米シトリックス・システムズ(米シトリックス)は1月11~13日(米国時間)の3日間、パートナー企業向けプライベートイベント「Citrix Summit 2016」を米国・ラスベガスで開催した。ディストリビュータやSIerなどグローバルでシトリックスとパートナーシップを組むベンダーなどが参加。2015年夏以降、経営陣の体制が大幅に代わり、今後どのような方向に進むのかが気になるなかでの開催だが、このイベントを通じて、米シトリックスは積極的にパートナー企業との協業強化をアピールした。(取材・文/佐相彰彦)

「Citrix Summit 2016」に4000人以上が参加来場者は70か国から4000人以上 日本からも有力パートナーが参加

キンバリー・マーティン・
バイスプレジデント Citrix Summit 2016には、報道関係者やシトリックス関係者を含めて、世界70か国から4000人以上が来場。日本からは有力パートナー企業の30人ほどが参加した。昨年夏、米シトリックスはCEOのマーク・テンプルトン氏が退任を表明し、秋に戦略的な方向性を探るとして暫定CEOにボブ・カルデロニ氏が就任(イベント当時)。また、ワールドワイドパートナーセールスと戦略部門を担当するバイスプレジデントとして、マイクロソフトでEMEAチャネルビジネスを数年間にわたって主導した経験をもつキンバリー・マーティン氏が就任した。これまでにはない大幅な経営陣の刷新があっただけに、今後、グローバルでシトリックスがどのようなチャネル戦略を打ち立てるのかが、来場者の大きな関心事だった。
シトリックスは、他社に先駆けて仮想化関連テクノロジーに着手したということを強みにしていたものの、業界自体の技術進歩によって製品・サービス、マーケティングなどで差が縮まりつつあったことは事実だ。初日の基調講演では、カルデロニ氏が登壇して「(シトリックスが強みとしていた)本当によい要素を忘れてしまっていたのかもしれない」と認めた。そのうえで、「今後は、『フォーカス』をキーワードにビジネスの簡素化を進めていく」との方針を掲げたほか、「パートナーが高い売り上げ、高い利益を確保できるように取り組んでいく」と、パートナー企業とともにビジネスを拡大していくことをアピールした。
ミッドマーケット向けのチャネル策がカギ
今回のイベントで、米シトリックスがパートナー企業に訴えていたのは、新しい市場の開拓だ。これまでは、大企業が中心のエンタープライズマーケットでユーザーを獲得してきた。カルデロニ氏は、「顧客の6割程度がエンタープライズ」という。一方、ミッドマーケットについては「全体の2割にも満たない。逆をいえば、新規顧客を開拓するポテンシャルがあるということだ」と強調した。
基調講演に幾度となく登壇したマーティン・バイスプレジデントは、「当社のビジネスは90%がパートナー経由」と前置きしたうえで、「(準大手・中堅企業で構成される)ミッドマーケット市場は年率8%で成長している。ここにフォーカスしてパートナー企業をサポートする」意向を示した。その一つとして、ミッドマーケット市場を掘り起こす支援策「Partner Mid-market success kits(Mid-market success kits)」の提供を発表した。Mid-Market success kitsは、米シトリックスが汎用的な製品・サービスや業種に特化した製品・サービスを明確にして、パートナー企業が、ミッドマーケット向けに適したビジネスを手がけることができるようにしたものだ。ホワイトペーパーのひな形を用意し、そのホワイトペーパーにパートナー企業が得意とする製品・サービスとシトリックスの製品・サービスを入れ込めば、ユーザー企業に新しいソリューションが提案できる。
今回のイベントでは、「長くCEOを務めたマーク・テンプルトン氏が退任して経営陣の大幅刷新があったが、パートナー企業との協業をますます強めていくこと」「パートナー企業のビジネス拡大に向けてミッドマーケットを掘り起こす策を講じること」の二点を強調していた。また、イベントでは「Innovation Award for Partner」の受賞企業を称えるなどパートナーに敬意を表す場面もあった。今年に入ってから、米シトリックスはキリル・タタリノフ氏が社長兼CEOに就任している。新生シトリックスとして、確固たる地位の確立を目指している。

イベントでは「Innovation Award for Partner」を受賞した企業を表彰する場面も
日本からも有力なパートナー企業がイベントに参加したチャネル支援の強化に期待
日本から参加したパートナー企業の多くは今回のイベントで発表されたチャネル戦略を聞いて「大いに期待している」との声を寄せている。とくに、Mid-market success kitsによって他社と差異化を図った製品・サービスを提供できることでビジネスが拡大できると踏んでいるようだ。また、グローバルのチャネル責任者が代わり、「どのようなマーケティングを展開するのかについても期待している」と話す。
日本では、グローバルでスタンダードのパートナープログラムを提供していることに加えて、各パートナー企業ごとにカスタマイズされた支援策を講じるケースもあるという。日本市場でシトリックスが今後どのような存在感をみせるのかに注目が集まる。