不動産仲介事業などを手がけるオープンハウス(荒井正昭代表取締役)。同社の営業社員の間では、従来利用していたグループウェアとフィーチャーフォンでは、外出先での仕事ができないという課題を抱えていた。また、日々のファイルのやりとりでストレージ容量を圧迫しているという問題もあった。そこで、グループウェア「Google Apps」の機能を使えるクラウドストレージ「Google Drive for Work」と「iPhone 6」を導入した。
【今回の事例内容】
<導入企業>オープンハウス1997年9月に設立。東京23区、川崎・横浜など17か所の営業センターで不動産仲介業を展開。子会社では不動産販売事業や不動産金融事業も手がける
<決断した人>鈴木貴臣
管理本部 情報システム部
クラウド推進グループ 課長
クラウド推進グループで、既存システムの最適化、システムインフラの見直しなどの業務に従事
<課題>従来のグループウェアとフィーチャーフォンでは、社外での業務に支障があり、ストレージ容量にも課題があった
<対策>時間の使い方、社内外とのコミュニケーションなどの点において業務を効率化。ストレージ容量の心配も不要に
<効果>クラウドやモバイルなど最新のITを利用しやすいインフラを短期間かつ低コストで構築。サポートデスクのアウトソーシングにより情報システム部門の運用負荷も軽減した
<今回の事例から学ぶポイント>早期に決断、導入することで、より多くのメリットを得ることができる
社員が外で働ける環境を
「東京に、家を持とう。」をスローガンに、東京23区、横浜・川崎エリアなどで不動産仲介事業を展開するオープンハウス。1997年の創業後、順調に業績を拡大し、13年には東証一部に上場を果たすなど、勢いに乗りながら規模を拡大している。
同社は、11年よりグループウェアを導入、社員一人ひとりに対してフィーチャーフォンを支給していた。しかし、現場の営業担当者が外出先でスケジュールやメールの添付ファイルの確認ができないことが課題だった。フィーチャーフォンからメールを送信するのもはばかられ、かといって、社外で使用できるモバイルPCは台数が限られており、全員に支給できない。外で仕事ができないことにより、結局、社にもち帰って業務をこなすことが多かった。
また、使用していたグループウェアでは、メールの未配送や、「UIの面での使いづらさがあった」(土屋俊輔・情報システム部クラウド推進グループ係長)という。ほかにも、営業社員が「週に(一人当たり)最大150枚の写真を撮る」ことで、ファイルサーバーの容量を圧迫。ファイルサーバーの追加作業に追われていたという。
そうした事情を背景に、14年11月頃より、グループウェアとフィーチャーフォンを見直すことになる。グループウェアについては、「会社の成長速度についていける」と判断し、Google Appsを選択した。なかでも、Google Appsの機能を使えることに加えて、ストレージが無制限というGoogle Drive for Workを採用。フィーチャーフォンは、UIを重視し、直感的に使用法をイメージしやすいiPhone 6に決めた。
約70日のスピード導入
導入にあたっては、社内での議論も滞りなく進み、15年1月に決済が下りる。当初は、8か月後の移行完了を計画していたが、Google AppsとiPhone 6を導入することで、コストが削減できると判明。それに気づいた経営陣からすかさず「『コスト削減につながるならやってよし』と一気に判断が下った」(鈴木貴臣・情報システム部クラウド推進グループ課長)という。さらに「新人が入社する4月に間に合わせたい」との要望も出てきた。そこで、鈴木課長、土屋係長が中心になってベンダーとの折衝を行い、「本来2か月かかるところを2週間に圧縮した」(鈴木課長)という。セキュリティとUIは担保しながら導入へ向け作業を進め、2月中旬に、検証をかねて執行役員レベルに先行導入。「使いやすい」との好評を受け、3月上旬、社員全体へ展開するに至り、準備から導入まで約70日というスピード導入が実現した。
コスト削減と時間の有効活用に
Google Drive for WorkとiPhone 6の導入により、外出先でもメールの添付ファイルを見られるようになり、社内で行う業務の削減につながった。また、iPhone 6でGoogleへのアクセスやメールの返信ができることから、すきま時間を有効活用できるようになった。

写真右から、管理本部情報システム部クラウド推進グループの土屋俊輔係長、鈴木貴臣課長、会見春香氏 また、「Google Appsのスケジュールソリューションのなかで、最もインターフェースがすぐれていた」(鈴木課長)と評価する、rakumo(御手洗大祐社長)のGoogle Apps向け機能拡張ツール「rakumoカレンダー」を導入。もともと限られた職種の社員しか利用していなかったというスケジューラだが、利用する社員が増えてきたという。これら以外にも、メッセージアプリの「ハングアウト」により、手軽にメッセージや写真を送ることが可能となったことで、社員間のコミュニケーションの促進や、判断のスピードが向上したそうだ。
ストレージ容量が無制限になったことで、社員は写真などのデータをドライブへ保存するようになった。これにより、サーバーの容量を心配する必要もなくなり、情報システム部の負担も軽減。「今、ファイルサーバーは安心できている」(鈴木課長)とほっとした口調で語る。
今回の導入により、「コスト削減と時間の有効活用の点で大きな効果が得られた」と会見春香氏。今後は、社内の基幹システムやSFAなどのiPhoneアプリ開発や、無料アプリケーションの活用、そのほか、社員から要望の多い機能を備えたアプリケーションを開発していく方針だ。(前田幸慧)