データベース(DB)ソフトは、必ずといっていいほど、基幹系をはじめとするITシステムに組み込まれている。それゆえに大きな伸びは期待できない状況にある。そんな成熟市場のDBだが、活路となるのは膨大なデータを分析して意思決定に活用する情報活用の分野だ。メーカー各社はデータウェアハウス専用で、大量のデータを高速処理できるDBアプライアンスを戦略的投資分野として拡販を進める。(文/鍋島蓉子)
figure 1 「市場」を読む
DB市場は成熟期に
2010年のリレーショナルデータベース(RDB)の市場は対前年で2.3%の微増だった。調査会社ガートナー ジャパンのリサーチ部門アプリケーションズマネージング バイスプレジデント・堀内秀明氏によると、「基幹系をはじめ、ITシステムには必ず組み込まれている部品であり、成熟市場だけに、企業のIT予算の影響を受けやすい」とのこと。
一方で新しい動きとして、データ量の爆発的な増加に対応して高速処理を実現するために、ハードとソフトを一体化して提供するDBアプライアンスや、メモリ上にエンジンとデータの展開を行うインメモリ型のDB製品が注目されているインメモリ型のDBはビジネス・アプリケーションで、SAPジャパンが「HANA」という製品を昨年から提供している。インメモリ・カラムストア型により、同じく大量データの高速処理を低コストに実現する。「SAPで実績が出てくれば、インメモリ・カラムストア型を導入する動きは加速するだろう」(堀内氏)とみている。
国内RDBMS市場規模推移(ソフトウェア売上総額)
figure 2 「主力製品」を読む
「Oracle Database」と「SQL Server」が勢力を二分
メーカーシェアは過去5年間、1位日本オラクル、2位日本マイクロソフト、3位日本IBM、4位日立製作所、5位富士通という順位に変動はないようだ。RDBMS(リレーショナルデータベースを管理するソフト)の主要製品は「Oracle Database」=オラクル、「DB2」=IBM、「Microsoft SQL Server」=マイクロソフト、「HiRDB」=日立製作所、「Symfoware」=富士通など。ガートナーのデータは、新規ライセンス、メンテナンス売上高とそのメーカーが販売している複数のDB製品を含む。マイクロソフトが参考にしている台数別、導入サイト数で調査したテクノシステムリサーチのデータ(09年)によると、マイクロソフトが46.1%、32.6%がオラクルの順になり、切り口によっては順位の変動がある。OSSでは「MySQL」と「PostgreSQL」が有名だ。「MySQL」は、ウェブサービス関連を中心に利用されている。「PostgreSQL」は基幹系まではいかないにしろ、ミッションクリティカルなシステムでの採用が増えている。
主要メーカーと主力製品
figure 3 「戦略」を読む
オラクルからのリプレースを推進
DBは、ソフトバンクBB、ダイワボウ情報システムといったディストリビュータを介する販売が多い。そうした状況のなかで、日本IBMはオラクル互換戦略を推進している。オラクルが提供している機能をIBMでも実現するとともに、オラクルの定価を下回る価格に設定。また、仮想化プラットフォームに対応し、CPUごとの課金体系を設定することで、コストメリットを享受できるようにした。現在のところ、日本情報通信などが販売しているが、オラクル製品をメインに販売していたSIerがIBMの「DB2」の取り扱いを検討する動きがあるという。
日本マイクロソフトは、パートナーと組んで「SQL Server」への移行を促進するキャンペーンを展開して、移行アセスメントを提供している。さらに、「SQL Server」の教育を、同じくパートナーと組んで展開する。SRA OSSでは「PowerGres」については「PostgreSQL」にあわせてバージョンアップを実施していくとともに、「PostgreSQL」のサポートについて異なる売り方を模索する。サブスクリプションで提供し、金融をはじめとする基幹システムへの導入を狙う。仮想化や、クラウドに乗せたいというニーズがある。SRA OSSは、ノード数を問わずインシデントでのサポートを提供することで、「すぐに使うことができる」を実現する。
国内RDBMSベンダー別マーケット・シェア(ソフトウェア売上総額)
figure 4 「今後」を読む
DBアプライアンスが台頭
新しい潮流として「DBアプライアンス」が台頭している。日本オラクルは、通常は相反する業務システムのOLTP(オンライン・トランザクション処理)と、情報活用系のDWH(データ・ウェア・ハウス)を一つのDBアプライアンス「Exadata」で実現。IT部門のコストを削減するという。「Exadata」は富士通、NEC、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、新日鉄ソリューションズ、NTTデータ、日立製作所の6社が取り扱っている。日本オラクルは、製品における専門性を認定するSpacializationを推進することで、専門性の高いパートナーを拡充する。日本マイクロソフトは、新しい戦略投資として、09年にはデル、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)や富士通と組んで「Microsoft SQL Server Fast Track Data Warehouse」を、そして今年、日本HPとのアライアンスのもと「HP Enterprise Data Warehouse Appliance」「HP Business Decision Appliance」をNTTデータ、日本ユニシスなどを介して販売している。
今後はOLTPやDBコンソリデーション専用のアプライアンスをリリースし、それぞれのワークロードに適した最適なアプライアンスを幅広い顧客に提供する。IBMでもOLTPではDB2を販売しているが、一方でDWHを今後の成長分野、投資領域と捉えて「Netezza(ネティーザ)」を拡販していく。
DBアプライアンスですべてを一つに