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情報サービス業界の女性活躍推進 多様性が成長の原動力に 女性たちはどのような選択をしているのか
2016/06/30 14:53
週刊BCN 2016年06月27日vol.1634掲載
情報サービス業界はイノベーションが成長の原動力になっている。このイノベーションを起こすには意思決定の画一さを排除し、多様性を受け入れることが大切だとされる。多様性は世代差や性差、出身国・地域の違いなどが挙げられるが、その第一歩として、いま「女性の活躍」に注目が集まる。折しも今年4月1月から「女性活躍推進法」が施行され、中堅以上のSIer、ITベンダーは女性の活躍に向けた具体的な行動を起こしている。情報サービス業界における女性活躍の現状や課題、展望について、推進活動の中心的存在となっている女性たち本人に、直接、話を聞いた。(畔上文昭、日高 彰、安藤章司)
SIerの取り組み
太田百合子
グループマネージャー 情報サービス業界は、1980年代に施行された「男女雇用機会均等法」以降に大きく発展してきた新しい業界で、なおかつ90年代の「就職氷河期」においても男女を問わずに若年者の雇用に積極的であったことから、伝統的な産業に比べて男女格差は少ないといわれてきた。さらに、営業や企画はもとより、SE/プログラマといった技術職でさえも女性の割合が多い。文系学校の卒業者に広く門戸を開いてきたことも、女性の就職先として有効に働いた。
しかし、いくら門戸を広く開けても継続できなければ意味がない。スマートで先進的なイメージの野村総合研究所(NRI)も、「ほんの10年前まで、後ろ向きな理由での女性の離職が目立った。とても残念なこと」(NRIの太田百合子・組織活性・ダイバーシティ推進グループグループマネージャー)と、うつむき加減に話す。女性の活躍に早くから着目し、情報サービス業界のなかで率先して改善に取り組んできたSCSKですら、「10年前までは、30歳前後の女性の実に7割が離職していた」(SCSK人事企画部ダイバーシティ推進課の酒井裕美氏)ことを明かす。
酒井裕美氏 離職といっても、「仕事を辞めて子育てや介護に専念したい」「自分のキャリアアップのために転職する」「独立起業する」といった、前向きな理由であれば、むしろ喜んで送り出すべきなのだろうが、「なかには本当は今の仕事を続けたいのだが、子育てや介護のために仕事を続けられない」といった「後ろ向きな理由」での離職が大きな問題となっていたのだ。
NRIやSCSKでは、従業員が利用しやすい時間短縮(時短)勤務の制度や、シンクライアント端末を活用したテレワークを推進することで、会社に長時間滞在しなくても仕事をこなせる環境整備に力を入れたところ、SCSKの女性の離職率はこの10年で、かつての7割から3割程度まで大幅に減少した。NRIも、「育児・介護と仕事の両立は、もはやあたりまえになりすぎ、若い世代を中心に『自分だけ両立できなかったらどうしよう』と変なプレッシャーを感じるケース」がみられるほど職場の雰囲気は大きく変わった。
女性の「後ろ向きな離職」を抑制することは、「女性活躍に向けたスタートライン」であり、ここからすべてが始まる。次に目指すべきは、商品やサービス単位、もう少し大きい組織の部門単位での女性リーダーの育成であり、さらに次のステップでは女性経営者の輩出につなげていくことが期待されている。
すでに「大量生産、大量消費」の時代が終焉し、「モノからコト」「カスタマ・エクスペリエンス(顧客体験)」へと市場の価値観がシフトするなか、勝ち抜くには多様な商品やサービスを創り出していく必要がある。情報サービス業界の主戦場はB2B(企業間ビジネス)ではあるが、顧客の先には往々にしてコンシューマが存在する。鉄道や通信といったバリバリの社会インフラの構築であっても、そのインフラを使うのは老若男女、多様な消費者、生活者であることを忘れてはならない。
市場に適応し、リードしていくには、企業内のリーダーのあり方そのものを変えていく必要がある。今回のレポートでは女性に焦点をあてているが、女性はもちろん、さまざまな世代や国・地域の出身といった多様なリーダー像をつくりあげていくことが、強靱で柔軟性に富んだ組織づくりにつながる。
時代とともに変わるリーダー像
