全日本空輸(ANA)の労働組合であるANA労働組合(本田嘉彦委員長)は、自前の情報システムをもたず、ANAの情報システムの一部を借りて、組合のシステムとして利用していた。しかし、異なる目的の下に存在している両組織が、同じシステムを利用することは好ましいことではない。そこで、ANA労働組合は、イデア・コンサルティング(掛江正昭社長)の仮想デスクトップクラウドサービスを活用し、クラウド上に自前の情報システムを構築して、いつでもどこでも安全に利用できる環境を実現した。
【今回の事例内容】
<導入機関> ANA労働組合1990年に結成。全日本空輸(ANA)に勤務する地上職と客室乗務員の約1万人で構成する労働組合
<決断した人> 枦山和彦 中央執行副委員長ITに関する知識はそれほど豊富ではなかったが、プロジェクトを一貫して指揮してきた
<課題>セキュリティレベルが高く、いつでもどこでも使うことができる自前の情報システムを構築する
<対策>イデア・コンサルティングのDaaS「iDEA Desktop Cloud」を採用
<効果>いつでもどこでも安全なシステムを利用できるようになった。運用の管理も不要
<今回の事例から学ぶポイント>ソリューション選定では、自社の業種・規模に適合するものであるのかをよく確かめることが大事。社内の説得では、クラウドに対する抵抗感を取り除くための工夫が必要
自前のシステムをもちたい
ANA労働組合では、本部機能を司る中央執行委員会に約20人が働いており、全国各地の支部には約300人の役員がいる。中央執行委員会は、支部の役員が収集した組合員の意見をもとに、ANAと労働条件の改善などの交渉を行っている。
ANAとANA労働組合は、構成員はほぼ同じであるものの、異なる目的の下に成り立つ別個の組織だ。しかし、ANA労働組合は自前のシステムをもっておらず、ANAの情報システムの一部を借りて、組合のシステムとして利用していた。
そのことに問題意識をもった中央執行委員会の枦山和彦副委員長は、ANA労働組合の役員が使用する専用のシステムを構築することを検討した。しかし、労働組合にはIT担当者がいないし、枦山副委員長自身もITに詳しいわけではなかったので、どんなシステムを導入したらよいのかをANAグループ関連のSE会社に相談した。その際、枦山副委員長は、「セキュリティが高く、支店間の移動が多い組合役員が外出先でも利用できるシステムにしたい」という要望を出した。
SE会社から勧められたのは、仮想デスクトップを活用した情報システムを構築するというものだった。仮想デスクトップは、サーバー側にすべてのデータが保管され、クライアント端末には画面を表示するだけで、データが残らないので、セキュリティレベルは高い。また、外出先や自宅など、いつでもどこでも利用できるというメリットがあり、枦山副委員長のニーズにマッチしていた。その後、SE会社から紹介された5社のベンダーからシステムを選定。最終的に、イデア・コンサルティングの仮想デスクトップクラウドサービス(DaaS)「iDEA Desktop Cloud」を採用することに決めた。
インフラ構築が不要なDaaS
枦山副委員長がイデア・コンサルティングのDaaSを選択した大きな理由は、サーバーやネットワークなどのインフラ構築が不要で、月額固定制だったことにある。「労働組合は営利組織ではないので、システムの構築にかけられる資金には限りがある。DaaSならITインフラを購入する必要がないので、コストを低減できる」(枦山副委員長)。一方、他ベンダーの仮想デスクトップは、大規模ユーザーを対象としたオンプレミス型で、組合の役員60人向けに情報システムを構築しようとしていたANA労働組合のニーズにはマッチしていなかった。
また、インフラ構築が不要なので、短期間で導入できるというメリットがあった。加えて、システムを組合側で保有しないので、運用の手間がかからず、メンテナンスはイデア・コンサルティング側が行うことも、IT担当者がいないANA労働組合にとっては魅力だった。
セキュリティ面の説得にひと苦労
しかし、枦山副委員長は、DaaSの導入を決断した後にも、「セキュリティ面での説得に苦労した」という。労働組合では、決議権を組合員がもっているので、各組合員の意見をとりまとめている役員を納得させて、総意のかたちにしないと、DaaSの導入ができない。IT担当者がいないANA労働組合では、ITに関して詳しい役員は少数で、外部にデータを預けることに対して抵抗感を抱いている人は少なくなかった。枦山副委員長は「『社内のサーバーに置いておくほうが安全だ』という声が多く、ANAのシステムと比較しても安全なことを納得させるのは、容易ではなかった。自分自身、ITにそれほど詳しいわけではなかったので、専門用語などをかなり勉強した」と苦労を語る。
それでも、総意にする努力を続けた甲斐があって、新たな情報システムの導入を決定。2か月弱の短期間で導入することができた。稼働開始は13年10月だが、枦山副委員長は、「今のところ、何も問題は起きていないし、管理の手間がかからないので助かっている。役員からは、『いつでもどこでも利用できるので、重宝している』と喜ばれている」と、決断が正しかったことに安堵の表情を見せた。(真鍋武)