総合ネットワークセキュリティメーカーのチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(チェック・ポイント、ピーター・ハレット社長)は、中堅企業を新規開拓することに本腰を入れる。新たな顧客対象に向けたアプライアンスの市場投入などを検討しており、同時に拡販に向け販社を増やすことにも取り組んでいる。SMB(中堅・中小企業)向けビジネスの売上規模を、現状の2倍に引き上げる方針だ。これまでは大企業を中心に顧客を獲得してきたが、SMB開拓を重点戦略の一つに置き顧客層の裾野を広げることによって、業界での主導権を握ることを狙っている。(佐相彰彦)

田村翔一
SMBチャネルマネージャー チェック・ポイントが顧客として獲得しようとしている中堅企業は、従業員300~500人規模。新規開拓に向けて、その規模に合った製品の提供も計画している。発売時期や性能面などは明らかにしていないものの、大企業向けと比べて価格を抑えながらも遜色ない機能を搭載した製品を市場に投入する模様だ。今年に入ってからSMBチームに配属となった田村翔一・SMBチャネルマネージャーは、「中堅企業も大企業と同じように、強固なセキュリティを施さなければならない。当社は、これまで大企業向けに製品を提供してきた。そういった点では、製品面に加えてソリューションの提案でも、他社に引けを取らない」と自信をみせる。
チェック・ポイントでは、昨年9月にハレット氏が社長に就任したのを機に、組織再編や体制整備を実施。他業界からも含め優秀な人材がチェック・ポイントに入ったこともあり、重点策の一つであるSMBビジネスを手がけるチームの強化を図った。チームの体制を整えるとともに販社の獲得にも注力。田村マネージャーは、「SIerを中心に、すでに数社がパートナーになることをコミットしている」とアピールする。まだ現段階では販社数が少ないものの、今後は「ローカルキング」など地方に根づいたSIerとのパートナーシップも見据えて、「さまざまな角度から販売パートナーを増やしていきたい」との考えを示している。
中小企業向けビジネスでは、拡大策の一つとしてセキュリティ関連製品の販売に強いディストリビュータの宝情報とパートナーシップを組んでいる。SMB向けビジネスを拡大させる素地は固まりつつあるが、「当社の製品は価格が高いというイメージが強い。だからといって他社の製品よりも価格を下げて広めていくことはしない。製品の強みを生かした新しいソリューションを販売パートナーとともに創造していく」という。例えば、最近は空港やカフェなどの公衆無線LANを使って、モバイル端末からインターネットにアクセスするケースが多くなっており、モバイルの脅威に対策を講じるニーズが高まっている。この問題を解決するため、独自のアプリケーション分析技術やネットワーク接続の自動無効化、デバイスのぜい弱性評価が売りの「Mobile Threat Prevention(MTP)」を提供。田村マネージャーは「SMBでは、『社員にモバイル端末で社内ネットワークにアクセスさせたいが、セキュリティ面が心配』という悩みを抱え始めている。MTPを使ったソリューションでSMBを開拓できる可能性は高い」としている。
チェック・ポイントでは、SMB向けビジネスの売上規模を現状の2倍に増やすことを見込んでおり、将来的には、現在全体の1割程度のSMB向けビジネスを3割まで膨らませることを目指している。大企業向けセキュリティ関連市場は、対策が一段落して成熟期に入り、今後はSMB、とくに中堅企業で需要が増えるとの見方が出ている。そのような環境のなか、チェック・ポイントではSMB向けビジネスの拡大を図ることで、業界での存在感を高めていく方針だ。