本文で登場してもらったNRIの太田百合子グループマネージャーやNTTデータの山城かすみ課長代理は、女性の中堅リーダーとして期待が集まるとともに、若い女性社員からもロールモデルとしてみられることが多い。しかし、二人が異口同音に、「参考にしてもらうのはうれしいことだが、正直、あまり推奨しない」と言うのだ。市場が目まぐるしく変化すると同様、リーダー像は時代とともに大きく変わる。
この10年だけみてもワークスタイルや、求められるリーダー像が大きく変わった。これからもっと変わっていくことが自明であるため、「自分らしいリーダー像をつくりあげてほしい」(太田グループマネージャー)と若い女性社員に呼びかける。ダイバーシティを推進するのに画一的なリーダー像はそぐわず、新しい時代には、新しいリーダー像、新しいワークスタイルを、自分たちでつくりあげていくしかないということだろう。
山城かすみ
課長代理 「リーダー像」とひと言でいっても、女性リーダーの母数が少ないこともあり、男性リーダーと同一化(俗にいう女性のオヤジ化)する罠が待ち受ける。「女性リーダーの姿をした疑似男性リーダー像」では、多様化の観点からあまり意味がなくなってしまう。
NTTデータが全世界に展開中の航空管制システム「airpalette(エアパレット)」シリーズの開発に従事し、製品ブランド名である「airpalette」の“名付け親”でもあるNTTデータの山城かすみ・航空システム統括部開発担当課長代理は、「東京工業大学の男性比率が高い修士課程で学んでいたときから、男性のなかで仕事をするのがあたりまえになっていた」と話す。
男性陣には理解しにくい点かもしれないが、男性ばかりの職場、男性リーダーばかりに囲まれていると、多くの女性は男性的な思考パターン、行動様式に強い影響を受けやすくなる。逆に女性ばかりの職場、女性リーダーばかりの会社に、ぽつんと男性が放り込まれる状況を考えればわかりやすい。恐らくその男性は多くの違和感をもつことだろう。それと同じことが女性にも起こっているのだ。
山城課長代理も男性陣のなかでバリバリ働くうちに、「おじさんたちと会社帰りに赤提灯で一杯ひっかけて帰る“昭和のサラリーマン”もびっくりのおじさん化が進行していた」と話す。しかし、結婚を機に愛する夫に「温かい夕食を食べさせてあげたい」との思いから働き方を見直すようになる。家事や育児、介護を夫と折半するのは当然として、半分は担わなければならないことを考えると、時には時短勤務や直行直帰、テレワーク、在宅勤務、移動中のモバイルを活用した業務など、上司の了解を得たうえで、持ち前のITを駆使したワークスタイルの多様化を心がけるようになった。
出濱美香氏 次に、情報サービス業界で27年のキャリアをもち、現在、フリーランス(個人事業主)のSE/プログラマとして働く出濱美香氏の働き方を紹介する。山形県庄内地方から18歳で上京。95年に結婚するが、当時、情報サービス業界でも、古い体質のユーザー企業の情報システム子会社では、まだ普通に「肩たたき」があった。寿退社の体裁をとりつつ、出濱氏はフリーランスのプログラマの道を選ぶ。2人の子どもを産み、育てながらのハードワークだったが、出濱氏は「手に職があることの誇り」、もっといえば「経済的に自立できる自信と安心感」が、仕事と子育ての両立の原動力になったと話している。
キャリアパスもなかなかの戦略家で、90年代まで残っていた汎用機/オフコン分野ではCOBOL言語の習得はもちろん、NECのACOSや富士通のKシリーズ、IBMの旧AS/400用のRPG言語と一通りマスターし、オープン化してからはVisual Basic(VB)、近年ではウェブ系のアプリ開発に食指を動かすなど、業務系のメインストリームとなる技術を踏み外さずに習得してきた。
就職や結婚、出産・育児、介護といった人生の節目(ライフイベント)は、自分だけでは決められない。いくら綿密な計画を立てても、周囲の環境の変化に適応できなければ、計画はすぐに破綻してしまう。出濱氏はNEC系や富士通系、IBMのユーザー系の情報システム子会社などを転職しつつ、サラリーマンを15年、独立してフリーランスとして12年やってきた。
フリーランスを続けるには、「とにかくブランクをつくらないことと、自分が請けた仕事はどんな理由があっても完遂すること。そのための健康管理の徹底」の三つを墨守。産前産後の休暇も3か月しかとらず、子どもの急な発熱や、繁忙期のどうしても避けられない残業は、どんなに費用がかさもうとも、迷わずベビーシッターに協力を仰いだ。こうした姿勢によって「仕事が途切れたことは一度もない」と胸を張る。気さくで、飾らない出濱氏の性格も手伝って、取引先やエンドユーザーのほうから仕事の声をかけられることも少なくない。
