軟通動力信息技術(集団)
日系企業のマーケティングを支援
すでに中国ビジネスの売上比率は80%

軟通動力信息技術(集団)
方発和
集団執行副総裁 軟通動力信息技術(集団)(iSoftStone)は、中国の大手アウトソーシング企業だ。中国国内の約40都市、グローバルでは欧米やアジアの各地域に拠点を構え、総従業員数は約2万1000人に達している。ITアウトソーシング・BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を主要事業として、ハイテク企業・通信業、金融業、公共などの領域で豊富な実績を有する。2010年にはニューヨーク証券取引所に上場。昨年にはいったん上場を廃止したが、近いうちに中国市場で再上場を果たす予定だ。
2010年までは、海外売上比率が80%程度を占めていたが、ここ5年間は中国IT市場が急速に拡大していることから、国内ビジネスに注力先をシフト。方発和・集団執行副総裁は、「とくに華為技術(ファーウェイ)とは戦略的な協業関係を結んでおり、安定的なキャッシュフローを稼ぎ出している。当社からおよそ1万人の技術者を送り込んでいる」と説明する。ここで吸収した技術力をもとに、中国国内では、アウトソーシングだけでなく、コンサルティングや保守・運用を含めたトータルITサービスを提供。この5年間で国内売上比率は80%程度までに拡大した。
とくに好調なのが、ICTや環境技術などの最先端技術を活用して、エネルギー供給などの都市機能を管理するスマートシティ(智慧城市)分野だ。中国政府は、国内の約200都市でスマートシティの試験運用を開始している。方・集団執行副総裁は、「2014年までに、スマートシティ化の支援に関して約30都市の地方政府と手を結んだ。今年は、協業先が60都市までに増える見込みだ」と好調ぶりをアピールする。
●スマートシティ分野に熱い視線 一方、日本向け事業は、ITO・BPOを中心に提供してきた。方・集団執行副総裁は、「これまでは、日系企業のコストダウンに貢献することに力を入れてきた。しかし、中国が安さを提供できる時代は終わった。一方で、中国の市場は大きくなっている。今後は、当社が蓄積してきたクラウドやモバイル、ビッグデータなどの技術力を結集して、彼らの先にいる顧客を見据えたマーケティングを共に推進していきたい」と話す。
中国国内ビジネスで、軟通動力信息技術(集団)と日系IT企業のシナジー効果が期待できるのは、スマートシティ分野だ。とくに医療・介護や環境・エコの領域で、日系企業はすぐれた技術やノウハウを有している。実際、すでにIT企業では、NECや日立製作所などが、中国のスマートシティ分野に熱い視線を注いでいる。
方・集団執行副総裁は、「日系企業とは、これまで深い信頼関係を築いてきた。この関係を強化して、彼らの顧客のイノベーションに貢献したい。実際に、中国のスマートシティビジネスでは、すでに日本の大手総合メーカーと協業関係を結んでいる。このような関係になれる企業を100社以上つくりたい」と意欲を示す。
神州数碼金信科技
日系企業と腹を割って話し合う
独自機能で他社と差異化

神州数碼金信科技
何文潮
総裁 デジタルチャイナグループのSIer、神州数碼信息服務(DCITS)の100%出資子会社である神州数碼金信科技は、自社ブランドのATM・CIS(コンタクトイメージセンサ)と、それに付随するITソリューション・サービスを中国の金融機関向けに提供している。売り方は基本的には直販形式をとっており、全国に約100拠点ある自社の保守サービス網を強みとしている。
中国のATM市場では、09年以降、入出金処理が可能な還流式ATMが本格的に普及。各メーカーには、さらなる製品差異化が求められている。そこで神州数碼金信科技は、中小銀行向けに、航空チケットや宝くじの販売機能を備えたATMを開発。また、福建省福州市では、スマートシティ計画の一環として市政府と連携し、市民が医療保険などの個人情報を閲覧できるATMを提供している。
さらに今年8月には、新開発のATMを発表する予定。これは、中国で初めて鉄道チケットの販売機能を搭載したATMだ。また、プライバシー保護の観点から、ディスプレイの配置を、従来の正面からテーブル上へと変更した。何文潮・総裁によると、「すでに中国の大手銀行のファーストユーザーが決まっている」という。これを皮切りに、現在 5%程度の水準にあるATM市場でのシェア拡大を狙う。
●富士通フロンテックから部品供給 神州数碼金信科技のATMは、基本的には自社で開発したものだが、実は、一部のコアな部品については、日本のATM大手である富士通フロンテックからの供給を受けている。何・総裁によると、「中国の銀行業で、『安全で制御可能な情報技術』の採用が推進されていることの影響が大きい」という。中国政府は、2014年9月に、「情報セキュリティコントロール技術の応用による銀行業のネットワークセキュリティと情報化に関する指導的意見」を発表した。これは、中国銀行業の安全で制御可能な情報技術の採用比率を2019年までに75%に引き上げる趣旨が記載されたもの。中国政府が「安全で制御可能」とみなす国産ATMの導入が推進されている。
この状況下では、外資系ATMメーカーは、自社ブランドで銀行業に製品を販売しにくい。そこで、富士通フロンテックでは、部品供給によって神州数碼金信科技のブランドとして流通させることで、販路を確保しようとしているのだ。何・総裁は、「今協業している日系は富士通フロンテックだけだが、他の企業からも同じようなアプローチを受けている。協業先は増えていくだろう」と話す。中国ローカル企業の利点を最大限に生かそうとしている。
今後、神州数碼金信科技では、ATM以外の金融業向け周辺機器の開発も行っていく方針だ。何・総裁は、「日本にはすぐれた技術や、サービス、ソフトウェアがあり、一方の当社は中国企業のニーズを熟知している。お互いに信頼し合って、共に市場を開拓することが大事だ。そのためにも、腹を割って語り合いたい」としている。
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