サテライトオフィス(原口豊CEO)は、クラウド型グループウェアである「Google Apps」と「Office 365」のスケジュール連携機能をリリースした。同社はこのサービスを、複数のクラウドアプリケーションをユーザー自身が簡単にインテグレーション(CI)できるようなプラットフォームに発展させたい考えだ。「たたき合いともいえる過度な価格競争も珍しくはないクラウドアプリケーション市場で、差異化要因となり得る高付加価値商材を目指す」(原口CEO)という。

原口豊
CEO Google Appsの国内主要販社の1社であるサテライトオフィスだが、グループ会社のネクストセットが、Office365の導入支援やアドオン開発も手がけている。両製品は、クラウド型グループウェア市場の二強といえる完全な競合製品であり、これをデータ連携させるサービスにどんな意義があるのか。原口CEOは、「Google Appsのユーザーが、Office 365をリプレースではなく追加で導入するケースが増えている」と説明する。「結局はWordやExcel、PowerPointなどのOfficeアプリケーションが必要になるGoogle Appsユーザーが多い。結果的に、Google AppsとOffice 365を補完的に使うユーザーもかなり見受けられる」(原口CEO)。
また、グローバルでビジネスを展開している企業で、日本本社はGoogle Appsを使い、海外のオフィスではOffice 365を使うケースも多いという。例えば、中国ではグーグルのサービスを利用できないので、Google Appsは最初から選択肢に入れられないという事情もある。今回のスケジュール共有サービスは、こうしたニーズに応えたものだ。
さらに、組織の枠を越えたスケジュール共有にも対応する。従来は、複数の企業が同じプロジェクトを協力して進めるような場合、Google Appsのユーザー同士、Office 365のユーザー同士であっても、「会社の枠を越えて情報共有するのは簡単ではなかったが、それが手軽にできるようになる」(原口CEO)という。
まずは、500社限定で無償提供する。同社の既存顧客への訴求だけでなく、Google Apps、Office 365の他のリセラーからの乗り換えも含め、新規顧客獲得のドアノックツールとしても活用していく。原口CEOは、「現時点ではニッチなサービスであり、市場の反応をみたい」とする一方で、「ライバルとなる製品・サービスがなく、クラウドアプリケーションのヘビーユーザーをつかむきっかけになる可能性もある」と期待を寄せる。
技術開発は、サテライトオフィスと大手通信キャリアが共同で進めてきた。今後は、スケジュール共有だけでなく、メールやアドレス帳の共有、チャットメッセージの連携機能などのリリースも検討しているが、将来は、Google AppsとOffice 365だけでなく、国産のグループウェアや大手ベンダーのCRM製品なども連携対象に加えていく意向だ。原口CEOは、「SIerが個別にユーザーのニーズをくみ取ってシステム構築をする時代から、世の中に散在するクラウドアプリケーションをいかに使いこなすかという時代に変わっている。今回のサービスを、ユーザーが気軽に、しかも柔軟にクラウドアプリケーションをインテグレーションできるプラットフォームとして発展させていくことができれば、ITビジネスの新しい市場をつくることができると考えている」と話す。コンシューマ向けには、「IFTTT」(日本語版は未発表)のように、クラウドアプリケーションを手軽に接続し、ユーザーが独自の連携ソリューションをつくって利用することができるサービスが登場している。ITビジネスのパラダイムシフトを目指し、同様のコンセプトで、法人利用に耐えうるサービス構築に挑む。(本多和幸)