感情機能を搭載した人型ロボット「Pepper」。個人だけでなく、受付業務やセミナー・イベント案内、店頭スタッフなど、企業が接客業務で活用することが期待されている。ただ、企業で利用するには意図する動作やセリフが必要なケースが多い。ところが、Pepperへの動作要求は専用のプログラミングソフト「Choregraphe」上で開発しなければならない。この問題を解決するため、M-SOLUTIONSはPepper向け動作設定クラウドサービス「Smart at robo for Pepper」の提供に踏み切った。(取材・文/佐相彰彦)

「Smart at robo for Pepper」によって意図的に動作する「Pepper」簡単操作で誰でも使える

M-SOLUTIONS
植草 学
取締役 Smart at robo for Pepperは、「簡単操作であなただけのPepper動作を」がコンセプトの動作設定クラウドサービス。Choregrapheとサイボウズが提供している業務アプリ構築が可能なPaaS「kintone」を連携した。複雑になりがちなロボットの動作開発を効率化して自由な動作設定を実現している。ユーザー企業は、セリフを入力フォームに登録して動作指定アイコンを選択、Pepperの胸にあるディスプレイに表示する動画や画像を指定するだけで、意図した動作を設定することが可能になる。
サービスの提供に踏み切った理由について、M-SOLUTIONSの植草学・取締役は、「デベロッパー先行モデルや一般販売モデルのPepperを購入したユーザー企業から、『Pepperを上手く活用することができない』との声が出ていた。個人は癒されたいという理由で購入するが、企業はビジネスの目的で購入する。有効活用できる環境をつくりたかった」と話す。
今年10月に法人向けモデル「Pepper for Biz」の申込み受付が開始となったが、「Pepper for Bizは、決められた設定で十分というユーザー企業に適している」と植草取締役は話す。実際に、Pepper for Bizは、接客や受付の一連の流れがセットされたテンプレートが用意されている。テンプレートに従ってテキスト、画像を入力するだけという簡単操作が強みだが、「Pepper for Bizと同じ簡単操作に加えて、一連の流れも含めて自由に設定したいという企業にはSmart at robo for Pepperが適している」と、植草取締役はアピールする。
価格は、Smart at robo for Pepperが、クラウドサービスということもあって月額課金となっており、1台あたり3万8000円に設定。「さまざまな企業に、さまざまな場面でPepperを使ってもらえるよう、リーズナブルな価格帯にした」としている。また、初期インストールや設置の支援作業を提供する初期設置サポートについては、1台あたり20万円に設定した。
動作ログやアンケートで分析も
では、Smart at robo for Pepperを導入すると具体的にどのようなことができるのか。まず日付が決まっているイベントの告知や5分間隔の呼び込みなどでは、動作開始のタイミングを日時・毎時・一定間隔・ランダムのなかから選択できる「時間指定」を行うことができる。また、頭を触ると挨拶、右手が日本語で挨拶、左手が英語など、タッチ後の動作を設定できるほか、人が近づいたら呼び込みや挨拶などの動作、ディスプレイをタッチした後の動作を設定する「センサー指定」も可能だ。FAQや商品紹介で「2択」「4択」「6択」などを選択後に、動画再生してアンケートにもつながる「択一指定」も実施できる。さらに、話しかけることによって動画再生を行う「会話入力」も指定できる。

セリフを入力フォーム登録して動作指定アイコンを選択するだけ
動作ログやアンケートなどのグラフ表示が可能 これらの機能に加えて、もう一つの強みが分析だ。各機能によって得たデータをリアルタイムに保存。一覧表示やグラフ表示することで、ユーザー企業はPepperにアクションを起こした人がどのようなことに興味を示しているのか、ということを把握できるわけだ。
ほかにも、個別動作の作成や設定を追加することができる「個別動作カスタマイズ(価格は1動作あたり50万円から)」、導入時の利用ケースなどをコンサルティングする「Pepper導入コンサル(100万~150万円)」、独自のPepper向けアプリの作成が可能な「個別アプリコンテンツ作成(300万~500万円)」などのオプションも用意している。
M-SOLUTIONSでは、現段階で直販を中心にSmart at robo for Pepperの導入を促しているが、「今後は、kintoneの販売パートナーがPepperを導入しているユーザー企業に対してSmart at robo for Pepperを提案するなど、チャネル体制を構築していきたい」との考えを示している。
法人市場でPepperが広く浸透しているかといえば、現段階では実際に導入している企業は多いとはいえない。しかし、「一般販売モデルは、初回がすぐに販売予定数に達して終了している。また、Smart at robo for Pepperの予約も順調と聞く」。そういった点では、SIerにとって新しいビジネスチャンスをつかむことができる可能性を秘めている。