四川省成都市を本拠地とするソフト開発会社が日本企業との連携を模索している。成都市には、アウトソーシングを主力に据えながら、スマートフォンやタブレット端末で楽しめるモバイルアプリを開発しているベンダーが多く、日本市場でユーザーを拡大することに取り組むケースが出てきている。このレポートでは、日本のゲームメーカーとのアライアンスやOEM提供などを視野に入れて、今年9月に開催されたコンピュータエンタテインメントの総合展示会「東京ゲームショウ2014」に参加した成都のベンダーを紹介する。(取材・文/佐相彰彦)
成都風際網絡科技
3D仕様のMMORPG「三剣豪」を提供 月商500万ドル以上を確保

張霆
CEO総経理 成都市高新区のIT企業が集うエリア「天府軟件園(天府ソフトウェアパーク)」にオフィスを置く成都風際網絡科技は、MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)の「三剣豪」を中国と韓国で提供、それぞれの国で1か月平均250万ドル(約2億9000万円)以上の売り上げを確保している。モバイルアプリなのに3D仕様のリアルな映像がユーザーの人気を集めている。
三剣豪は、冒険を続けながら手に入れたアイテムで敵を倒していくゲーム。ゲームで遊ぶのは無料だが、最適なアイテムを手に入れなければ敵を倒せない仕組みになっている。このアイテムの提供が収益源となっており、先に進みたいユーザーがアイテムを購入するので、ビジネスが拡大した。中国では成都風際網絡科技が運営会社になっているが、韓国ではネクソンを通じて提供している。
三剣豪では、ほしいアイテムを必ず手に入れることができる「ボックスガチャ」を採用しているが、特定の複数アイテムをすべて揃えなければならない「コンプリートガチャ」が日本で問題になったこともあって、「日本市場での提供は現段階では様子見。調査してから決める」と張霆CEO総経理は打ち明ける。ただ、「日本はスマートフォンがかなり普及している状況なので、非常に魅力のある市場」と捉えており、東京ゲームショウ2014に参加して、適した販売代理店を探していたようだ。
成都夏爾天逸科技
ゲームデザインで好評価 100社を取引先として確保

李驚宇
CEO 成都夏爾天逸科技は、成都市高新西区にオフィスを構えている。約300人のスタッフを擁し、ゲーム関連のデザインを得意としており、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)事業者の騰訊(テンセント)をはじめとする中国で主要なインターネット企業や欧米のゲームメーカーなど100社との取引実績をもっている。李驚宇CEOは、「日本のゲーム市場は世界のなかでも大きな規模だ」と認識し、日本企業と協力関係を築こうとしている。
従業員には、独自の教育プラットフォームによるマニュアル化したトレーニングを実施していて、スキルの高い人材を揃えている。東京ゲームショウ2014の開催時には、「日本でメジャーの大手メーカーとOEM提供の話が進んだ」という。アライアンスを組んだメーカーは現段階では公表できないが、「近い将来、当社がデザインしたゲームが発売されるだろう」とみており、今回の協業を機に日本でのビジネスを本格展開する方針だ。
成都世紀陽天科技
すでに日本市場でビジネスを提供 日本のゲームを中国で代理販売へ

肖開強
董事長 成都世紀陽天科技は、海外メーカーのゲーム販売代理店であるガルボアを通じて、すでに日本市場でゲームを提供している。タイトルは、出現する草や稲を埋めて、つなげて成長させるパズルゲームの「きのっこ」や、「ジミー」というキャラクターを操作して障害物を飛び越えながらゴールを目指す「がんばれ!ジミーの大冒険」。どちらも順調にユーザーを増やしている。
東京ゲームショウ2014に参加した理由について、肖開強董事長は「日本のゲームを中国の代理店として販売できないかどうか調査するため」としている。すでに提供されているタイトルを中国市場で販売することに加えて、「日本企業とアライアンスを組んで、ゲーム化されていないアニメのキャラクターを使って新しいゲームを中国市場向けに開発したい」との考えも示している。
きのっこ、がんばれ!ジミーの大冒険が一定のユーザーを確保していることから、日本市場については「非常に魅力的」と捉えている。