ユーザー企業のなかで、クラウドを利用する要求があたりまえになってきた。加えて、最近は非構造化も含めたビッグデータ分析への関心も高まりつつある。一方で、ユーザー企業を取り巻く環境は、まだ従来型システムを活用しているケースが多い。クラウド利用やビッグデータ分析にはハイブリッドクラウド型システムを導入することが望ましい。その環境に最適な一つがオブジェクトストレージで、クラウディアンが自社製品でシステム刷新を促そうとしている。(取材・文/佐相彰彦)
課題は従来型システム

クラウディアン
本橋信也
取締役COO 複数のクラウドサービス事業者が国内市場に参入し、今ではクラウドサービスを利用するという意識がユーザー企業のなかであたりまえになっている。一方で、基幹系システムを社内に残しておきたいという要望が強く、メーカーやSIer、ディストリビュータなど、ITベンダーにとってはオンプレミスにクラウドサービスを連携させるというハイブリッド環境を提案することが、案件を獲得する策の一つといえるだろう。また、データの重要性が騒がれているなか、多くのユーザー企業がオフィスで作成・共有される各ファイル、電子メール、写真や動画などのリッチメディアなど、構造化データとは異なる非構造化データを保存する傾向が高まってきた。
ところが、ユーザー企業の多くはオンプレミスとして基幹系システムやデータベース処理に最適化された従来型システムを導入しているケースが多く、クラウドサービスを組み合わせたハイブリッド環境には適していない傾向がみられる。加えて、データが急増して、例えばひっ迫するストレージ容量と増え続けるファイル数への対応、コンプライアンスを含めた長期化するデータの保管期間、データ量とファイル数増加によるシステム性能の劣化、ストレージ装置増設・置換やデータ移行作業など、データ管理コストの増大といった複数の課題にも直面している。
このような課題への対処は、さらに高性能で大容量のストレージに置き換えて、データの入れ替え作業をすることで、その本質的な解決の糸口としてクラウドサービスを採用して多種多様で膨大なデータ量を迅速に処理するわけだ。ただ、ユーザー企業は従来型システムを構築している。オンプレミス部分の課題を解決するストレージ基盤の一つがオブジェクトストレージで、代表的なメーカーがクラウディアンだ。同社の本橋信也・取締役COOは、「ユーザー企業の多くがオンプレミスとパブリッククラウドサービスにデータ処理と保管が分散し、重要データが外部流出している危険性があったり、一元管理が困難だったりと悩みを抱えている。また、非構造化データの管理責任が曖昧でストレージの分割損なども発生している」と訴えている。
ITコアを段階的に刷新
クラウディアンでは、オブジェクトストレージとして「CLOUDIAN HyperStore」を提供している。強みは、ブロックストレージやファイルストレージとデータの格納方式が異なって、各ファイルをオブジェクトと呼び、ID(識別子)と属性情報(メタデータ)が付与されて階層のないフラットな関係として扱うことだ。他にも、「マルチデータセンター」「S3 API」「ハイブリッドクラウド」が大きな特徴となる(図参照)。
また、本橋COOは「ユーザー企業が課題を解決するためには、段階を踏んでハイブリッドクラウド型システムに刷新することが重要となる」という。具体的には、(1)オンプレミスに仮想化+分散処理をコア技術とするクラウド型システムをIT部門が構築運用して非構造化データの多い事業部門に導入(2)オンプレミスのクラウド型システムを拡張して他の事業部門の非構造化データも共通ストレージ基盤化(3)クラウドとオンプレミスを連携して一元管理できるハイブリッドクラウド型システム化(4)複数のデータセンターに分散配置・複製、といった流れだ。このような段階的なハイブリッドクラウド型システムへ刷新をCLOUDIAN HyperStoreが実現する。本橋COOは、「ハイブリッドクラウド環境を整備するためにも、オブジェクトストレージを普及させていく」との方針を示している。