ユーザー企業のシステム投資がもち直しつつあるなか、さまざまなデータを収集して分析し、それを収益改善に生かす経営革新支援システムが注目を集めている。このようなニーズに対応できるのがデータウェアハウス(DWH)である。ハードとソフト、サービスを組み合わせたアプライアンスは、ユーザー企業が求める短期構築にも適している。ITベンダーにとっては、システムの統合提供でユーザー企業の囲い込みにもつながる。(文/佐相彰彦)
figure 1 「市場規模」を読む
市場は堅調に伸び、年平均成長率は9.8%
DWHアプライアンスを含めたDWH用DBMS(データベース管理システム)市場が伸びている。調査会社のITRによれば、2010年度(2011年3月期)の市場規模は112億8500万円(前年度比28.2%増)。11年度は128億8000万円(同14.1%増)を見込んでいる。11年度以降も堅調に伸び、10~15年度の年平均成長率を9.8%と予測している。アプライアンスとパッケージソフトの占める比率は、10年度でアプライアンス84.7%に対してパッケージ15.3%。年を追うごとにアプライアンスの比重が高まっており、11年度にはアプライアンス85.4%、パッケージ14.6%を見込んでいる。これは、メーカーがDWHアプライアンスの製品を拡充していることに加えて、短期間でシステムを刷新したいというユーザー企業のニーズが高まっているためだ。こうしたニーズを受けて、販社はハードとソフトを組み合わせたアプライアンスを売りやすい商材として拡販を図るとともに、サービスを付加してユーザー企業を囲い込む策を講じている。
DWH用DBMS市場規模実績と予測
figure 2 「導入状況」を読む
まずは大企業が導入、中小企業はこれから
企業向けにIT製品選びをサポートするキーマンズネットが、ユーザー企業のIT担当者を対象にDWHの導入状況について調査したところ、「導入済み(追加リプレースなし)」が13.4%、「導入済み(追加リプレースあり)」が2.6%、「導入を検討」が4.9%、「必要性を感じているが導入は検討しない」が26.4%、「必要性を感じない」が52.6%という結果だった。従業員別にみると、従業員規模が大きくなるにつれて「導入済み」の割合が大きく、1001人以上の大企業で「導入済み」の割合が30.5%、100人以下の中小企業で2.0%の導入率にとどまっている。このような結果になった理由として、キーマンズネットは、現段階でDWH自体が高価なこと、大企業に比べてデータ量が少ない中小企業でDWHのメリットが見出せていないことを挙げている。ただし、DWHアプライアンスの登場で、従来に比べて安価に利用できることから、今後は中小企業でも導入が進むとみている。ITベンダーにとっては、ビジネスチャンスがあるということだ。
DWHの導入状況
figure 3 「協業の動き」を読む
拡販に向けてアライアンスが活発化
DWHアプライアンスの主要製品としては、日本テラデータの「Teradata Data Warehouse Appliance」、日本HPの「HP Vertica Analytics System」、日本IBMの「IBM Netezza 1000」、日本オラクルの「Oracle Exadata Database Machine」などがある。各メーカーとも、アプライアンスの拡販に向けて、販社とのパートナーシップを深めており、DWH関連ビジネスの領域を広げることを目的にソフトメーカーやSIerとのアライアンスを進めている。例を挙げれば、日本テラデータは、NTTデータ、NTTデータウェーブと、ビジネスアナリティクス(BA)分野で協業。BAの分析処理を日本テラデータのDWH用RDB(リレーショナルデータベース)「Teradataデータベース」上で実行する技術「SAS In-Databaseテクノロジー」を活用したサービスを提供していく。日本HPは、日本マイクロソフトのデータベース(DB)ソフト「SQL Server」をベースにしたDWHアプライアンス「HP Enterprise Data Warehouse Appliance」を提供している。日本IBMは、サイベースとの協業で中規模DWH基盤を強化した。日本オラクルは、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と「Oracle Exadata」を活用した協業を強化。CTCは、この協業によって「Oracle Exadata」の評価・検証を実施するセンターを開設している。
主要メーカーの製品
figure 4 「関連市場」を読む
BA市場も成長、ユーザー企業の把握がカギ
膨大なデータを分析して経営の意思決定に役立てる製品・サービス、DWH。この周辺市場として、予想した将来の事態にも備える製品・サービスのBAがある。BAの製品やサービスについても、市場規模は拡大傾向にある。IDC Japanによれば、2011年の国内BA関連市場規模は8572億7900万円(前年比3.6%増)。09年にリーマン・ショックの影響で前年比4.5%減だったが、10年には前年比6.1%増と拡大、11年も伸びていることを踏まえれば、底固い成長を維持しているとみていいだろう。とくに、サービスを向上するために顧客分析を重要視している小売業での採用が相次いでおり、11年は前年比9.3%増と大きく成長した。11~16年の年平均成長率を4.6%と予測しているほか、今後はオペレーション管理のグローバル化が活発になって、低コストで短期導入が可能なシステムが求められる、とIDC Japanでは分析している。ITベンダーにとっては、ユーザー企業の海外拠点を含めたシステム活用による経営改革、ユーザー企業の海外進出を踏まえたシステムを提供することがニーズに適っているということだ。また、単にシステムを構築するだけでなく、ユーザー企業の業態や経営状況を把握してコンサルティングできるようなベンダーが、よりいっそう求められるようになる。
BA関連製品・サービスの市場規模推移