国内のXMLデータベース(XML DB)管理システムで国内シェア1位(富士キメラ総研調べ)のサイバーテック(橋元賢次社長)は、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)以外の「NoSQL」と呼ばれる領域の拡大を図っている。RDBMSでは実現が困難だった印刷・出版、流通卸、金融などで使われるデータベース管理をXML DBで可能にするため、DB製品と連携する製品の拡充を急いでいる。現在、同社が「アライアンスパートナー」と呼ぶソフトウェアベンダーは約10社。これを年内に60社程度までに増やし、販売対象の拡大を目指す。[取材・文/谷畑良胤(本紙編集長)]
RDBMSとのガチンコ勝負避ける戦略
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| 橋元賢次 社長 |
国内XMLデータベース市場は、5年ほど前から急成長し、認知度も高まってきた。XML DBが特許庁など政府・公共機関やEDIに代わる商取引情報の標準書式となったほか、流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)や財務報告用の書式であるXBRLを採用する銀行など業界団体での率先したXMLデータの採用が広がったことが成長の要因となった。とはいえ、XML DB関連ITベンダーが予測するほどには市場は伸びていなかった。それが、iPhone/iPadやAndroid端末の法人利用が拡大するなかで、元データをXMLで一元化し、「ワンソース・マルチユース」の用途が増え、再び注目を集めている。
XML DBを扱うITベンダーの間では、数年前から「NoSQL」という言葉を用いてRDBMSと一線を画している。「NoSQL」は、RDBMS以外でSQLを使用しないDBを総称したもので、SQLに限らない「Not Only SQL」の略として使う業界関係者も増えている。「NoSQL」データベースはRDBMSにない特徴をもっている。最近の製品では、安価なサーバーを大量に並べて並列処理を行い、処理性能の向上を実現するものも出てきた。
だが、XML DBの市場拡大を阻んできたものがある。その要因の一つとして、RDBMSと真っ向勝負してきたことなどが挙げられる。サイバーテックの橋元社長は「RDBMSは開発工数が多く、運用コストが高額であるなどの課題は多いが、顧客や販売会社の慣れたRDB発想を払拭するのは難しい。主要RDBMSを提案すれば、安心されるというブランド信奉もある。今は、ここと正面から勝負するのではなく、適材適所でRDBMSとXML DBを棲み分けることを推奨している」と、ウェブ出力(タグデータ)/ドキュメント(半定型)はXML DBで、定型出力(基幹系)/分析系(数値演算)はRDBMSという具合に用途に応じた製品戦略を進めている。
同社は1月18日、「ワンソース・マルチユース」分野を強化することを発表。例えば、ウェブや組版などの複数用途に展開するなど、印刷業を中心とするこれまでの応用分野や、XMLで一元化されたデータをスマートモバイルなど複数端末へ吐き出す展開など、新たな用途に向けた販促活動を積極化する。橋元社長はこの分野を「『集める・ためる・活用する』というコンセプトで市場拡大を目指す」という。
XML DBを売る パートナーを拡充
サイバーテックの主力XML DB製品は、XML初心者でも容易に扱え、ドキュメント管理に適したデファクトスタンダード(事実上の業界標準)の「NeoCoreXMS」と、大規模システムに適したスケールアウトが可能でチューニング幅の広いメモリ型と呼ぶ「Cyber Luxeon」がある。例えば、「NeoCoreXMS」はニッセイ同和損害保険が保険契約者向けインターネットサービスのDBに採用している。「Cyber Luxeon」は、福岡銀行と広島銀行が銀行業務用の膨大な規定類をウェブベースの「規定集電子化システム」として構築した。業務のスピード化とコスト削減を目的にRDBMSの採用を見送り、XML DBでつくり上げている。
サイバーテックでは、こうした事例や最近の傾向をもとに、XML DBに適した用途を示し、それにマッチするサードパーティーの製品と同社製品を組み合わせた製品開発・販売展開を積極化していく。この戦略に基づき同社は、「NeoCoreXMS」「Cyber Luxeon」と連携可能な自社製品やサービスをもつITベンダーで、同社と共同で各種マーケティング活動を行うアライアンスパートナーを拡充する。現在、著作権保護サービスを提供するアイドックや帳票のウイングアークテクノロジーズ、リッチクライアントを提供するベンダーなど10社程度と協業しているが、これを60社程度まで拡大する。
橋元社長は「業種業界特化の製品をもつITベンダーのほか、クラウド/SaaSを提供するプレーヤーにも参加を促す」方針だ。XML DBの用途が拡大するなかで、トップベンダーである同社の動きは注目に値する。