当社とまったくつながりがない大手菓子メーカーに、すでに導入されている競合他社システムの置き換えを提案するという挑戦的な案件だった。私は、大震災の発生から3か月が経過した2011年6月にそのお客様に入り込み、週2~3回の訪問を通じて、サーバー統合やDRサイト構築に関してのニーズをヒアリングした。導入後のシステム運用を含め、課題を整理して、本提案に向けてお客様との関係づくりに力を注いだ。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
[語る人]
●profile..........鈴木 崇史(すずき たかし)
大学卒業後、2002年4月に富士通サポート&サービス(現富士通エフサス)に入社し、営業部に配属された。富士通本体の営業と連携した拡販活動を中心として、ネットワークやサーバーなど、ユーザー企業のインフラ構築に関する営業・販売を担当する。現在は、流通業界をメインとして、客先の業務を含めた「全体最適化」をキーワードに製品やサービスを提案している。
●会社概要.......... 富士通グループの一員として、システムの構築や運用、保守を手がける。1989年設立。12年3月期の売上高は2577億円、従業員数は約6400人。神奈川県川崎市に本社を構える。
●所属..........首都圏本部
流通ビジネス統括部
第二ビジネス部
●営業実績.......... 2012年12月に、大手菓子メーカーに納入するサーバー仮想化・BCP・運用全般の大型案件を受注した。
●仕事.......... 大手食品メーカーをはじめとする流通業のお客様への営業に携わっている。最近は、とくにクラウドサービスの提案に力を入れており、2012年末に菓子メーカーに納入するプライベートクラウドサービスを受注した。現在、このプロジェクトを推進している。既存のサービスメニューに縛られず、カスタマイズ対応を心がけている。
受注まで1年半の大口案件
ライバルは、そのお客様と10年以上のつき合いがあるITベンダーだ。お客様には、そのベンダーからもBCPの提案を受けていると聞いた。当社は、トップセールスを駆使してそのお客様の専務取締役に対してBCPの重要性を訴えて、最初の関門を突破することができたが、実務的な商談の段階になると、営業第一線の腕の見せどころだ。私は、富士通本体やデータセンターをもつ富士通FIPなどのメンバーを巻き込み、15人のチームをつくって、自分が統率するかたちで提案を進めた。
競合ベンダーの動きを読めずにいる状況にあって、お客様にどこまで情報を出すか、非常に悩んでいた。情報がライバルに流れてしまい、案件を奪われる可能性があったからだ。悩みを抱えつつ、お客様に提案を正式に依頼されるまでは、全体のアウトラインだけを提供し、当社の技術ノウハウに関する詳細な情報はなるべく伝えないようにした。
本提案に入ると、他社情報もいろいろ入ってくる。導入後の運用サービスの依頼先はすでに競合ベンダーに内定済み、という情報が耳に入ってきて、衝撃を受けた。どうしていいのか、頭が真っ白になった。依頼先の内定を出したキーパーソンよりもさらに上位の役職の方を訪問して、富士通がすぐれている点を訴えた。この案件は、私が多くの人を動かしている。絶対に獲得しないといけない。プレッシャーがあまりに大きくて、食べても食べても体重が落ちた。
結局、お客様は25人の投票制で発注先を決めることになった。私は、その日の午後3時までに結果の電話を入れるといわれ、ずっと連絡を待った。しかし、3時を過ぎてもなかなか連絡がこない。午後5時にようやく電話が鳴り、「御社に発注します」との結果を知らさられて、心から安堵した。一緒に電話を待っていた上司に握手を求められ、チームメンバーに拍手を贈ってもらった。
◆ ◆
そんなプレッシャーに強い私も、ときどきは重荷を下ろすことに努めている。ストレス解消のために、休日はサッカーに没頭する。今の時期は、外で運動するのですぐに肌が黒くなる。海に行って遊んでいると思われるのは困る。それは、誤解だ。(つづく)