
バーコードで管理して部材をピッキング
セル方式では平均10~15分でパソコンを組み立てる
ノートパソコンの製造では女性の活躍が目立つ
製造したパソコンを梱包して出荷へと進める
部材は20万点を常備物流拠点として最適な立地

松野康雄
社長 サードウェーブデジノスが製造と物流の拠点として綾瀬市を選んだのは2012年2月。綾瀬市は、鉄道の駅がないなど公共交通機関が未整備で、かつては「陸の孤島」などといわれていたが、最近は圏央道の開通で物流拠点として注目を集めている地域だ。2018年3月までには、東名高速道路の綾瀬スマートICが完成する予定で、ますます交通の便がよくなる可能性がある。
松野社長は、「外資系の通販会社が物流拠点を求めて土地の購入に動いているほど綾瀬市は活性化している。そんなことから、製造と物流を統合した事業所を置くことにした」と経緯を語る。綾瀬の拠点からは、夕方に発送すれば、翌日には国内だけでなく香港など近隣の海外にも商品が届くほど利便性が高い。松野社長は、「綾瀬事業所の存在が、ほかのパソコンメーカーとの差異化につながっている」と胸を張る。

サードウェーブデジノスの製造拠点である綾瀬事業所ラインとセルの2種類を採用
パソコンやサーバーを製造している綾瀬事業所は、約2万2000m2という広大な敷地面積をもつ。事業所内では、まず搬入フロアでマザーボードやPCケースなど「部材」と呼ぶ組み立てパソコン用パーツが入荷。その日の午前中に保管フロアに運び込む。保管フロアでは、20万点の部材を常備しながら、在庫回転率が1か月から1か月半と短い。そのフロアから必要な部材をピッキングエリアへと持っていき、受注書に従って部材をピックアップしていく。ピッキングはバーコードで管理し、すべての部材を間違いなく選ばなければ次のエリアに運ぶことができない。
次に、ピッキングした部材を生産エリアへと運ぶ。生産方式は、ライン方式とセル方式の2種類を採用。ライン方式では、一般的な仕様のパソコンを製造し、およそ1分半ごとに1台が完成する。セル方式では、カスタマイズが必要な「ガレリア」やサーバーを熟練の従業員が製造していて、1台あたり10~15分でつくりあげるという。
製造したパソコンやサーバーを検査し、異常がなかった製品を梱包して出荷する。不具合があった場合は、「リペアセンター」で出荷できる状態に修理する。修理した製品を迅速に出荷ラインへと回すために、検査エリアとリペアセンターは隣接している。
薄利多売のハードで利益を出す
パソコンやサーバーなどのハードウェアは薄利多売のビジネスで利益を出しにくいといわれているが、サードウェーブデジノスでは「部材の入荷、製造、出荷、配送まで、すべてを一元管理するワンストップオペレーションによって、中国(本土)や台湾など海外で製造するよりも低コストを実現している。しかも、国内生産によって高品質を維持している」と、松野社長は自信をみせる。「究極のSCM」と表現し、その手法によって「きちんと利益を出している」と、高効率経営をアピールする。
「メイド・イン・ジャパン」を掲げてハードウェアビジネスで成長しているサードウェーブデジノス。徹底的な管理と低コストで高品質の製品をつくっている姿を製造の現場でうかがうことができた。