今は、PEーBANK(旧首都圏コンピュータ技術者)と契約して、フリーランスを継続しつつ、趣味で続けてきたピアノ演奏の仲間と一緒にピアノサークル「アレグレス」を運営するなど、公私ともに充実した日々を送っている。(5面につづく)
パッケージソフトベンダーの取り組み ワークスアプリケーションズ
ワークスアプリケーションズが産休とその後の制度の策定をしたのは2004年。牧野正幸CEOのトップダウンで決まった。仕事と子育てを両立させるための行動指針の策定を求めた次世代育成支援対策推進法が施行された時期である。
経営企画室に所属していた渡辺聡子氏は、子育て支援制度の策定チームの一員となり、同社初の取り組みに四苦八苦しながら、試案を取りまとめた。しかし、それをみた牧野CEOの反応は「これで100%戻ってくるんだな」だった。“クリティカルワーカーに活躍の場を”を掲げ、人材にこだわってきた牧野CEOには、産休明けには確実に現場に戻ってきてほしいとの思いがあった。
牧野CEOの反応に不十分だと感じた渡辺氏は、チームでもう一回練り直し、子育て支援制度を策定した。その制度が「ワークスミルククラブ」で、現在もその名称で制度が実施されている。同制度では、育児休暇の取得が3歳まで、時短勤務が小学6年生まで、勤務時間は1時間単位で設定可能としている。そして、育児休暇から職場に復帰した場合は、年俸の15%の“復帰ボーナス”が支給される。
この4月の女性活躍推進法の施行をきっかけに、改めて現状を分析。その結果、男女の格差は見当たらなかったが、マネージメント層の女性比率が低いと判断した。出産と育児によって、キャリアがいったん中断されることが原因の一つではないかと考えた。そこで、託児スペースの開設を検討することになる。
託児スペースのタスクチームに参加したのが、育児休暇からこの5月に復職したばかりの牛丸侑香里氏である。社内の掲示板は育児休暇中も確認できるため、託児スペースのタスクメンバー募集の掲示をみて手を挙げた。託児スペースは今秋のオープンを予定している。「託児スペースは、ただ、子どもを預かるだけでなく、安心して預けられるようなスペースにしたい。行政に頼るのではなく、ここを起点として、女性の新しい働き方を実現していきたい」(牛丸氏)。託児スペースでは、定期の預かりは2歳児クラスまでで、不定期に関しては小学校入学前の子どもをひとまずの対象とする。その後については運用しながら検討していく方針である。
SIerの取り組み
「門戸広い」が「先細り」だった

太田百合子
グループマネージャー
しかし、いくら門戸を広く開けても継続できなければ意味がない。スマートで先進的なイメージの野村総合研究所(NRI)も、「ほんの10年前まで、後ろ向きな理由での女性の離職が目立った。とても残念なこと」(NRIの太田百合子・組織活性・ダイバーシティ推進グループグループマネージャー)と、うつむき加減に話す。女性の活躍に早くから着目し、情報サービス業界のなかで率先して改善に取り組んできたSCSKですら、「10年前までは、30歳前後の女性の実に7割が離職していた」(SCSK人事企画部ダイバーシティ推進課の酒井裕美氏)ことを明かす。

酒井裕美氏
「後ろ向きな離職」を根絶したい
女性が「後ろ向きな理由」で仕事を続けられない最大の理由は、長時間労働だ。情報サービス業界の場合、屈強な男性にしかできない腕っ節が求められる職種ではないため、残業の多さが、育児・介護と仕事との両立の妨げ要因となりやすい。NRIやSCSKでは、従業員が利用しやすい時間短縮(時短)勤務の制度や、シンクライアント端末を活用したテレワークを推進することで、会社に長時間滞在しなくても仕事をこなせる環境整備に力を入れたところ、SCSKの女性の離職率はこの10年で、かつての7割から3割程度まで大幅に減少した。NRIも、「育児・介護と仕事の両立は、もはやあたりまえになりすぎ、若い世代を中心に『自分だけ両立できなかったらどうしよう』と変なプレッシャーを感じるケース」がみられるほど職場の雰囲気は大きく変わった。
女性の「後ろ向きな離職」を抑制することは、「女性活躍に向けたスタートライン」であり、ここからすべてが始まる。次に目指すべきは、商品やサービス単位、もう少し大きい組織の部門単位での女性リーダーの育成であり、さらに次のステップでは女性経営者の輩出につなげていくことが期待されている。
