前号で紹介したMaterial Automation(Thailand)(MAT)のように、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が長年協業してきたタイの現地パートナーは、基幹系+αの提案で成長を目指す姿勢が顕著だ。B-EN-Gは、こうした既存のパートナーとの協業深化を目指す一方で、事業環境が変化しているASEANビジネスを着実に成長させるために、新しいパートナーとの関係構築にも注力し始めている。
A.S.I.A.をEnterprise Cloudに乗せる
B-EN-Gは近年、これまでそれほどつきあいが濃くなかった有力国産ベンダーと、タイ発で協業関係を深めるケースが出てきている。

そうした新しいパートナーの一つが、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)だ。クラウドパートナーとして、日本に先駆けて本格的な協業を開始した。具体的には、昨年7月、B-EN-Gの海外現地法人向けERPパッケージ「A.S.I.A.」を、NTT Comのグローバルクラウドサービス「Enterprise Cloud」に乗せて提供するサービスをタイで開始した。Toyo Business Engineering(Thailand)(B-EN-Gタイ)の渡邉祐一・ゼネラルマネージャー/ディレクターは、「タイ発のクラウドサービスとして、他地域への水平展開も目指していきたい。基幹システムの運用に耐え得るクラウドインフラを提供できるNTT Comは、今後の当社にとって非常に重要なパートナー」と、協業の意義を強調する。

NTTコミュニケーションズ
(タイランド)
宮崎 一
バイスプレジデント 本連載でも何度か触れているとおり、タイの国内経済は停滞気味であり、日系企業のIT投資も順調とはいえない。NTT Comにとっても、事業環境が厳しいのは同じだ。現地法人であるNTTコミュニケーションズ(タイランド)の宮崎一・バイスプレジデント&COO カンボジア/ラオス/ミャンマーカントリーディレクターは、「もともとの本業である通信サービスに加えて、2013年からクラウドサービスをグローバル市場で展開し始めているが、実際にビジネスを立ち上げてみると、クラウドのインフラだけでなく、その上に乗るアプリケーションもある程度扱っていないと入り込めないお客さんもかなり多いことがあらためてわかった。そこは当社が得意な分野ではないので、B-EN-Gのような技術もノウハウもあるベンダーと組んだほうがいいと判断した」と振り返る。
ユーザーに負荷をかけない

NTTコミュニケーションズ
(タイランド)
平松宗剛
ディレクター また、この協業でNTTコミュニケーションズ(タイランド)側の窓口を務める平松宗剛・Japanese MNC営業部門ディレクターは、B-EN-Gとの協業の背景を次のように説明する。「日系企業のタイ法人は、日本人、タイ人を問わず、バックオフィスの業務を紙ベースで勘と経験を頼りにこなしている例が圧倒的に多く、いろいろな会社がその効率化を課題に挙げている。一方で、システム導入に踏み切ったとしても、十分な質と量の情報システム担当スタッフを確保するのが難しいという問題もある。そこで、日系企業で多くの実績がある基幹業務のパッケージソフトを、レディメイドに近いかたちでクラウドで提供できれば、導入もスピーディにできるし、お客様に運用の負荷もかからないと考えた。A.S.I.A.のクラウド提供は、そうした観点から売れるという自信があるし、B-EN-Gとは大きなシナジーが期待できる」。
同社は昨年12月、「タイでは最大級かつ唯一のグローバル品質のデータセンター(DC)」(宮崎バイスプレジデント)である「バンコク 2 データセンター」を新たに稼働させ、基幹系システムの運用拡大も見据え、同国内のクラウドインフラを大幅に増強した。平松ディレクターは、「当社はDCだけでなく通信インフラにももちろん投資していて、タイを拠点に周辺国にもビジネスを広げようとしている。B-EN-Gも同じ方向性でASEANを攻めており、この共通点も協業を強く後押しした」と、B-EN-Gとの協業により、ASEANビジネスの面的な拡大も大いに期待できると見込んでいる。