日本医療データセンター(JMDC、木村真也社長)は、保険者の診療情報であるレセプトを標準化して、医療機関向けに統計データとして提供している。ユーザーに提供するデータの管理には、高パフォーマンスなDWH(データウェアハウス)アプライアンス「Netezza」を使用。今回、さらにデータベース(DB)の設計・管理を効率化するために、エンバカデロ・テクノロジーズが提供する「ER/Studio XE2」を導入した。開発にかかる工数を削減し、設計期間を短縮するなど、TCO削減を実現した。
ユーザー企業:日本医療データセンター
医療保険者の診療情報であるレセプト(診療報酬明細書)を標準化して、医療統計データとして提供している。従業員は総員65人で、システム開発者が約30人。このうち約10人が、データベースの設計を担当。
プロダクト提供会社:エンバカデロ・テクノロジーズ
プロダクト名:「ER/Studio XE2」
【課題】「Netezza」に未対応で二重の手間がかかる

インフォメーション・マーケティング部情報システムグループ山崎洋志氏 保険者の診療情報であるレセプトは、個人情報を含んでいたり、フォーマットが統一されていなかったりするため、そのままでは分析・管理しにくい。日本医療データセンター(JMDC)では、こうしたレセプトを健康保険組合から預かって、標準的なフォーマットにデータ化。医療機関に対して統計データとして提供している。
ユーザーに提供するデータ量は、「毎月約200万件くらい増えていて、累計では数億件になる」(インフォメーション・マーケティング部情報システムグループの山崎洋志氏)。データ量が膨大で、高速な処理が求められるため、JMDCは2008年に高パフォーマンスなDWHアプライアンスである「Netezza」を4台導入している。主力サービスの一つにオンラインブラウザ経由でデータを提供する「JMDCデータマート(JDAM)」があるが、これは「Netezza」があってこそ実現できたサービスだ。「『Netezza』ならば、顧客がデータを閲覧するまで10秒ほどしかかからないが、以前使用していた別のメーカーのDWHだと、半日くらいかかる」(山崎氏)というネックがあったからである。
「Netezza」は、データ処理のパフォーマンスを向上するうえで、JMDCにとって欠くことのできないものだが、ある問題を抱えていた。従来のDWHでは利用が可能だったDB設計・管理ツールが、「Netezza」には対応していなかったのである。そのため、DBは、従来のDWHを通して設計して、その後で「Netezza」に落とし込むという二重の手間がかかっていた。
設計・管理ツールは、必ずしも必要ではなく、手動でExcelに打ち込むなどして、DBを設計することはできるが、「社内に抱えるデータ量は膨大で、時間的・人的制約を考えるとツールを使わないというやり方は現実的ではなかった」(山崎氏)。
【導入と効果】DB設計・管理コストを削減
そこでJMDCは、手間を削減するために「Netezza」に対応するDB設計・管理ツールの導入を検討することにした。数社の製品を候補に挙げたが、「Netezza」の最新バージョンに対応しているものが、エンバカデロ・テクノロジーズの「ER/Studio XE2」だけだったことから、導入を決定した。
「ER/Studio XE2」は、データを読み込むとSQLスクリプトや、DWHに適したテーブルを自動で生成してくれるDB設計・管理ツールである。JMDCでは、12年10月に運用を開始。約30人のシステム開発担当のうち、約10人のデータ設計担当者が使用している。
導入の効果について山崎氏は、「運用を開始して、DBの設計と『Netezza』を一元化できたことで、DB構築の工数を削減することができた。これまでは、大体1週間くらいかかっていたデータ構築を、たった1日でこなすことができるようになった」と満足げだ。
また、自動でテーブルを生成して、それぞれのデータの関連性を可視化できるので、簡単にDBを管理することが可能だ。「JMDCでは、一つのテーブルに100種類以上の項目があるものが多い。『ER/Studio XE2』であれば、DBにあまり詳しくない人でも、管理しやすくて、部門内で情報共有しやすいという利点がある」(山崎氏)。
設計期間の短縮と、管理の負担を軽減したことで、JMDCはTCO削減を実現。ここで浮いた費用を新製品の開発に充てている。山崎氏は、「現在、JMDCでは3か月に一つのペースで新商品を開発している。『ER/Studio XE2』を活用して、今後も、製品をどんどん増やしていく」と意気込みを語る。(真鍋武)
3つのpoint
「Netezza」に対応
データベース構築期間を大幅に削減
DBに詳しくない人でも管理しやすい