自分ならではのリーダー像を探せ
では、なぜ女性のリーダーが必要なのか──。理由は明確で、イノベーションを起こすには多様性が効果的とみられているからだ。ある部門で、例えば「40代、理系、男性」という属性が3人集まって導き出される答えは、おおよそ予想できるというもの。A社も、B社、C社も一事が万事このような感じで意思決定がなされていれば、日本の情報サービス企業は金太郎飴みたいに、どれも似たり寄ったりでイノベーションどころか、差異化すら困難になってしまう危険性がある。すでに「大量生産、大量消費」の時代が終焉し、「モノからコト」「カスタマ・エクスペリエンス(顧客体験)」へと市場の価値観がシフトするなか、勝ち抜くには多様な商品やサービスを創り出していく必要がある。情報サービス業界の主戦場はB2B(企業間ビジネス)ではあるが、顧客の先には往々にしてコンシューマが存在する。鉄道や通信といったバリバリの社会インフラの構築であっても、そのインフラを使うのは老若男女、多様な消費者、生活者であることを忘れてはならない。
市場に適応し、リードしていくには、企業内のリーダーのあり方そのものを変えていく必要がある。今回のレポートでは女性に焦点をあてているが、女性はもちろん、さまざまな世代や国・地域の出身といった多様なリーダー像をつくりあげていくことが、強靱で柔軟性に富んだ組織づくりにつながる。
時代とともに変わるリーダー像
ロールモデルは「参考程度」に
本文で登場してもらったNRIの太田百合子グループマネージャーやNTTデータの山城かすみ課長代理は、女性の中堅リーダーとして期待が集まるとともに、若い女性社員からもロールモデルとしてみられることが多い。しかし、二人が異口同音に、「参考にしてもらうのはうれしいことだが、正直、あまり推奨しない」と言うのだ。市場が目まぐるしく変化すると同様、リーダー像は時代とともに大きく変わる。 この10年だけみてもワークスタイルや、求められるリーダー像が大きく変わった。これからもっと変わっていくことが自明であるため、「自分らしいリーダー像をつくりあげてほしい」(太田グループマネージャー)と若い女性社員に呼びかける。ダイバーシティを推進するのに画一的なリーダー像はそぐわず、新しい時代には、新しいリーダー像、新しいワークスタイルを、自分たちでつくりあげていくしかないということだろう。
女性リーダーはなぜ必要なのか

山城かすみ
課長代理
NTTデータが全世界に展開中の航空管制システム「airpalette(エアパレット)」シリーズの開発に従事し、製品ブランド名である「airpalette」の“名付け親”でもあるNTTデータの山城かすみ・航空システム統括部開発担当課長代理は、「東京工業大学の男性比率が高い修士課程で学んでいたときから、男性のなかで仕事をするのがあたりまえになっていた」と話す。
男性陣には理解しにくい点かもしれないが、男性ばかりの職場、男性リーダーばかりに囲まれていると、多くの女性は男性的な思考パターン、行動様式に強い影響を受けやすくなる。逆に女性ばかりの職場、女性リーダーばかりの会社に、ぽつんと男性が放り込まれる状況を考えればわかりやすい。恐らくその男性は多くの違和感をもつことだろう。それと同じことが女性にも起こっているのだ。
山城課長代理も男性陣のなかでバリバリ働くうちに、「おじさんたちと会社帰りに赤提灯で一杯ひっかけて帰る“昭和のサラリーマン”もびっくりのおじさん化が進行していた」と話す。しかし、結婚を機に愛する夫に「温かい夕食を食べさせてあげたい」との思いから働き方を見直すようになる。家事や育児、介護を夫と折半するのは当然として、半分は担わなければならないことを考えると、時には時短勤務や直行直帰、テレワーク、在宅勤務、移動中のモバイルを活用した業務など、上司の了解を得たうえで、持ち前のITを駆使したワークスタイルの多様化を心がけるようになった。
独立して「フリーランス」になる

出濱美香氏
キャリアパスもなかなかの戦略家で、90年代まで残っていた汎用機/オフコン分野ではCOBOL言語の習得はもちろん、NECのACOSや富士通のKシリーズ、IBMの旧AS/400用のRPG言語と一通りマスターし、オープン化してからはVisual Basic(VB)、近年ではウェブ系のアプリ開発に食指を動かすなど、業務系のメインストリームとなる技術を踏み外さずに習得してきた。
