シトリックス・システムズ・ジャパンは、ユーザー企業がクラウドサービスの導入を簡素化できる管理ツール「Citrix Cloud」の強化に踏み切った。マイクロソフトとのパートナーシップで、クラウドプラットフォームの「Microsoft Azure」とCitrix Cloudを連携。「Windows 10 VDI」「XenApp“express”」のサービス化に踏み切る。近い将来、日本市場で提供を開始する計画だ。これによって、簡単にクラウドへの移行を実現する。また、VDI環境やセキュアなリモートアクセス環境をさらに整えていく。(佐相彰彦)

米シトリックス・
システムズ
スティーブ・ウィルソン
バイスプレジデント Windows 10 VDIの提供は、短期間での導入を可能にして、VDIを普及させることが狙い。Microsoft Azureを通じてクラウドで提供することでコスト削減にもつながる。米シトリックス・システムズのスティーブ・ウィルソン・コアインフラストラクチャ担当バイスプレジデントは、「セキュアな環境を整備したいということでVDIに対するニーズが高まっている。しかし、構築するのに時間がかかるという声が多く、しかもハードウェアなどのコストも高いという問題点もあって、ユーザー企業の裾野がなかなか広がらなかったのは否めない。Citrix Cloudとの連携によりWindows 10 VDIで簡単な導入を実現し、なおかつデバイスを問わずに利用できる」とアピールする。
XenApp“express”は、マルチデバイスに対応した小規模な運用環境でもコストや管理負担を軽減しながら可用性を保証する「Azure RemoteApp」を段階的に終了することによる、後継のサービスとして提供。インターネット閲覧分離環境の提供やモバイルワークの実現、海外からの社内システムアクセスの改善を可能にする。Microsoft Azureの拡張性を兼ね備えたサービスとしても位置づけられる。
この二つのサービスによって、「SIerなど販売パートナーにとっては、SMB(中堅・中小企業)に対してクラウドサービスを通じた新しい環境を提案し、リプレース需要を掘り起こすことができるのではないか」(ウィルソン・バイスプレジデント)と捉えている。マイクロソフトは、「CSP(クラウドサービスプロバイダ)がVDIを提供できるようになるなど、当社にとってもメリットが大きい」(日本マイクロソフトの藤本浩司・クラウド&エンタープライズビジネス本部クラウド&サーバービジネス開発部部長)としている。日本市場での提供については、サービス開始のタイミングや販売経路などについて今後詰めていき、そう遠くない時期に実現する模様だ。
シトリックス・システムズでは、今回Citrix Cloudを通じて強化に踏み切ったクラウドに加えて、「モバイル」「IoT」「ビッグデータ分析」を注力分野をとして掲げている。この4分野に力を注ぐのは、「90%の企業がパブリッククラウドを利用」「75%の企業がビッグデータに投資」「40%の企業が社員へのモバイル支給を停止」「300億の機器がネット接続」という状況になっていることが背景にある。今回、クラウド関連でマイクロソフトとのパートナーシップを深めたのは、仮想化製品のサービス化によってユーザー企業によるクラウド移行を進めることが目的だが、「次のステップとして、モバイルやIoT、ビッグデータ分析で、マイクロソフトと戦略的なパートナーシップを組んでいく」との考えを示している。日本市場では、「医療機関」「製造業」「金融業」「自治体」などをテーマにユーザーを増やすことに力を入れており、医療機関で仮想化による電子カルテ、製造業で3D CADなどのニーズに対応、金融業や自治体などでセキュリティ強化を提案していく方針だ。