システム開発のエイ・アイ・エスは、小売業や飲食・サービス業向けの販売管理、財務会計システムのSaaS基盤として、パブリッククラウドサービス「ニフティクラウド」を採用した。自社電算室や外部のホスティングサービスなどで運用していたが、今年1月、急なシステム増強の引き合いがあったのを機に、パブリッククラウドの活用へと踏み切った。サービスの選定にあたっては、テスト環境の迅速な提供や、ビジネスマッチングなど営業面での協業可能性などが決め手となった。
ユーザー企業:エイ・アイ・エス
財務会計(アカウンティング)分野に強みをもつシステムベンダー。「ちゃっかりシリーズ」や、海運業向け会計システムを中心とする「TRANSシリーズ」は業界屈指の納入実績を誇る。
サービス提供会社:ニフティ
サービス名:パブリッククラウドサービス「ニフティクラウド」
【課題】急ぎのシステム拡張に迅速対応
エイ・アイ・エスは、小売業や飲食・サービス業向け販売・会計システム「ちゃっかりストア」、酒類販売業向け販売・会計システム「ちゃっかりS@KE兵衛」など「ちゃっかりシリーズ」を開発・販売している。このシリーズは業界に先駆けてASP/SaaS方式を採用しており、ASP・SaaS・クラウドコンソーシアム主催、総務省後援の「ASP・SaaS・クラウドアワード」では、海外展開賞やベストブレイク賞、ベスト連携賞、Application分野基幹業務系グランプリなど4回の受賞歴をもっている。それだけに、顧客からの引き合いが多く、なかには急なシステム拡張の依頼も少なくない。
2012年1月、「ちゃっかりシリーズ」について「3月末までにどうしてもシステムを拡張したい」との突発的な案件依頼が舞い込んできた。一部に物流や配送も絡む比較的大規模な案件で、サーバーをはじめとするITインフラの拡充は必須だった。だが、これまで使ってきた山形県にある自社のシステム開発センターの電算室や、ホスティングサービスでは、急なシステム拡張に十分対応できない可能性があった。さらに、ITインフラに関する運用負担を減らして、「本業である業務アプリケーションの開発に専念したい」という仲村俊彦・クラウドシステム事業部長の考えもあって、この機会にクラウドサービスを採用する検討を始めた。
写真左からニフティの新井直樹課長、エイ・アイ・エスの仲村俊彦事業部長、同社コンサルティングチームの伊藤秀一郎氏【決断と効果】ビジネス上の協業効果にも期待
パブリッククラウドの選定にあたっては、グローバルサービスのAmazon Web Services(AWS)や、大手コンピュータメーカーが提供する大規模対応が可能なPaaS/IaaS型のクラウドサービス、普段から取引のある富士通マーケティング(FJM)から紹介されたニフティクラウドが候補として挙がった。エイ・アイ・エスのコンサルティングチームに籍を置く伊藤秀一郎氏は、「今年1月の時点では、とにかく3月末までに新しいITインフラ上でシステムを必ず完成させなければならないことだけが頭にあった」といい、候補に挙がったなかで要求仕様や価格条件を満たし、かつテスト環境の提供などでレスポンスが最も早いサービスを重視した結果、ニフティクラウドの採用を決断した。
「急ぎの場合も対応してくれる安心感と値頃感」(伊藤氏)が、AWSや大規模PaaS/IaaSを抑える要因となったという。
伊藤氏は数年前にも「ちゃっかりシリーズ」でパブリッククラウドの採用を試みたことがあるが、「当時は、正直、基幹業務システムでの使用に耐えられない貧相なサービスだった」と振り返る。その後の2010年、ニフティクラウドのサービスが始まり、「パワフルなITリソースをコンソールパネル一つで、深夜や盆暮れ正月関係なしに自在に拡張・縮小できるサービスの進化は、目を瞠るものがある」と高く評価する。
ニフティの新井直樹・クラウドパートナー営業部課長は、「ユーザーが本業に専念できる点にこそニフティクラウドの価値がある」と、システム運用の負荷軽減をアピールする。「ちゃっかりシリーズ」のユーザーは段階的にニフティクラウドへ移行しており、年内には約半数のユーザーが移行する見込み。これによってシステム運用の負荷が減るだけでなく、エイ・アイ・エスをはじめとするニフティクラウドのユーザー同士のビジネスマッチングや、営業面での連携など、単なるクラウドベンダーとユーザーの関係だけでない協業の可能性にも期待を寄せている。(安藤章司)
3つのpoint
ITインフラの運用負荷を限りなく減らす
深夜でも休日でもリソースを増減できる
急な案件でも相談に応じてくれる安心感