの南勉・情報システム部門長)ことを理由に却下。ハードの保守を必要としないクラウド方式に絞り、複数のベンダーに相談をもちかけたところ、ネオアクシスからクラウドサービス「NAXクラウド」の提案を得た。
基幹業務システムの移行だけに、南部門長が重視したのはシステムの親和性の高さだった。もともとオリエンタルダイヤモンドの基幹システムは、IBM PowerSystems上に構築されたもので、実は、ネオアクシスは90年代にこのシステムの開発に関わっている。NAXクラウドもPowerSystemsベースで開発されており、「PowerSystemsユーザーのクラウド移行の受け皿になる」(ネオアクシスの柳田良明・ビジネスソリューション事業部開発2部部長)という役割も担う。開発環境はオリエンタルダイヤモンドの基幹システムと同様のLANSA(ランサ)に対応しており「親和性が高く、移行後の信頼性も高い」(オリエンタルダイヤモンドの南部門長)ことから、NAXクラウドへの移行を決断した。
NAXクラウドで使うDCについては、ITホールディングスグループが運用する富山県のDCをオリエンタルダイヤモンド側へ最初に提案した。首都圏の電力事情が悪化するなか、正しい選択ではあるものの、南部門長は「いくらクラウドといえども、最後は自らがDCに駆けつけて責任を果たさなければならない」と考え、あえて首都圏のDCを選んだ。同社のシステムは全国約450社の販売店やグループ販社との受発注システムがオンラインでつながっているだけに、停止が許されないという事情もある。
ネオアクシス営業部の稲垣崇氏は、「ユーザーによって判断は分かれる」とし、ユーザーにとって最適な立地のDCを選ぶことでNAXクラウドに対する安心感を高めてもらう方針で臨む。また、オリエンタルダイヤモンドのケースでは、グループ販社のトレセンテと情報システム部門を共有していることもあって、「ぎりぎりの人数で運用せざるを得ない」(南部門長)状況でもあった。今回のクラウドサービスへの移行は、ハードを所有することをやめたことで、運用面での負荷を大幅に軽減するとともに、電力事情の悪化や災害に強いシステムへの移行を果たした事例である。(安藤章司)

ネオアクシスの柳田良明部長(右)と稲垣崇氏
3つのpoint
・クラウド移行時のシステムや開発環境の親和性を重視
・首都圏DCと地方DCのメリットとデメリットを深く理解
・万が一のとき、自らDCへ赴いて責任を果たす方策を確保