【無錫発】帆軟軟件(中国)は、レポート作成・BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを開発・販売している中国のソフトウェアベンダーだ。ここ数年、同社は売上高60%以上の伸び率を維持しており、急速に成長。昨年には日本を含む海外市場への事業展開も開始するなど、勢いづいている。(取材・文/上海支局 真鍋武)
中国のTableauを目指す
──BCNで御社を紹介するのは今回が初めてです。まずは、どんな会社なのか教えてください。 
帆軟軟件(中国)
陳炎
Co-founder
1984年生まれ、湖北省黄岡市出身。武漢の華中科技大学で経済学の学士を取得後、南京大学で軟件工程の修士課程に進学。在学中に、仲間と5人でソフトウェアプロダクトを開発・販売する帆軟軟件(中国)を立ち上げた。 陳 帆軟軟件(中国)は、2006年に設立したソフトウェアベンダーです。現在、約200人の従業員を抱えており、北京や上海、深センなど、沿岸部の主要都市だけでなく、成都や西安などの内陸や海外を含め国内外に十数の支社をもっています。
主力商材は、固定帳票などのレポート作成ツール「FineReport」とBIツールの「FineBI」です。最近では、クラウド上へのデータ移行ツール「簡到雲」の提供も開始しています。現在は、パッケージソフトとしての販売が主流ですが、今後はクラウド版の提供にも力を注ぐ予定です。
──競合製品と比べて、御社のソフト製品にはどんな強みがあるのですか。 陳 中国国内のソフトベンダーには、FineReportの競合といえる強力な製品はありませんが、海外製品も含めると、SAPの「Crystal Reports」が競合にあたります。一般的なレポート作成ツールは、データベース(DB)へのアクセスを行い、レポートとして表示するだけの製品が多いですが、FineReportはDB上に財務や人事などの追加情報を書き込めることが強みですね。
一方のFineBIは、オラクルの「Business Intelligence Enterprise Edition(BIEE)」、IBMの「Cognos」、SAPの「SAP BusinessObjects(BO)」などが競合製品です。こうしたグローバルベンダーの製品は、エンドユーザーが利用を開始するにあたって、エンジニアによるシステム構築が必要ですが、FineBIは操作が簡単で、ITに詳しくないエンドユーザーでも、自分自身で利用環境を整えられることが強みとなっています。ユーザーにとっては、初期段階でITベンダーにシステム構築を依頼するコストを削減できるのです。また、伝統的なBIツールは、DBに格納されたデータを閲覧しますが、FineBIは、独自のインメモリ技術によって、メモリ上でデータを高速で分析することができます。みなさんに馴じみのある製品でたとえるなら、これは「Tableau」と同じやり方ですね。当社はTableauをベンチマークしていて、FineBIは、彼らの製品から勉強したことを取り入れて開発したところが大きいですね。中国で同社のような存在となることを目指しています。
──どの程度の販売実績があるのですか。 陳 これまでの累計導入企業数は約4600社です。このうちの500社ほどがIT企業で、当社の製品を彼らの商材に組み込むなどして、エンドユーザーに提供しています。ですので、実際にこうしたパートナーを通しての提供を含めると、顧客数はさらに多いことになります。実は、中国でCMMI3認証を取得している企業の7割が当社のパートナーとなっているのです。
とくにFineReportのユーザーは、大・中堅企業が多いですね。サーバーライセンス形式で提供しているので、ユーザー数制限がなく、費用対効果が高いのです。中国の国鉄や公安局、固定資産管理委員会、アリババ、ファーウェイなどの有力な企業が導入しています。一方のFineBIは、まだ発売してから間もないので、こうした既存ユーザーへの提案を進めるとともに、将来はクラウド版も販売して、中堅・中小企業(SMB)にも使ってもらいたいですね。
また、業績でいうなら、当社の直近の売上高は約1億元です。売上高はここ数年間、前年比60~80%増のペースで伸び続けています。
充実したサポートが売り
──好調の要因はどこにあるのでしょうか。 陳 すぐれた製品と優秀な社員、そして中国の市場拡大が成長を後押ししています。もう少し頑張れば、売上高10億元までは到達できると考えています。
一方で、これまであまり営業・マーケティングには費用をかけずに、口コミで成長してきた背景があります。極端な例を挙げると、営業をかけずに、お客様が自身で試用版をダウンロードして、システムをつくってから契約の申し込みをいただくこともあるほどです。
では、どうして口コミが広まったのかというと、それは当社にすぐれたサポート体制があるからです。当社のサポート専門部隊では、売上高や顧客数の増減ではなく、顧客満足度を評価の指標としています。中国のIT企業は、製品を売って終わりというケースが多い。そこで当社は、導入後もお客様が使い続けてくれるように、充実したきめ細かいサポートを提供し、お客様の意見を汲み上げて、その後の製品やサポートの品質向上に反映しているのです。例えば、お客様自身で当社製品を不自由なくお使いいただけるように、無料のドキュメント資料も豊富に提供しています。
──海外へも展開しておられるとのことですが、進捗状況はいかがですか。 陳 海外事業は2015年に開始したばかりです。昨年夏には日本にも支社を設立しました。ただし、海外は簡単ではないというのが今の実感です。それでも、海外市場は大きいですし、その可能性は捨てません。現状、中国のパッケージソフトベンダーで、海外で成功している製品はあまりありません。当社がその先駆者になりたいです。
──今後の事業構想について教えてください。 陳 まずは、FineReport、FineBIの製品強化をすること。表示や分析だけでなく、将来の予測までができる機能を盛り込みたいです。それから海外展開の加速。後は、業種別ソリューションの開発ですね。すでに、医療や金融業など、いくつかのテンプレートを開発しています。
中長期的な目標は、売上高10億元。これに、海外展開と新製品が加われば、20億元に拡大することだって夢ではない。社員全員がマイホームとマイカーを保有して、「帆軟軟件(中国)で働いているよ」と、自慢できるような会社にしたいです。