ITホールディングス(ITHD、岡本晋社長)は、TISとインテックを軸とするグループ再編の方針を明らかにした。グループ各社がそれぞれの強みを前面に打ち出す「八ヶ岳」方式を改め、中核事業会社を一つに絞り込んだ「as One Company」方式に転換することを意味している。「as One Company」へ舵を切ることで、果たして業績をアップトレンドへ切り替えられるのか──。
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| ITHD 岡本晋社長 |
ITHDは、インテックグループとTISグループが経営統合して2008年4月に発足したSIerグループである。2009年12月には中堅SIerのソランがITHDに加わるなど、情報サービス業界の再編を常にリードしてきた。だが、国内情報サービス市場は、ITHDが考える以上のスピードで成熟している。こうした市場環境下でも成長を持続するには、「求心力を高める施策を展開することが有効だ」(ITHDの岡本晋社長)との判断を下した。
後からグループに加わったソランは、2011年4月、旧TISと旧ユーフィットと合併して新生TISとして再スタートを切っている。さらに3社合併後には特別転身支援プログラムを適用して500人余りのリストラを実行しており、大きな痛みを伴う構造改革に取り組んできた。ITHDグループでも、例えばコマツを株主として抱えるクオリカ、旭化成が一部出資するAJSなどの事業会社は、株主であり顧客でもある企業との関係強化の役割を担う必要から合併の対象とはなりにくい。そうなると、最後に残るのは二大事業会社の一つであるインテックとTISの再編である。
市場が右肩上がりの局面では、ITHD発足当時にイメージしていた八ヶ岳方式は非常に有効に機能する。実際、NTTデータはアジア成長市場の代表格である中国に展開するおよそ20社のグループ会社やビジネスパートナーがそれぞれ強みを生かす八ヶ岳方式を採用している。だが、国内のライバル他社の動きをみると、NTTデータを含め、直近では旧住商情報システムと旧CSKが合併したSCSKの発足、日立グループの主要SIerの4社が日立ソリューションズと日立システムズの2社へ再編されるなど、集約化が一気に進んだ。
もはや「駅ナカ商店街」(岡本社長)のような寄り合いではなく、「as One Company」で力を結集し、生産性を高め、効率化を進めなければ勝ち残れないところまで追い込まれている状況なのだ。ITHDは2015年3月期までの3か年中期経営計画で、連結売上高を昨年度(2012年3月期)よりも220億円余り上乗せした3500億円、営業利益率7%以上を目標に掲げる。経営計画期間中に、クラウドをはじめとするサービス化やグローバル化への対応力を強化するために総額200億円の投資枠を設定するなど、攻めの姿勢を鮮明に打ち出している。
インテックは2014年1月に創業50周年を迎えることから、「それまではインテックの社名を残したい」(関係者)との意見が根強いといわれるが、目標達成までに残された時間はそう長くはない。(安藤章司)