ウィッグや増毛、育毛を手がけるアデランスの営業スタイルは“カウンセリング”を基本としている。髪の毛を増やす技法は多岐にわたり、ユーザー個々人が望むヘアスタイルを実現するためには、原則としてオーダーメイドによらなければならない。毛髪に関する最新の技術動向やサービス内容をユーザーに理解してもらうために“紙”の資料を使っていたが、かねてから伝達精度や表現力の限界を感じていた。そこでスマートデバイスを活用したカウンセリングを可能にするツール「Handbook(ハンドブック)」を採用した。
【今回の事例内容】
<導入企業>アデランス毛髪関連の総合企業。男性向けウィッグや増毛、育毛サービスのブランド「ADERANS(アデランス)」、女性向けの「FONTAINE(フォンテーヌ)」、毛髪移植の「BOSLEY(ボズレー)」、海外ウィッグ「HAIRCLUB(ヘアクラブ)」などを展開する
<決断した人>伴仲道憲 部長
営業本部部長と研究開発部長を兼務する。産学連携による研究活動や、皮膚科など専門医との協業を熱心に推進。その研究成果を自社の商品やサービスに反映するとともに、全国のスタッフと最新情報の共有に努めている
<課題>時代の流れに沿って営業店舗にiPadを導入したのはいいが、どう有効活用したらいいかの課題を抱えていた
<対策>強力なコンテンツ管理機能とプレゼンテーション能力をもつインフォテリアの「Handbook(ハンドブック)」を採用
<効果>最新の技術資料や商品情報をリアルタイムで配信できるようになった
<今回の事例から学ぶポイント>スタッフが読むべき資料は、ただ配布して終わりではない。誰が、どのコンテンツを、いつ読んでいるのかを可視化することで重要情報の周知徹底が可能になる
iPadをもっと有効活用したい
Handbookはソフト開発のインフォテリアが開発したスマートデバイス向けの情報共有システムで、これまで全国700社あまりに納入されてきた定番ツールだ。今回のユーザーであるアデランスは全国約160か所の販売店舗や営業所にパソコンを設置し、ネットワークで結んでメールやファイル共有などを行ってきた。時代の移り変わりとともにパソコンに加えてタブレット型のスマートデバイスのiPadも導入したが、「せっかくiPadを導入したので、もっと有効に活用したい」(アデランスの伴仲道憲・営業本部部長兼研究開発部長)と考え、最適なツールを探してきたところHandbookをみつけたという経緯がある。
冒頭で触れたようにアデランスが扱うウィッグや増毛、育毛などの商品やサービスは、髪の色や質感、ヘアスタイルなどユーザー個々人に最適化するオーダーメイド方式であるため、営業現場ではカウンセリングが必須だ。カタログをもってきて「はい、ここから選んでください」といった物販方式は通用しない。これまでは“紙”のカウンセリング資料や技術解説、サービスメニューをユーザーに見せて説明したり、必要に応じてiPadで映像資料も見せたりしていた。

アデランスの公式サイト。毛髪に自信のない人すべてに勇気を与えてくれる だが、毛髪に関する技術は日進月歩で進化しており、上客でもない限り、こうした最新の毛髪技術の知識も乏しい。技術解説を伴う“説明商材”であることから「もっとデジタル技術を生かし、表現力豊かで、より正確にユーザーに伝えるツールを必要としていた」(伴仲部長)。今回、アデランスが採用したHandbookはiPadのようなタブレット端末を使ったプレゼンテーションツールとして活用するのだが、そのバックエンドには「強力なコンテンツ管理機能を備えている」(インフォテリアの大西直輝・セールスディベロップメントグループグループリーダー)という点が特徴で、こうしたシステム体系全体の完成度の高さを高く評価して採用に至った。
一瞬で新しい資料へ置き換え

インフォテリア
大西直輝
グループリーダー アデランスでは、産学連携による研究活動や皮膚科など専門医との協業や、日本毛髪科学協会といった団体活動を通じて世界最先端の技術を自社の商品やサービスに反映している。店舗のスタッフは日本毛髪科学協会認定で専門知識を習得する毛髪診断士の資格取得を推し進めているものの、やはり全国の現場スタッフ全員に最新の情報を行き渡らせるには、それなりの仕組みが求められる。
パソコンの電子メールで送っても、スタッフが読んだかどうかの確認が難しく、多くの場合、送られた資料をプリンタで印刷して読む場合が多い。これは現場で働くスタッフにとって、パソコンの前に長々と座っている時間がなく、業務の合間合間で目を通せるようにするためと推察されるが、であるならばモバイル端末であるiPadへ直接、読みやすいかたちでコンテンツを提供したほうが情報共有が進めやすい。
さらにコンテンツ管理機能が備わっているため、技術資料が更新されたり、新しい商品が出たとき、「一瞬で新しい資料へと置き換えることができ、誰が、いつ読んだのかも一目瞭然」(伴仲部長)。Handbookを導入して以降、新しい資料に更新されて、すぐに目を通す“速読”タイプのスタッフがいる一方、時間をかけて“熟読”するタイプもいることもわかった。管理側としてはできるだけ早く読んでほしいわけで、あまりに時間をかけて読んでいる場合は、「もう少し早く読むように」と促すことも可能になった。
今後はHandbookのコンテンツ管理機能を応用して経営分析(ビジネスインテリジェンス)に役立てたいとアデランスでは望んでいる。例えば全国の営業拠点で、どのような順番でどのコンテンツをユーザーに見せたか、あるいは資料を更新してスタッフが目を通すまでにどれだけ時間がかかったかなどの情報と、個々のスタッフ、営業拠点の成績がどう関連するのかを分析することで、ビジネスの拡大にさらに大きく役立てたいと考えている。(安藤章司)