ソフトバンク・テクノロジー(阿多親市社長)は、災害時の事業継続を目指し、社内のクライアント端末300台を仮想デスクトップに移行した。社員が自宅から会社のパソコンにアクセスし、通常通りに仕事ができる環境を築いたのだ。仮想マシンのウイルス対策に、トレンドマイクロの統合型サーバーセキュリティツール「Trend Micro Deep Security」を採用した。エージェントレスでセキュリティを確保するこのツールを使って、仮想環境の安定した稼働を実現している。
ユーザー企業:ソフトバンク・テクノロジー
ソフトバンクのグループ会社。ECサイトの運用サービスなど、ICT事業を手がけている。設立は1990年、従業員数は426人。東京・飯田橋に本社を構える。
プロダクト提供会社:トレンドマイクロ
プロダクト名:Trend Micro Deep Security
【課題】導入コストとセキュリティが懸念材料
ソフトバンク・テクノロジーは、東日本大震災を機に、BCP(事業継続計画)を見直した。災害が発生した際に、交通機関が停止したり混乱したりすることを想定し、社員が出社できない場合に備えて、社内のパソコンを仮想デスクトップに移行することを決定した。
仮想デスクトップは、社員が出社しなくても、自宅から社内パソコンにアクセスし、通常通りに仕事をこなすことができるというメリットがある。しかし、導入費用が高額になることと、仮想環境のセキュリティ対策を打っておかなければならないというネックがある。つまり、コストや社内セキュリティポリシーといった面で、導入決定の壁となるファクターもあるわけだ。
ソフトバンク・テクノロジーの鈴木重雄執行役員は、「仮想デスクトップの導入を決定するにあたって、『費用対効果』と『セキュリティの担保』の二つについて、役員会議で議論を繰り返した」と語る。同社は、2011年の夏に仮想デスクトップの検証を開始。仮想環境でウイルス対策を実現するツールとして、トレンドマイクロの「Trend Micro Deep Security」を選んだ。仮想マシン上でウイルス対策のエージェントをインストールせずにウイルスを検出することができ、感染ファイルの削除を行うというものだ。「他社製品も調べたが、当社のニーズに合う適切なものは出てこなかった」(鈴木執行役員)と、選定の理由を述べる。
同社は、「Trend Micro Deep Security」を使ってセキュリティを確保できることを評価して、仮想デスクトップの導入を決断。社内端末300台を仮想環境に移し、今年8月に本格稼働を開始した。

左からクラウドソリューション事業部の大塚正之氏、鈴木重雄執行役員、ITインフラ技術部の柳清和部長、小林青己氏【解決と効果】仮想環境の安全性を確保
ソフトバンク・テクノロジーが心配していた費用対効果とセキュリティ担保。仮想デスクトップを導入し、およそ半年にわたり活用している現在、いずれの課題についても解決済みとなったようだ。
コスト面では、社員の在宅勤務を強化し、交通費を3~4割程度減らすことができた。「当社は、システムの運用管理を24時間休みなく行う必要があるので、以前は、エンジニアが夜間に仕事してタクシーで帰ることが多かった。それが、自宅で仕事ができるようになったので、夜間に出社する必要がなくなった。会社側としては、タクシー料金を削減できているのが大きなメリット」(鈴木執行役員)と、コスト削減効果を実感している。
また、セキュリティに関しても問題ないとのことだ。「Trend Micro Deep Security」は、バーチャルアプライアンス内の検索エンジンなどを使うことで、エージェントのインストールを不要としている。それによって、各仮想マシンにエージェントをインストールして1台のホストマシン上で多数の仮想マシンが同時にウイルス検索を行う方法と異なり、リソース消費が集中してシステム稼働に影響を及ぼすというような懸念がない。「業務の効率性を損なうことなく、仮想デスクトップを利用できる」(ITインフラ技術部の柳清和部長)というわけだ。
ソフトバンク・テクノロジーでは、仮想デスクトップの導入・活用をきっかけとして、いかに生産性を向上するかについて、社内のディスカッションが活発になっているという。鈴木執行役員は、「社員は仮想デスクトップの利便性を体感し、仮想デスクトップを使ってどのように仕事のやり方を変えるかについて、積極的に考えるようになっている」と、導入の副次効果に満足している様子だ。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
仮想環境のセキュリティを確保
管理作業の工数を削減
利用する機能の追加・変更が容易