メガネ業界大手のメガネスーパーは、経営層をはじめ、本部スタッフや販売現場まで、すべての社員が社内データを有効活用して、迅速な経営判断や効率的な店舗運営、個人目標管理などを行っている。ウイングアーク1stが提供するBIツール「Dr.Sum EA」を導入し、業績やアクションを可視化するKPI(重要業績評価指標)マネジメントの仕組みを構築。収益重視の企業体質を確立しようとしている。
【今回の事例内容】
<導入企業>メガネスーパー1980年9月設立の老舗のメガネ販売店。神奈川県小田原市を本拠として、全国に324店舗を構える。メガネやコンタクトレンズを販売するだけにとどまらず、眼の健康寿命を延ばすための解決策を提供する「アイケアカンパニー」を宣言している
<決断した人>束原俊哉
取締役執行役員
利益重視の企業体質を確立するために、KPIマネジメントの仕組みづくり、BIツールの導入を実現した立役者
<課題>市場縮小に伴って業績が厳しい状況のなか、利益重視の企業体質を確立することを目指していた
<対策>ウイングアーク1stのBIツール「Dr.Sum EA」を導入。すべての社員がBIツールを使いこなす取り組みを進めた
<効果>社員が社内データから事業や業務に関連する数字を理解し、スピーディな状況把握から次の一手につなげられるようになった
<今回の事例から学ぶポイント>BIツールの導入だけでなく、社員が積極的に使う環境の整備が利益の向上につながる
売上目標だけを追いかけていた
熾烈な競争を繰り広げるメガネ業界。安売りを武器とするメーカーの参入によって、メガネの価格が極端に下がった。低価格化の波で老舗の販売店が新興勢力に負けないよう、価格競争に参入して売り上げを確保することに力を注いだ結果、利益を度外視することになり、赤字の道をたどることになった。
メガネスーパーも、価格競争の影響を受けた老舗の1社だ。束原俊哉・取締役執行役員は、「やみくもに売上目標だけを追いかけていた」と振り返る。そこで、アイケア分野に経営資源を集中し、ミドルシニア層を中心に「眼の負担軽減と加齢対応の視力矯正」を自社の優位性として打ち出した。これにより、従来の売上重視から利益重視のビジネスへと転換しようとしたのだ。
「Dr.Sum EA」を導入
利益重視の体質に向けて、メガネスーパーが取り組もうとしたのは、利益の推移を把握することだ。そのためには、顧客が購入した商品の内訳、単価と粗利率など、中身を細かく分析することが必要だった。しかし、POSをはじめ在庫管理や販売管理など、さまざまなシステムから手作業でデータを収集しなければならないという問題が発生していた。システムを担当する山口泰司・管理本部情報管理グループシニアマネジャーは、「当時は、本社の営業部や商品部、店舗から多種多様なデータ抽出依頼があった際、そのつどシステム部門がデータ処理を行っていた」と、必要なデータの抽出に手間と時間をかけていた実態を打ち明ける。

束原取締役執行役員(写真中央)、斎藤満マネジャー(左)、山口泰司シニアマネジャー(右) アクションに直結する商品、顧客、社員を軸に利益重視の情報が必要ということで、着目したのがBIツールだ。2012年3月、経営者から現場の社員まで、誰もが事業や業務に関連する数字を理解できる製品として評価の高い、ウイングアーク1stのDr.Sum EAの導入を決断した。
99%の情報開示を基本に
Dr.Sum EAを導入することになって、メガネスーパーが最も力を入れたことは、「すべての社員がBIツールで分析したデータを、それぞれの立場で使いこなすこと」(束原取締役執行役員)だった。BIツールは、導入するだけで数字が把握できるわけではない。「導入した当初は閲覧するが、そのうちに閲覧しなくなる社員が出てくる。実際、そのようなケースも散見された」(斎藤満・事業推進室マネジャー)という。そこで、「すべての社員が積極的にBIを使うようになるよう、緻密なスケジュールを組んで、段階的に導入した」(束原取締役執行役員)とのことだ。
操作マニュアルや活用マニュアルの配信、勉強会の実施、導入した効果を調べるためのアンケート、現場の声を反映したメニューのリリースなど、さまざまなことに取り組んだ結果、すべての社員がBIツールの活用を意識し、それぞれの立場で必要なデータを自発的に閲覧するようになった。しかも、「経営層を説得して99%の情報開示を実現した。これによって、必要なデータを集めようと、ますます閲覧率が向上した」と、束原取締役執行役員は満足そうに話す。KPIマネジメントを構築したわけだ。
昨年度(2015年4月期)には赤字が大幅に縮小し、今年度(2016年4月期)は黒字に転換する見込みのメガネスーパー。BIを浸透させて利益重視の実現に成功した。(佐相彰彦)