横河ソリューションサービス(奈良寿社長)は、保守・修理業務の専門パッケージソフト「ESCORT」を成長の核に据えるべく、拡販に本腰を入れている。アフターサービスの業務プロセスを可視化し、そのデータを業務改善だけでなく、収益の向上にもつなげられるような提案を目指しており、IoTの普及も大きなビジネスチャンスになるとみている。(本多和幸)
横河ソリューションサービスは、横河電機が販売する制御系システムの保守をサポートするIT基盤を、1970年代後半から提供してきた。80年代には、横河電機の製品だけでなく、多様なベンダーの製品を組み合わせた複雑なシステムの保守を一括して依頼したいというユーザーの要望も強くなり、保守業務のIT基盤も早期にマルチベンダー対応を進めてきた。また同社には、横河電機グループの保守サービスの基盤として、「グローバルレスポンスセンター(GRC)」というサポートセンターを設立し、保守サービスそのものの価値向上に取り組んできた歴史もある。川崎信幸・執行役員ERPビジネス本部長は、「さまざまなデータの蓄積があって、トラブルが発生するであろうタイミングで、最適な制御をできるような情報提供もできるようになった」と説明する。
こうしたノウハウと資産をパッケージ化したのがESCORTであり、保守業務のプロセスを一気通貫でサポートできる機能モジュール群を備えている(図参照)。各機能モジュールでデータを吸い上げ、これを分析・活用することで、ユーザーのビジネスにおける顧客満足度の向上や、収益構造の改善などに役立てることが可能だという。また、パッケージソフトではあるが、自社開発製品であるため、アドオンやカスタマイズも柔軟にできるのが大きな特徴だ。川崎執行役員は、「IoTの普及などでデータ量が増えれば、ユーザーはより価値の高いサービスを顧客に提供できるようになる」と、市場のポテンシャルに大きな期待を寄せる。
05年に、横河電機グループは、各サービス子会社がそれぞれ外販で利益を上げるという方針を掲げたが、現在、横河ソリューションサービスはESCORTを中心商材と位置づけており、22社385サイトへの導入実績がある。横河電機のように、保守・修理業務サービスも展開している製造業者や、子会社、サードパーティを問わず保守サービス専門会社などを主なターゲットとしている。
これまでも、一部パートナー経由の導入などはあったが、現在は、「販売パートナー、エンジニアリングパートナー、ソリューションパートナーなどをきちんと構造化していく」(川崎執行役員)フェーズに入ったという。ESCORTはIBMのパートナーソリューションにも認定されており、IBMのパートナーコミュニティを通じた拡販も模索していく。