その他
変貌する中国IT市場 日中IT企業間の新たな協業モデルとは
2015/06/25 20:48
週刊BCN 2015年06月22日vol.1584掲載
記者の眼
今回取材した5社は、これまでに日系IT企業と関わりがあって、新たなと協業モデルに興味を示しているという点で共通している。それは、従来のような受発注の関係ではなく、共同で事業を推進するパートナーの関係だ。成長する中国IT市場を共に開拓しようとする意識が強い。
その理由は、大きく二つある。一つは、ローカルIT企業側にある課題だ。中国IT市場は、競合が激しく、ローカルIT企業には、他社と差異化を図るための強みが求められる。そこで、これまでの日系IT企業との関わりを発展させて、日本の技術や製品を取り込もうとしているのだ。とくに、従来は対日アウトソーシングを手がけていた企業には、その思いが強い。
しかし現状をみると、アウトソーシング系のIT企業が、日本製品を中国で販売して成功した事例はほとんどない。それは、中国ビジネスのやり方や、ローカル企業のニーズを熟知しないままに、日本製品を販売しようとするからだ。まずは、中国での経験・ノウハウをある程度積む必要がある。
もう一つの要因は、日系IT企業側にある。2012年以降の日中の政治摩擦によって、中国の政府機関や国有企業の案件を、日系IT企業が単独で受注することは難しくなった。最近は、政治関係の風向きが変わりつつあるものの、IT分野では若干様相が異なる。エドワード・スノーデン氏による「PRISM」事件以降、国家安全保障の観点から国産IT製品が優遇されており、外資系IT企業は軒並み、ローカル市場に入り込みにくくなっているのだ。
この状況を打破するためには、ローカルIT企業のパートナーが欠かせない。日本製品であれば、表だって提案できないので、パートナーのサービスのなかに組み込んでもらったり、彼らのブランドで販売してもらったりする必要があるからだ。ローカルIT企業は、この状況を逆手にとって、「日系企業の中国事業を支援する」と訴求しつつ、自社の差異化要因を獲得しようとしている。
では、新たな協業モデルでローカルIT企業が欲する「日本がもつすぐれた技術・製品」とは、何を指しているのか。私見だが、これは「中国にまだなくて、需要が期待できる技術・製品」を指しているのだろう。2015年から中国では、あらゆる産業のインターネット化を推進する「互聯網+」政策を推進しており、今後はクラウド、ビッグデータ、IoTなどの需要拡大は確実視される。
ただし、日系IT企業側には懸念が残る。それは、こうした最先端の技術・製品を、中国企業と共同で研究開発する際には、重要な技術情報が流出してしまう恐れがあるということだ。
この懸念を払しょくするには、中国側の万全な管理体制が不可欠。そして日中のIT企業間が、お互いを信頼できる関係となることが求められる。そのためには、両者がまさしく“腹を割って”話し合い、理解を深める必要があるだろう。
「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げた中国。日系IT企業を取り巻くビジネス環境も、ここ数年で大きく変わった。対日オフショア開発では、人件費高騰と円安元高によって、利益の捻出が困難に。これを受けて、中国国内向けのビジネスに力を注ぐ日系IT企業が増えているが、未だにローカル市場の開拓には、大きな進展がない。ローカル市場の開拓にあたっては、地場のIT企業との協業が欠かせない。5社のローカルIT企業を取材し、ビジネスの現状や課題、今後の日中IT企業間の協業のあり方について聞いた。(取材・文/上海支局 真鍋武)
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