就職や結婚、出産・育児、介護といった人生の節目(ライフイベント)は、自分だけでは決められない。いくら綿密な計画を立てても、周囲の環境の変化に適応できなければ、計画はすぐに破綻してしまう。出濱氏はNEC系や富士通系、IBMのユーザー系の情報システム子会社などを転職しつつ、サラリーマンを15年、独立してフリーランスとして12年やってきた。
フリーランスを続けるには、「とにかくブランクをつくらないことと、自分が請けた仕事はどんな理由があっても完遂すること。そのための健康管理の徹底」の三つを墨守。産前産後の休暇も3か月しかとらず、子どもの急な発熱や、繁忙期のどうしても避けられない残業は、どんなに費用がかさもうとも、迷わずベビーシッターに協力を仰いだ。こうした姿勢によって「仕事が途切れたことは一度もない」と胸を張る。気さくで、飾らない出濱氏の性格も手伝って、取引先やエンドユーザーのほうから仕事の声をかけられることも少なくない。
今は、PEーBANK(旧首都圏コンピュータ技術者)と契約して、フリーランスを継続しつつ、趣味で続けてきたピアノ演奏の仲間と一緒にピアノサークル「アレグレス」を運営するなど、公私ともに充実した日々を送っている。(5面につづく)
パッケージソフトベンダーの取り組み ワークスアプリケーションズ
今秋に託児スペースの開設で“フルで働きたい”に応える
ワークスアプリケーションズが産休とその後の制度の策定をしたのは2004年。牧野正幸CEOのトップダウンで決まった。仕事と子育てを両立させるための行動指針の策定を求めた次世代育成支援対策推進法が施行された時期である。 
ワークスアプリケーションズの管理Div. 経営管理Dept. 計数管理グループの渡辺聡子氏(左)、経営企画の牛丸侑香里氏
経営企画室に所属していた渡辺聡子氏は、子育て支援制度の策定チームの一員となり、同社初の取り組みに四苦八苦しながら、試案を取りまとめた。しかし、それをみた牧野CEOの反応は「これで100%戻ってくるんだな」だった。“クリティカルワーカーに活躍の場を”を掲げ、人材にこだわってきた牧野CEOには、産休明けには確実に現場に戻ってきてほしいとの思いがあった。
牧野CEOの反応に不十分だと感じた渡辺氏は、チームでもう一回練り直し、子育て支援制度を策定した。その制度が「ワークスミルククラブ」で、現在もその名称で制度が実施されている。同制度では、育児休暇の取得が3歳まで、時短勤務が小学6年生まで、勤務時間は1時間単位で設定可能としている。そして、育児休暇から職場に復帰した場合は、年俸の15%の“復帰ボーナス”が支給される。
この4月の女性活躍推進法の施行をきっかけに、改めて現状を分析。その結果、男女の格差は見当たらなかったが、マネージメント層の女性比率が低いと判断した。出産と育児によって、キャリアがいったん中断されることが原因の一つではないかと考えた。そこで、託児スペースの開設を検討することになる。
託児スペースのタスクチームに参加したのが、育児休暇からこの5月に復職したばかりの牛丸侑香里氏である。社内の掲示板は育児休暇中も確認できるため、託児スペースのタスクメンバー募集の掲示をみて手を挙げた。託児スペースは今秋のオープンを予定している。「託児スペースは、ただ、子どもを預かるだけでなく、安心して預けられるようなスペースにしたい。行政に頼るのではなく、ここを起点として、女性の新しい働き方を実現していきたい」(牛丸氏)。託児スペースでは、定期の預かりは2歳児クラスまでで、不定期に関しては小学校入学前の子どもをひとまずの対象とする。その後については運用しながら検討していく方針である。
情報サービス業界はイノベーションが成長の原動力になっている。このイノベーションを起こすには意思決定の画一さを排除し、多様性を受け入れることが大切だとされる。多様性は世代差や性差、出身国・地域の違いなどが挙げられるが、その第一歩として、いま「女性の活躍」に注目が集まる。折しも今年4月1月から「女性活躍推進法」が施行され、中堅以上のSIer、ITベンダーは女性の活躍に向けた具体的な行動を起こしている。情報サービス業界における女性活躍の現状や課題、展望について、推進活動の中心的存在となっている女性たち本人に、直接、話を聞いた。(畔上文昭、日高 彰、安藤章司)
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