総合商社の兼松は、受注案件獲得の増加を目的として、部門間の連携強化に力を注いでいる。まずは、ドリーム・アーツのクラウド型コミュニケーションツール「INSUITE」を導入、全社統一の情報共有を進めており、次のステップとして部門間コラボレーションの実現でビジネス領域の拡大を図る方針だ。
兼松
会社概要:兼松は、1889年8月15日の創業で120年以上の歴史をもち、電子・IT、食品・食糧や鉄鋼、機械・プラント、環境・素材などの総合商社としてビジネスを手がける。国内外に拠点があり、社員数は連結で4770人。
プロダクト提供会社:ドリーム・アーツ、兼松エレクトロニクス
プロダクト名:INSUITE
「INSUITE」の利用イメージ
兼松がドリーム・アーツの「INSUITE」を導入し、その稼働を開始したのは2011年10月だった。最初のステップとして、「INSUITE」のスケジューラ機能の利用から始めた。導入の理由について、庭野博之・システム企画部長は、「部門間の情報共有が不足していると感じたから」と説明する。総合商社の同社は多くの商品を取り扱っており、手がける商品によって部門が分かれている。庭野部長は、「業務の性格上、縦割りの業務スタイルになってしまっていた」と認める。例えば、会議室の予約一つをとっても、部門ごとに管理していたために、利用スケジュールが重なることが多かったという。そんなことから、「部門間での連携を強化するためには、情報の共有が欠かせない。全社的なスケジュール管理が必要」(庭野部長)と判断した。
製品の選定にあたっては、システム企画部でプロジェクトチームを結成した。そのプロジェクトで活躍したのは女性社員たち。女性特有の感性でシステムを選ぶのが効果的という考えがずばり的中したのだ。企画課の寺内容子氏は、「使う社員の立場に立つことを心がけた」と言い、日常の操作での使いやすさやデザインなど、視覚的な部分も考慮しながら「INSUITE」を選んだ。稼働を開始した後、「多くの社員から便利だと評価された」と企画課の山寺桃子氏はうれしさを隠さない。
グループ会社の兼松エレクトロニクス(KEL)からの提案も導入を後押しした。KELの南埜滋・マネージメントサービス本部長は、「国産製品なので、日本人に適した操作性やデザインを実現している」と提案の理由を語る。
また、兼松のシステム企画部では、全社員に向けて説明会も実施。運用課の稲田美枝氏は、「社内全体でスケジュールを共有できることをアドバイスした」という。社内では、それぞれの部門が異なるスケジューラを利用していて、使い慣れているという理由から、変えることに抵抗を示す社員が多かった。それを、説明会を通じて社員の理解を得ることができたわけだ。さらに、取引先との打ち合わせを優先するなど、会議室を予約するうえでのルールを定めた。最初のうちは、ルールを守らない社員や部門が出てくることを予想していたが、それはいい意味で裏切られた。運用課の赤平淳一氏は、「社員がモラルをもって使っている」と自賛する。
兼松にとって「INSUITE」は、スケジューラによって情報を共有するということ以上に、クラウドを初めて導入したという意義が大きい。今後は、3月末をめどに「INSUITE」のポータル機能、今年夏にワークフロー機能を導入する予定だ。クラウドだからこその迅速な導入で、「部門を越えてプロジェクト単位で情報共有できる場を広げていく」(庭野部長)としている。これからの課題は、ポータルの導入でコミュニケーションが活性化して、部門間の連携強化を実現できるかどうかである。
KELにとっては、「兼松さんがINSUITEのファーストユーザー。この案件は大きな意味をもっている」(山口賢治・マネージメントサービス事業部クラウドサービス推進室主任)という。ドリーム・アーツも、「コミュニケーションツールを開発する立場から、情報共有が業務効率化や売上拡大につながることも訴えていく」(営業統括本部ビジネスパートナーセールス部の周玉傑氏)。KELとドリーム・アーツは、兼松が情報共有を強化することを手厚く支援していく意向を示している。(佐相彰彦)

(前列左から)兼松の寺内容子氏と山寺桃子氏、(後列左から)赤平淳一氏と庭野博之部長、稲田美枝氏、ドリーム・アーツの周玉傑氏、KELの南埜滋本部長と山口賢治主任
3つのpoint
・全社統一の情報共有でビジネス拡大へ
・社員にとっての使いやすさがカギ
・クラウドサービスで迅速に導入を進める