レッドハット(廣川裕司社長)は、パートナー企業向けにOSS(オープンソースソフトウェア)をベースとした製品・サービスが提案できるようになる技術者育成プログラムとして「レッドハットパートナーデベロッパープログラム」、プログラムを認定する制度として「レッドハットプロダクトスペシャリスト」の提供を開始した。パートナー企業を対象に3年間で1万人の技術者を育成する予定で、日本発の制度として世界各国に横展開する計画。技術者を増やして、一気にOSSを広めることが狙いだ。

日本法人
廣川裕司 社長 「レッドハットパートナーデベロッパープログラム」は、「ITインフラソフトウェアスペシャリスト」「ミドルウェアソリューションスペシャリスト」という2種類の技術者を育成するプログラム。「ITインフラソフトウェアスペシャリスト」は、IT基盤のOSS化のための高度な製品知識をもち、Linuxディストリビューション製品「Red Hat Enterprise Linux」と仮想化を活用したソリューション提案ができるようになる。「ミドルウェアソリューションスペシャリスト」は、ミドルウェア「JBoss Enterprise Middleware」を中心とするアプリケーション基盤のOSS化のための知識をもち、Java EEアプリケーションサーバーだけでなく、ビジネスプロセス管理(BPM)やビジネスルール管理なども提案できる技術者だ。

米国本社
アルーン・オベロイ
上級副社長 このプログラムと技術者認定制度は、日本法人が発案したものだ。米国本社では、ほかの国での提供も計画している。グローバルのセールスとサービスを統括するアルーン・オベロイ上級副社長は、「米国では、パートナーを絡めてビジネスをしているケースが全体の60%に対して、日本は90%を占めている。今後、パートナーとの協業を強化してワールドワイドでパートナーを絡めたビジネス展開を100%にしていきたい。日本で成功モデルをつくることが重要だと判断した」としている。
最近では、クラウドを構成するコア技術の一つとしてOSSが重要な位置を占めるようになっている。コストを削減することが大きな理由だが、柔軟なカスタマイズが可能な点、ベンダーロックインを排除できる点なども利点となる。また、クラウドのインフラ上で稼働させるソフトにOSSを利用する場合も、コストが低額ですむことは大きなメリットになる。
一方、OSSには安定性や信頼性、互換性、セキュリティなどの課題があり、導入した後に大変な事態が生じるリスクもある。こうしたリスクを避けるために、技術者を増やすことで問題を解決しようとするのが、レッドハットの今回の技術者認定制度とみていいだろう。廣川社長は、「販売パートナーを技術面からサポートして技術者を増やすことで一気にOSSを広めていく」と強気だ。
OSSを競合との差異化要素と捉えて、またユーザー企業のニーズに対応できると判断して、今回の技術者認定制度の取得に積極的な姿勢を示す販社が現れているという。SIerにとっては、「レッドハットパートナーデベロッパープログラム」のスペシャリストの資格を取得して独自のアプリケーションを含めたOSSベースの製品・サービスの提供は他社との差異化につながり、ビジネスチャンスをつかむことができる可能性がある。レッドハッドがパートナー企業を全面的にバックアップしてスペシャリストの取得者が増えれば、クラウド時代にOSSがさらに浸透し、とくに一般オフィスでWindowsベースのシステムが多数を占めている勢力図にも、変化を及ぼしそうだ。(佐相彰彦)