11月1日付で、シマンテックの子会社となった日本ベリサインは、間接販売のチャネルをシマンテックに統合する。子会社化の完了に合わせて、シマンテックの河村浩明社長が日本ベリサインのトップを兼務する体制を敷いた。河村社長の下で、現在、チャネルの整理を進めている段階にある。現状、日本ベリサインとシマンテックの製品・サービスを別々に担いでいる販社を対象として、パートナー契約や営業担当を一本化する。こうした取り組みによって、販社は両社の製品・サービスを総合的に取り扱うことが可能になる。(ゼンフ ミシャ)

IAS製品本部
坂尻浩孝上席部長 日本ベリサインは、SSLサーバー証明書とユーザー認証の事業を手がけている。同社の年間売上高約70億円の構成は、SSLサーバー証明書が約50億円、ユーザー認証が約20億円。11月1日をもって、シマンテックの100%子会社になったことに伴い、自らの間接販売チャネルをシマンテックに統合しようとしている。今後、両社のチャネルを融合して、日本ベリサインのSSLサーバー証明書/ユーザー認証製品をシマンテックの製品と組み合わせて販社が提案することができる体制を構築する。
米シマンテックは、2010年、米ベリサインのSSLサーバー証明書/ユーザー認証事業部を買収することを発表した。この事業部をビジネスユニットとして米シマンテックに組み込んだきたという経緯がある。米ベリサインは、ドメインを中心とする他の事業にリソースを集中して、ビジネスを継続している。一方、日本では、米国と異なるビジネス体制を採用。米ベリサインのSSLサーバー証明書/ユーザー認証事業部の日本法人として設立された日本ベリサインは、シマンテック(日本)に組み込まれるのではなく、子会社として残る。両社のトップを兼務する河村浩明社長が統括し、販売や製品開発の分野でシマンテックとの一体化を高めることによって、相乗効果を発揮することを目指す(図を参照)。
日本ベリサインとシマンテックがチャネルを統合すれば、両社の製品、あるいは両社のいずれかの製品を取り扱っている販社にとって、大きなインパクトをもたらすことになる。
現時点で日本ベリサインだけの製品、またはシマンテックだけの製品を担いでいる販社は、今後、両社の製品を取り扱うことができるようになる。商材が増えるだけではなく、日本ベリサインとシマンテックの製品を組み合わせて、包括的なソリューションとして提案することが可能になるわけだ。
また、現時点で両社の製品を扱っている販社は、今は別々に締結しているパートナー契約や、窓口となるメーカー側の営業担当が統合されることになる。これによって販社は、メーカーとのやり取りが容易になり、シームレスに両社の製品を取り扱うことができるようになる。
現時点で日本ベリサインとシマンテックの両方の製品を販売するのは、NTTデータや富士通などの大手システムインテグレータ(SIer)と、セキュリティを強みとする中堅規模のIT販社だ。日本ベリサインでユーザー認証事業を担当するIAS製品本部の坂尻浩孝上席部長は、「現在、パートナーの整理に取りかかっていて、正確な数を調べている段階にある。それと同時に、パートナー向けの窓口となる営業担当者の統合を推進している。担当者は、当社の社員であったり、シマンテックの社員であったりと、徐々に変わっていく」と、状況を説明する。
両社は、一体化を進めるにあたって、販売体制だけでなく、プロダクトの面でもテコ入れをする。「シマンテックでは、製品担当がビジネスユニットごとに分けられている。今後、当社とシマンテックのシナジーを発揮し、日本市場のニーズに合った製品を開発するために、ビジネスユニットをまたがって、一つとして動くことができる体制を築かなければならない」(坂尻上席部長)と、当面の課題に触れた。
表層深層
国内の法人向け情報セキュリティ市場は成熟している。調査会社IDC Japanによると、2011年のセキュリティソフトウェア市場は前年比で3.6%伸びたという。ソフトウェアに限らず、セキュリティは全般的に大きな伸びは期待できないのが実際のところだ。そうした状況にあって、セキュリティベンダーは打開策として、複数のセキュリティツールを組み合わせて統合的に提案するソリューション展開を強化している。米国では、数年前から、大手プレーヤーは市場が成熟しているなかでのビジネス拡大を図り、技術の集約に取り組んでいる。2011年、半導体メーカーのインテルがマカフィーを買収し、セキュリティをチップに組み込んだかたちで提供することに力を入れているのは、その代表例といえる。
今回の日本ベリサインとシマンテックの販売チャネルの統合は、日本のセキュリティ市場に及ぼす影響が大きい。販社は、両社の製品をワンストップで取り扱い、統合的に提案することができるようになるからだ。例えば、ECサイトを運営する事業者に対して、ユーザー認証のツールに、ファイアウォールやアンチウイルスといった“インフラ系”のセキュリティを組み合わせて、ソリューション全体を一つのメーカーの製品で提供することが可能になるわけだ。これによって、販社としての競争力を高め、新たなマーケットを開拓することができる。