ピー・シー・エー(PCA、水谷学社長)は、11月、社会福祉法人の新会計基準に対応したパッケージとクラウド/SaaS版の「PCA社会福祉法人会計V.4」の提供を開始した。競合他社に先駆けて展開しているクラウドサービスを強みに、会計基準の改正に伴う特需を取り込む考えだ。新製品のリリースを機に、導入社数の拡大を狙っている。
PCAが発売した「PCA社会福祉法人会計V.4」は、2012年4月に施行される社会福祉法人の新会計基準に対応し、内部取引の自動消去や事業区分管理、内訳表などの機能を追加・強化した。クラウドサービスである「PCA for SaaS」への対応が他社とは異なる特徴となっている。
水谷学社長は、「社会福祉法人の特色は、施設が点在していること。こうした複数の施設を結ぶことができれば、業務効率が向上する。それを実現するには、クラウドサービスが有効だ」とアピールする。ユーザーは、災害対策や事業継続、コスト削減といった観点からクラウドのメリットを享受できる。
それだけではない。折登泰樹専務は、「公益法人や社会福祉法人などは多額の初期投資をするよりも、月額の支払いのほうが予算化しやすい」と指摘する。パッケージに加えて、対応機器を購入してサーバー利用料を支払う「買取プラン」や、月額利用料だけで利用できる「イニシャル“0”プラン」、数か月単位の利用期間を選択できる「プリペイドプラン」などのクラウドサービスの料金体系を用意する同社は、ユーザーの幅広い要望に応えることができる。
サービスの提供を支えるクラウド基盤はすべて自社で構築しており、当初から目標としているクラウドサービス全体の法人ユーザー数8万社分を運用できるという。年内には、導入企業数1000法人の突破を見込む。「競合ベンダーがクラウド事業に参入しても、当社はすでに顧客を抱えていて、新しい機材で勝負できる。すでに億単位のビジネスに育ってきている。圧倒的に有利だ」(水谷社長)。クラウドサービスを提供するには多額の先行投資が必要で、ベンダーの負担は大きい。すでに黒字化しているPCAは、価格競争力で優位な立場にあるというわけだ。
営業面では、2010年12月に、東海4県(静岡、愛知、岐阜、三重)と北陸3県(石川、福井、富山)を管轄地域とする中部営業部を新設。5月には、静岡営業所を開設し、全国レベルでの拡販体制を整えた。
クラウドサービス・パッケージソフトの新規導入、既存顧客のバージョンアップも含め、年間1000システムの販売・導入を目指している。
強力な競合である「福祉大臣NX」の導入実績で優位に立つ応研をはじめ、競合各社も同様に社会福祉法人会計の特需を見込んでいる。既存顧客の囲い込みはもちろん、新規開拓に全力を挙げてくるだろう。応研を追撃するPCAにとって、クラウドサービスの訴求が販売拡大のカギを握る。(信澤健太)

「PCA社会福祉法人会計V.4」