近年、とくに小売業では、ECサイトと実際の店舗をいかに連動させて販売をマネジメントしていくかが大きな課題となっており、O2O(オンライン・トゥ・オフライン)ソリューションの需要が高まっている。従来のITシステムと比べて、ユーザー側にほとんどノウハウがないので、売り手側の提案力が問われる市場だ。そんななか、鴨下さんは入社後1年で2億円を売り上げ、今年4月にリーダー職に抜擢された。(構成/本多和幸 写真/長谷川博一)
[語る人]
●profile..........鴨下 文哉(かもした ふみや)
青山学院大学卒業後、IT関連企業に入社。飲食、美容、医療などの中小企業を対象として、ITを活用した業務改善・販促のコンサルティングや関連ITツールの営業に従事。昨年4月、エスキュービズムに転職し、中堅・大手企業向けに、ECシステムや業務改善のタブレットシステムを活用したオムニチャネル施策を提案している。
●会社概要.......... ECシステムや、タブレットなどのスマートデバイスを活用したPOSシステム、飲食店向けオーダーハンディシステムなどを提供する。2006年創立。本社は東京都港区。従業員は90人。
●所属..........ソリューション事業部
セールス&マーケティング部
EC/O2Oグループ リーダー
●営業実績.......... 入社1年目で2億円の販売を成し遂げて、今春、リーダー職に抜擢された。入社3か月目で初めて獲得した案件で社内MVPを受賞。手がける案件規模は倍々で大きくなっており、その営業手法と成績は社内のベンチマーク(目標)にもなっている。
●仕事.......... ECシステムの構築やタブレットを活用した店舗向けソリューションなどを、年商数十億~数千億円の規模の小売企業向けに提案している。EC/O2Oグループのリーダーという肩書きではあるが、営業の第一線で現在も活躍中。リード(見込み客)発掘から要件定義の一歩手前まで、ほぼ一人で手がけている。
「きっぱり直言」がお客様のため
エスキュービズムが提案しているO2Oソリューションは、ECシステムや実店舗でのタブレット活用を核としたもので、小売業向けのオムニチャネル──オンライン、オフラインを問わず、ITを活用してあらゆる場所で顧客と接点をもとうとする考え──といえる。ユーザー企業に、顧客接点のすべてのチャネルを統合して、接客から決済、在庫確認、配送までをシームレスに連携したシステムを提供する。オンライン、実店舗を問わず、一人ひとりの顧客をより立体的に捉えることができるようになり、より効果的な販売戦略の策定に威力を発揮する。
ただし、ITシステムとしては新しい商材なので、商談が始まってからも、ユーザー側がシステム導入によって何を実現したいのか、どんな効果を期待しているのかなどが明確でない場合がある。これは、ある程度予算規模が大きい大手の案件でとくに目立つ傾向だ。裏を返せば、お客様と信頼関係を築いて課題と目的意識を適切に汲み上げ、それに沿ったソリューション提案ができれば、「勝てる提案」になるということでもある。
そうした提案に仕上げるために、とにかくお客様の企業内のいろいろな立場の方とお会いして、幅広く意見を収集することを心がけている。通常、お客様がこうした案件にアサインするのはIT部門だが、システムの運用を企画するのはマーケティング部門というケースが多い。何度も繰り返して両方の部署を訪問し、お客様側でのシステム要件のすり合わせを私が媒介するような動き方といえるかもしれない。
また、お客様には遠慮をせずに直言することも意識している。これまでなじみのないソリューションなので、とにかくいろいろな機能を実装して、幅広い業務をカバーするシステムにしたいと考えるお客様が多い。しかし当社は、ECを中心とする販売・販促システムを納めるだけでなく、小売り業に関するノウハウも高度に蓄積していて、システムをどう販促に活用していくかというコンサルティングの専門家でもある。お客様のニーズを把握したうえで、必要のないものは「必要ない」とはっきり伝えることが、お客様のためだという信念をもっている。「鴨下さんは上から目線だね」ときつい冗談をいわれてしまうこともあるが、最終的には「いらないものはいらないとはっきり言ってくれるので安心できる」と、評価していただいている。
そんなスタイルが実を結び、転職1年目の昨年度は2億円の売り上げを上げることができ、最初の案件では社内MVPも獲得できた。