ITシステムの多様化やクラウドなどサービスの導入によって、IT関連の運用管理に必要不可欠な、インシデント管理、問題管理、変更管理、構成管理、ヘルプデスクに頭を悩ませているユーザー企業が多いのではないだろうか。この課題に応えるのが、IT運用管理サービス「HP Service Anywhere(HP SAW)」だ。SaaS型での提供形態であるため、自社で資産をもたずに初期投資や導入工数を抑え、低コストでITサービス運用管理を実現する。アシストでは2014年8月に提供を開始し、ユーザー企業の裾野が広がっているという。(取材・文/佐相彰彦)

若月恵介課長(左)と八千代早紀氏手軽に使えることが売り
HP SAWは、オンプレミス型ITサービス管理の「HP Service Manager software」をベースとしたヒューレット・パッカード製のサービスで、ITシステムの運用管理に必要な機能をSaaS型で提供しているものだ。SaaSということで、機能のアップデートなどが年に数回、自動的に更新されるため、ユーザー企業がバージョンアップやアドオンなどの作業を行う必要がない。また、ユーザー企業の社員など社内ユーザーが、HP SAW上で社内システムに関する問い合わせ内容を入力中に、HP SAWの「FAQ検索」機能が自動的に解決策候補を提示して問い合わせる前に解決するため、情報システム部門やヘルプデスク担当などIT管理者への問い合わせ件数を大幅に削減して、業務効率化を図ることができる。さらに、ヒューレット・パッカードのビッグデータプラットフォームである「HP HAVEn」テクノロジーを搭載しており、構造化・非構造化データのなかから、IT管理者や社内ユーザーが本当に必要とする価値ある情報を迅速にみつけ出すことも可能だ。
アシストでは、日立製作所の統合システム運用管理ソフト「JP1」を販売していたことから、付加価値を提供するサービスとして、HP SAWの取り扱いを14年8月に開始した。若月恵介・システムソフトウェア事業部技術統括部技術支援1部課長は、「SaaSであるため、低コストでITサービス運用管理を実現でき、しかも手軽に使うことができる。大企業をはじめとして、SMB(中堅・中小企業)でも簡単に導入することができる」とアピールする。
販社経由で新規顧客を開拓する
若月課長が説明する通り、最近では大企業に加えてSMBの導入が進んでいるという。「サービスデスクの役割を果たすため、提供開始当初は、大企業がメインの対象企業と捉えていたが、ITシステムが複雑になればなるほど、IT管理者の少ないSMBからのニーズが高まってきた」としている。これまでは直販を中心に大企業にアプローチをかけていたが、「今後は、販売パートナーを通じてSMBを新規開拓していきたい」との考えを、システムソフトウェア事業部技術統括部技術支援1部の八千代早紀氏は示している。
HP SAWの利用料金は、年額で17万9000円からとなっている。若月課長は、「HP SAWの利用料金だけでなく、IT管理を行うためのシステムを新しく構築することから、1案件あたり200万~300万円の規模。しかも、SaaSでの提供ということでストックビジネスにもつながる」という。拡販に向けて、アシストでは「システム管理業務マップ」と呼ばれるユーザー企業の社内で必要なシステムをマップ化した資料を策定。「ユーザー企業が、社内で足りないシステムがどれなのかが一目でわかるようになっている。ユーザー企業に提示すると、ほとんどがサービスデスクの部分が足りないということで、HP SAWを導入する流れになる」としている。
ITを使って業務効率化や売り上げを伸ばすには、社内ユーザーが使いこなすことが必要となる。一方、社内のヘルプデスク担当の増員はコスト増の原因となり、なかなか増やせないというのが実情だ。このようなユーザー企業に対して、HP SAWの導入を提案すれば、新たにユーザー企業を獲得する可能性がありそうだ。