プリンタメーカーのOKIデータ(平本隆夫社長)は、LED(発光ダイオード)プリンタ「COREFIDO(コアフィード)2」新製品6機種の販売を5月中旬から順次開始した。昨年、タイ洪水の影響を受けたが、「反転攻勢をかける」と、平本社長。新製品や業界初のサービスなどの施策で、各カテゴリーで今年度中(2013年3月期)に国内トップ3入りを狙う。企業内の印刷環境が大型機から、手元で印刷できる小型分散環境へ変化しつつあると分析し、プリンタベースの小型機器に商機があると踏んだ。(取材・文/谷畑良胤)
超エントリー機を投入
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国内営業本部 マーケティング部長 森孝廣 氏 |
OKIデータが5月中旬から販売を開始している「COREFIDO2」の新製品は、A4カラーLED複合機の2機種、シングルファンクションのA4カラーLEDプリンタの4機種。
「COREFIDO2」は、COREFIDOの第2世代にあたるもので、ユーザーの声を受けて、すべての機能を一新している。機器内はLEDの特徴を生かしたシンプル構造で、上部のカバーを開けるだけでユーザー自身でメンテナンス品の交換ができる。給紙ローラーなど専門の保守員でないとできなかった部品交換も手間なく行えるという。
新製品のラインアップ強化で注目すべき点は、COREFIDO初の低価格(5万2290円)のエントリーモデル「C301dn」を出したことだ。同機は、世界最薄(12年3月時点、同社調べ)のコンパクト設計ながら、印刷寿命が30万枚という高耐久性を実現した。これと同クラスのA4カラープリンタは、国内と海外向けにも、ここにきて国内シェア上位のコピーメーカーなど、OKIデータの競合メーカーが相次いで投入している。業務端末としてスマートデバイスが普及し、プリンタ入力と一緒に使うクラウドサービスも増え、パソコンを介さずに印刷できるネットプリント機能が登場したことで、一般オフィスでもデスクサイドに置く用途が高まると判断して開発したものだ。
国内営業本部の森孝廣・マーケティング部長は、「国内向けには、A4機の品揃えが若干不足していた。今回の新製品でおおむねニーズを満たすことができる。『C301dn』は、他社のエントリーモデルに比べて高性能で高耐久だ。低価格機でも質を落とさず安価に提供することで、これまで築いた信頼を失わないことを心掛けた」と話す。
5年間で21万円程度のコスト削減
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国内営業本部 マーケティング部 商品戦略チーム課長 打林明夫 氏 |
「COREFIDO2」は、第1世代と同様に購入日から5年以内に発生した故障を無償で修理する「5年間無償保証」がつく。さらに今回は、対象19機種に業界初の「メンテナンス品5年間無償保証」も実施する。「お客様登録」をすれば、メンテナンス品である定着器ユニット、転写ローラー、ベルトユニット、給紙ローラーセットを工賃を負担するだけで交換。国内営業本部の打林明夫・マーケティング部商品戦略チーム課長は「同じ耐久性をもつ機種を使っていても、顧客によって利用頻度に差がある。そのため、メンテナンス品の交換時期も千差万別だ。すべてのユーザーに当社機を使うメリットを享受してもらうため、TCO削減を実現できる施策として、『メンテナンス品5年間無償保証』を開始した」という。
メンテナンス品は、例えばベルトユニットだけで、3万1500円の費用負担となる。同社によれば、すべての対象部品を期間内に交換した場合、故障修理や部品、技術、出張などの代金として、5年間で21万円程度のコストを削減できる。従来のアフターサービスの多くを「無償」にする一方、機器内部構造をシンプルにして「当社のメンテナンス要員や販売パートナーの活動費用を削減するために、顧客側で部品交換できるようにした」(森部長)と、製販一体で戦略が練られていた。
OKIデータの昨年度の販売実績は、プリンタ・複合機全体で、台数が前年度比で92%、売上高が105%と、タイの洪水で生産・販売停止期間があったにもかかわらず、前年度の水準をほぼ維持した。新製品は、製品とサービスの一体強化で、カラー複合機は年間7000台、カラープリンタは同1万8000台を見込み、それぞれのカテゴリーで国内販売台数シェアのトップ3入りを目指す。
新製品を出す際、同社はこれまで東京だけで製品発表会を開いていたが、現在、全国で開催中だ。また今秋には、10年ぶりに「OKIデータフェア」を開催する。これらマスマーケティングに加え、大手流通卸の2次店となるリセラーの拡充や得意業種の拡大、家電量販店チャネルの強化も行う。
調査会社IDC Japanによれば、2012年1~3月期の国内カラーページプリンタ市場は、出荷台数が前年同期比で18%増えた。東日本大震災の影響を受けた昨年度との比較では昨対を超えたが、昨年度を除く例年との比較では、「苦しい状況が続いている」(競合他社の販売担当者)ようだ。だが、各種調査によれば、ワークスタイルの変化の影響で、大型機から小型機へのダウンサイジングが進んでおり、プリンタメーカーの戦略次第では、このトレンドが追い風になる。
OKIデータのもくろみ通りにダウンサイジングが進行すれば、プリンタの設置場所が増え、市場全体が拡大基調に転じて同社製品の販売も伸びる。このトレンドが同社の戦略の成否を分けることになるだろう。OKIデータのように、アフターサービスでの稼ぎを捨て、販売台数を伸ばして生産ペースを高めることで利益を底上げする大胆な戦略は、他社の追随を許さない。その一方で、これまで以上に的確な市場予測とサプライチェーン全体で迅速な対応が求められる。