ディスコ(夏井丈俊社長)は、企業の人材採用に関するコンサルティングや人材紹介・派遣事業などを手がけている。セールスフォース・ドットコムのパートナー企業であるチームスピリットが開発・販売するクラウドベースのソリューション「チームスピリット」を利用して、勤怠管理や経費精算などの業務の効率化に大きな効果を上げており、社員同士の情報共有にも役立てようと試行錯誤している。
ユーザー企業:ディスコ
1973年10月設立。企業の人材採用に関するコンサルティングや人材紹介・派遣事業などを手がける。売上高は、149億300万円(2012年6月実績)。社員数は、430人(2012年6月30日時点)。
プロダクト提供会社:チームスピリット
プロダクト名:「チームスピリット」
【課題と狙い】紙ベースの処理に多大な労力

ディスコ
屋ヶ田勇課長代理 ディスコでは、創業40周年を迎えるのを機に、「プラン40」という全社改革プロジェクトを立ち上げた。そのうちの一つとして動き始めたのが業務改善プロジェクトだ。スタートは2011年7月で、社員から寄せられた要望の洗い出し作業に2か月程度を費やした。多くの要望のうち、比較的容易で実現性が高いと判断したのが、勤怠管理と経費精算の効率化だった。
当時、オービックのERP(統合基幹業務システム)を利用していたが、経費精算と勤怠管理はすべて紙ベースで処理していたので、伝票入力や検算作業などに多大な労力がかかっていた。パッケージやサービスの採用を検討するなかで、デジタルコースト(現・チームスピリット)が発表した「チームスピリット」の製品リリースが目に止まったというのが導入のきっかけとなった。
ディスコの屋ヶ田勇・インフラ管理部課長代理は、「チームスピリットはベンチャー企業だし、まだサービスをつくり込んでいる途中であることが見てとれたので、かなり不安があった」としつつも、「裏を返せば、当社の要望に合わせてつくり込んでもらえる余地があるし、製品ロードマップに共感できた」と語る。例えば、経費の振り込みフォーマットを作成できないことが不便だと感じていたが、「今となっては本当かどうかはわからないが、『ちょうど開発しようと思っていた』と言ってもらえた」。
他社製品と比較したが、なるべくクラウドサービスを使おうと考えていたので、ほかに候補はあまりなかった。今期(2012年7月)に本格稼働を開始し、一部の業務委託や派遣社員を合わせて500人強のユーザーが「チームスピリット」を利用している。
【実践と効果】定型業務を大幅に削減
「チームスピリット」は、チームスピリットがセールスフォースと資本提携し、クラウド基盤の「Force.com」上で開発したクラウドサービスだ。サービスのコンセプトは、企業内SNS(ソーシャル・ネットワークキングサービス)とワークフォースマネジメントの融合にある。ワークフォースマネジメントとは、適切なスキルをもつ人材を適切なタイミングで適切な仕事に割り当てるマネジメント手法をいう。
勤怠管理から休暇管理、経費精算、ワークフロー、作業工数登録、活動報告(日報)まで、すべての企業が必ず行わなければならない基本的な機能を実装しているのが特徴だ。企業内SNSである「Salesforce Chatter」に諸々の機能を連携させて、アクティビティストリーム(ネット上のコミュニティでの活動内容を時系列に表示する技術)に社員の活動を記録することもできる。
ディスコの社内にはメール文化が浸透していて、とにかくメールが多い。そんな状況にあって、「チームスピリット」の「Chatter」機能を使うことで、社員同士のリアルタイムな情報共有が可能となった。ただ、「Chatter」のような企業内SNSは、旗振り役となる社員が利用を推進して継続的に盛り上げる努力が求められる。情報共有の活性化が今後の課題だ。
目に見える効果として、経理担当者による伝票入力の時間が毎月15時間、検算時間が15時間減少した。人事担当者にとって、勤怠情報の記入漏れの確認作業にかかっていた5時間はほぼゼロになった。このほか、伝票入力作業のアウトソーシング料金を年間100万円程度削減できた。社員の交通費精算にかける時間は3分の1から半分は減っているとみている。
屋ヶ田課長代理は、「単なるコスト削減というよりも、社員の働く質を変えていくことに主眼を置いている。削減した時間を使って、クリエイティブな業務に取り組めるようになったことが大きい」としている。(信澤健太)
3つのpoint
アップデートが迅速
サービスのコンセプトに共感
基本的な機能はすべて実装済み