有力SIerのサンネットは、エス・アンド・アイのユニファイドコミュニケーションシステム「uniConnect(ユニコネクト)」をベースに、社内情報システムを刷新した。情報共有の効率化や事業継続計画(BCP)の強化の必要性を踏まえ、「uniConnect」や「Google Apps」、グループウェア「desknet's(デスクネッツ)」などを採用。創業の地である神奈川県小田原市の本社と、東京本社の2本社体制へ移行した2011年9月のタイミングに合わせて本稼働にこぎ着けた。
サンネット
会社概要: サンネットは小田原市と東京都に本社を置く有力SIerで、会計業務システム分野に強みをもつ。1969年、小田原電子計算センターとして発足。業容拡大で2011年9月に東京本社を開設した。社員数は約130人。
プロダクト提供会社:エス・アンド・アイ
プロダクト名:uniConnect
サンネットの社内向け情報システムの概要

サンネットの市川聡社長(右)と、片岡秀文情報システム課長
サンネットは2011年9月の東京本社開設のタイミングに合わせて、社内情報システムの刷新を検討していた。2010年12月頃から刷新の方向性について議論していたものの、いざ方向性を定めようとしていた矢先に東日本大震災が発生。直後の原発事故に伴う電力事情の悪化で、創業の地である小田原市にある本社は計画停電の憂き目に遭うこととなった。サーバーやPBX(構内交換機)が止まり、電話やメールがまったく使えない事態が断続的に発生し、市川聡社長は「BCPの観点からすれば、社内にIT機器を置いておくのはよくない」と痛感。これをきっかけに、これまで検討してきた社内情報システムのあり方を根本的に見直すことを決断した。
導き出した答えは、パブリッククラウドやデータセンター(DC)事業者の設備を積極的に活用することだった。たとえ首都圏の電力事情の改善が遅れても、事業を継続できる環境づくりを重視したわけだ。片岡秀文・情報システム課長は、「計画停電を経験して、そもそも社内に置くべきITシステムとは何かの検証からやり直した」というように、震災がサンネットの社内システム刷新に大きな影響を与えた。
また、「小田原と東京の2本社体制になり、さらには客先に出向いている社員も少なくない。社内の情報共有の効率化を考えると、クラウド化に踏み出す必要性も高まっている」と市川社長は考えた。インターネットをベースとしたアーキテクチャにすることで情報共有がより円滑に進み、さらにBCPの強化につながると判断したのだ。結果として電子メール系はGoogleの企業向けクラウド型情報サービス「Google Apps」、グループウェアは「desknet's(デスクネッツ)」を採用。グループウェアは外部DCを活用することで、自社内にはできるだけフロントエンドシステムのサーバーを置かないスタイルを採った。
これら電子メールやグループウェア、従来型の電話を統合するシステムとして、エス・アンド・アイのユニファイドコミュニケーションシステム「uniConnect」を社内に置くことを決めた。uniConnect以外で社内に置いたのは、「小田原本社にある財務会計システムと、社員が使うパソコン、スマートデバイスなどの端末くらいなもの」と市川社長がいうように、分散環境を自ら運営するuniConnectで巧みに連携・同期させる仕組みを構築した。
サンネットは会計業務システム分野に強みをもつSIerであるのに対し、エス・アンド・アイはネットワークやIT基盤系を得意とする。これまでも案件ベースで協業してきたこともあって、かねてからuniConnectのすぐれた特性は念頭にあったという。サンネットは、iPhoneやiPadといったスマートデバイスも積極的に採り入れているが、これについてエス・アンド・アイの増田隆一・マーケティング部長は、「スマートデバイスとの連携にも強みを発揮する」とみており、デバイスの多様化への対応力も今回の評価の対象となったと自負する。
震災が契機となって、社内情報システム刷新の方向性を、従来型の社内設置型からクラウドをはじめとする外部サービスをuniConnectを中心に連携させる分散型統合管理に切り替えた。今後も従来の情報システムに対する固定観念にとらわれない先進的なシステムやサービスを自ら率先して採り入れていくことで、「当社の顧客に向けて、より質の高い情報サービスを提供していく」と、サンネットの市川社長は意気込んでいる。(安藤章司)
3つのpoint
・ユニファイドコミュニケーションで分散情報を統合へ
・事業所間や客先常駐する社員との情報共有とBCPを両立
・震災を契機に情報システムへの考え方が大きく変わる