英国大手のICT(情報通信技術)ベンダーであるBTグループ(イアン・リビングストンCEO)の日本法人、BTジャパンは、販売体制の再編に急ピッチで取り組んでいる。現在、1月に就任した吉田晴乃新社長の下で、大手総合ITベンダーや有力SIerと協業の準備を推進しているところだ。今後、BTのブランドを前面に押し出さず、「日本のITリーダー」と組むかたちでのソリューション展開を目指す。
吉田社長は、「日本法人の売り上げを倍増する」ことを目標に掲げている。そのために、トップクラスの日本のITベンダーと提携し、そうしたパートナーを通じて、日本企業というBTジャパンにとっての新しい市場を開拓する方針だ。
英・BTグループ(2011年12月期の売上高=200億7600万ポンド)は、ここ数年、電話回線の販売を中心とする従来型の通信事業者から、統合ICTベンダーへの変貌を成し遂げてきた。幅広い製品ポートフォリオを揃え、ネットワークのインフラ構築からセキュリティや顧客管理といったITサービスまでを1社で提供することができるわけだ。同社はアジアをはじめとする海外ビジネスに注力しており、海外では主に大手国際企業向けの大口案件の獲得によって実績を挙げている。
吉田社長は、日本で売り上げを拡大するために、国際企業だけを相手にした事業モデルには限界があるとみて、ここへきて、ターゲット市場を日本企業に広げようとしている。日本企業の開拓にあたり、吉田社長がキーワードに掲げるのは「日本のITリーダーとの提携」だ。「日本では、力強いプレーヤーがひしめいており、当社の人員体制やブランド力などを考えると、BTジャパン単体での市場開拓は難しい」と判断しているからである。
吉田社長が協業を狙う「日本のITリーダー」とは、富士通、NEC、日立製作所の大手総合ITベンダーに加え、NTTデータなど有力システムインテグレータ(SIer)の上位5社を指している。BTジャパンは3年ほど前から日立製作所と組み、BTジャパンのトレーディングシステムを日立のブランド名で金融機関に提供している。吉田社長は、このような日本ITベンダーへのOEM提供を成功事例として、ベンダー各社と同様の協業に向け、準備を推進している最中だ。「今年前半をめどに、共同のソリューション展開を開始したい」(吉田社長)と、早期にも協業をかたちにする意気込みを示す。
BTジャパンは、日本のITベンダーをパートナーとして獲得するために、「当社との連携を通じて、海外展開を強化することができる」と、日本のベンダーにアピールしている。BTグループは全世界で広い販売網を構築しており、日本のITベンダーがその販売網を利用することによって、海外ビジネスの拡大を図ることができるということだ。
BTジャパンが取り組んでいる販売体制の再編は、日本のIT業界に大きなインパクトを与える可能性がある。日本のITベンダーは、提携によってBTジャパンの製品で自社ソリューションを補完し、製品力を高めるだけではなく、喫緊の課題である海外展開の拡大に関しても、強力なパートナーを得ることができるからである。(ゼンフ ミシャ)