すべり軸受メーカー大手の大同メタル工業は、日立製作所のデータセンター(DC)に仮想デスクトップ環境を構築した。最終的に大同メタル工業本体と一部グループ会社を含めて、パソコン約1200台分のデスクトップを仮想化する計画だ。単体社員約1100人のほとんどのパソコンを仮想化することになる。大同メタル工業の主力事業所は東海地区にあるが、仮想デスクトップは日立製作所の西日本地区にある大型DCで運用することで、事業継続計画(BCP)や災害復旧(DR)に役立てていく。
ユーザー企業:大同メタル工業
すべり軸受メーカーの大手。直近の連結売上高は708億円。今回の仮想デスクトップへの移行はBCP/DR対策が主眼だが、結果的にWindows XPのサポート切れのタイミングにも合致した。
サービス提供会社:日立製作所
サービス名:仮想デスクトップシステムの構築
【課題】技術的裏づけが乏しく、検討だけに終始
大同メタル工業は、情報システムのBCPを策定するにあたって、従来のクライアント/サーバー(クラサバ)型では十分な対応ができないだろうという意識を強くもっていた。検討を始めたのは2010年頃だが、当時はまだ1000台規模の仮想デスクトップを支えるだけの技術的裏づけが十分でなく、ITベンダーなどから情報を集める日々が続いていた。
きっかけになったのは日立製作所から仮想化ソフト大手の米VMwareの仮想デスクトップ管理ソフト「VMware Horizon View」を勧められたことだった。日立製作所は米VMwareと戦略的提携を行うなど密接な関係にあり、さらに「西日本地区にある日立製作所の堅牢なDCで運営することでBCPの観点から、非常に魅力がある」(大同メタル工業の小島尚・情報センターチーフ部長)と感じた。
仮想デスクトップ方式は、旧世代のクラサバ型から脱する有力候補の一つだ。「VMware Horizon View」を使えば、パソコンだけでなく、スマートデバイスなどの端末でデスクトップを呼び出したり、場所や時間の制約も受けなくなるなどのクラサバ時代では難しかったことが容易に実現できる。折しもWindows XP OSのサポート切れが迫るなか、何らかの手を打たなければならない状況であることは変わりがない。
だが、大同メタル工業が最も恐れたのは、デスクトップを仮想化することで「処理速度などのパフォーマンスや情報セキュリティがおろそかになったり、既存の業務アプリケーションの動作に支障が出たりするのではないか」(大同メタル工業の嶺川隆利・情報センター情報システムグループ主任)ということだった。

大同メタル工業の事業所【決断と解決】強みのDCとストレージ技術を前面に
日立製作所は、こうした大同メタル工業の懸念を払拭する提案を積極的に行った。BCPと情報セキュリティについては、「国内最高水準の堅牢さを誇る日立製作所の主力DCを活用する」(日立製作所の嶽山康則・クラウド事業推進部主任技師)ことを前面に押し出すとともに、パフォーマンスは日立製作所が強みとするストレージ技術で担保した。実際、こうした仮想化システムではストレージのI/O(書き込み/書き出し)がボトルネックとなるケースが少なくなく、「ストレージ部分の設計には心血を注いだ」(日立製作所のクラウド事業推進部の杉山雄佑氏)と振り返る。
また、これまで分散していたデスクトップを集中管理することになるので、もしこの管理が煩雑なものになるなら、運用上の負担やコストが増してしまう。これには日立製作所が開発したストレージ管理ソフト「Hitachi Dynamic Provisioning(HDP)」を使うことで、「運用の容易さとストレージのパフォーマンスを最大限に引き出す」(日立ソリューションズの宮崎祐二・中部営業本部第5部主任)ようにすることで対応した。
既存の業務アプリケーションの動作検証も一つひとつ行った。約50台分のパイロットテストでは、画面遷移が従来のクラサバ型とは少し異なって一部に違和感があったものの、「検証したアプリケーションはすべて正常に動作する」(大同メタル工業の嶺川主任)ことが確認できた。大同メタル工業のBCP/DRという当初の課題解決と、仮想デスクトップ活用への不安をていねいに取り除く日立製作所の提案が受け入れられ、2014年にはおよそ1200台分のデスクトップを仮想デスクトップ環境へと移行させる予定だ。(安藤章司)

写真左から日立製作所の杉山雄佑氏、嶽山康則主任技師、大同メタル工業の小島尚部長、嶺川隆利主任、日立ソリューションズの宮崎祐二主任3つのpoint
・BCP/DR対策を契機にクラサバから離脱
・堅牢なDCとストレージ技術力で懸念を払拭
・顧客の安心感、信頼感を獲得する