「守りのIT」から「攻めのIT」へ。多くの企業のIT部門が、テクノロジーを通じて自社の変革に影響を与えるための取り組みを進めている。それはインテルにおいても同様である。このほどグローバル全体における社内の業務改革に向けたIT化の取り組みについて発表した。IT化によって、インテルではどのような成果が出ているのだろうか。(取材・文/佐相彰彦)
社員一人あたりのIT支出額は減少

邱天意
APAC and Japan
地域部長 インテルは、72か国に153拠点を置いており、全社員数は10万4820人。そのなかでIT部門のスタッフは6319人で構成される。成長と予算要件のバランスを取りながらビジネス価値の創造に向けたIT化を進めている。社員に支給しているデバイスは年を追うごとに増えており、現在のデバイス装備は図1の通りだ。ストレージ容量は2年間で倍増、データセンターで稼働中のサーバー数がおよそ2.5倍になっている(図2)。邱天意・インテル情報システム部APAC and Japan地域部長は、「一方で、社員一人あたりのIT支出額も収益に対するIT支出額の割合も減っている」とアピールする。これは、業務改革や成長に向けたIT化を進めながら、きちんとコスト削減を実現していることを意味している。
生産性やデジタル化、セキュリティで成果
インテルがデバイスやサーバーなどを増やしているのは、業務効率化を図るためではない。「生産性、デジタル化、サイバーセキュリティなどの観点で成果を出すためだ」と邱APAC and Japan地域部長はいう。生産性においての成果としては、オフィス内で効果的な会議を行うために革新的なワイヤレス会議室を500室以上設置、製品検証時間の短縮、社員に対するモバイルアプリ提供の増加などがある(図3)。デジタル化については、効率性とコスト削減によって8億ドル以上のビジネス価値を生み出したほか、インサイトの待ち時間の短縮、サーバー処理能力の最適化による製品設計サイクルの迅速化などを果たしている。
サイバーセキュリティでは、ターゲットを絞った標的型攻撃に高度なセキュリティ防御が必要との判断で、ここに対処リソースを集中。最もぜい弱になりがちな内部情報漏えいの発生源となる“人”に関しても、サイバーセキュリティの知識と対策を企業文化に組み込んでガバナンスを実現することが重要だという考えを示している。
IT部門は「舞台裏」から「役員室」へ
インテルでは、自社のIT部門における業務改革に向けての取り組みと成果について1年ごとに発表しており、レポートも作成している。2016年のレポートタイトルは「FROM THE BACKROOM TO THE BOARDROOM(舞台裏から役員室へ)」。これは、従来なら裏方の作業をしていたIT部門が、いまでは大きなビジネス価値を提供できるため、IT戦略は経営戦略そのものであることを意味している。
邱APAC and Japan地域部長は、「ビジネス部門の信頼を得ている当社のIT部門は、役員室での存在感がますます大きくなっており、戦略的投資への影響力を強めている」としている。インテルでは、このような取り組みをパートナー企業やユーザー企業にシェアすることによって、他社においても役員室で戦略的なビジネス価値が創造できるよう支援していく方針だ。