レッドハットは、昨年度(2012年2月期)の売上高がグローバルで前年度比25%増の11億3000万ドルと、オープンソースソフトウェア(OSS)を主力事業に据えるベンダーとして初の10億ドル超えを達成した。日本の売り上げは、グローバルほどではないものの、それでも前年度比20%以上の増加を果たしている。好調の要因は何なのか。販社とのパートナーシップ深耕を重視したことが功を奏したとみられる。
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| ビジネスが好調であることに自信をみせる廣川裕司社長 |
日本の売上比率は、昨年度の時点でグローバル全体の10%を占める。現社長の廣川裕司氏が社長に就任した08年2月当時は10%にはとうてい届かない状況だったというから、急速に伸ばしてきた様子がうかがえる。廣川社長は、「グローバルでは、日本を最重要市場として捉えている」とアピールする。
グローバルだけでなく日本でも業績が好調なのは、日本のユーザー企業がOSSを認めるようになったことが大きな要因となっている。「とくに、金融機関などミッションクリティカルなシステムを求める企業で導入意欲が高まっている」(廣川社長)という。では、なぜ金融機関がOSSを求め、しかもレッドハットの製品を導入するのだろうか。
一つには、ある一定期間でのアップデート、ダウンロード、サポートなどを提供する制度「サブスクリプション」が奏功している。ユーザー企業は、サブスクリプションの契約期間であればレッドハット製品の最新バージョンを常に利用できるほか、最大10年間のサポートと保守を受けることができる。また、レッドハットが構築しているOSS開発コミュニティに開発してほしい機能なども要望することができる。
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| 纐纈昌嗣常務執行役員は「事業拡大は販社とのパートナーシップ深耕がカギを握っている」と力説する |
このサブスクリプションは、販社も評価しているようだ。パートナー営業本部長を務める纐纈昌嗣常務執行役員は、「昨年度は、契約数が前年度比10%増となった。販売パートナーが積極的に提案してくれたおかげ」と顔をほころばす。サポート面をレッドハットが請け負っていることで「販売パートナーが、ストックビジネスとして旨味のある制度と認めている」という。
サブスクリプションも含め、OSSが他社との差異化につながるとの判断で、実際にレッドハットの販社になるSIerも増えている。とくに、ソリューション案件獲得に向けて戦略的にパートナーシップを組んだ「アドバンスド・ビジネスパートナー」が1年間で約1.5倍に増えて15社弱に達した。纐纈常務執行役員は、「ユーザー企業にソリューション指向で当社の製品を提供できる環境が整った」と自信をみせる。
さらに、リセラーが前年度比20%増になったほか、クラウドサービスを提供する販社が一気に増えた。販社の増加につれて、OSSをさらに広めるための環境整備が高い成長につながった。(佐相彰彦)